環境省自然環境・自然公園特定外来生物等の選定について

第4回 特定外来生物等分類群専門家グループ会合(昆虫類)
セイヨウオオマルハナバチ小グループ会合 議事録


1. 日時 平成17年1月12日(水)10:00~11:46
2. 場所 経済産業省別館10階 1028会議室
3. 出席者  
   (委員) 池田 二三高   小野 正人
五箇 公一    横山  潤
   (利用関係者) マルハナバチ普及会 光畑雅宏、米田昌浩
   (環境省) 名執野生生物課課長
上杉生物多様性企画官
堀上野生生物課課長補佐
   (農林水産省) 岡田野菜課課長補佐
4. 欠席者  
   (座長) 土田 浩治
5. 議事  

【環境省 堀上補佐】 それでは時間になりましたので、特定外来生物等分類群専門家グループ会合昆虫類のマルハナバチ小グループ会合第4回を開催したいと存じます。野生生物課長はちょっと遅れてまいりますが、よろしくお願いいたします。
 配付資料の方ですけれども、今日の資料、資料1から3までございます。資料1が「特定外来生物等の選定の作業手順」、資料2が「セイヨウオオマルハナバチに係る情報及び評価の案」、資料3が「セイヨウオオマルハナバチの取扱いについての案」、参考資料としまして前回の小グループ会合の議事概要をおつけしてございます。それと、農林水産省の方から「マルハナバチ逸出防止ネットの展張に係る支援措置について」という1枚が配付されてございます。もし不備がございましたら、事務局の方にお申し出いただければと思います。
 本日の議事進行につきましては、前回に引き続きまして五箇委員の方、どうぞよろしくお願いいたします。

【五箇座長】 それでは、これより本日の議事に入らせていただきます。
 議題の1は、まずセイヨウオオマルハナバチの取扱いということになっております。これまで3回にわたりまして各方面の方から意見を出していただきましたので、それらを本日は整理をいたしまして、セイヨウオオマルハナバチそのものの今後の取扱いについて決定をするということになっております。
 それでは、各委員からのご意見、資料、議論等を踏まえて環境省の事務局の方で取りまとめに際して資料を準備していただいておりますので、説明の方を事務局からお願いいたします。

【堀上補佐】 それでは、資料3に基づきまして説明をさせていただきます。
 今回が第4回ということで、これまで3回の議論を重ねてまいりました。特にセイヨウオオマルハナバチの定着に関すること、あるいは生態系への影響、それから現場でのマルハナバチの利用の実態、逸出防止の措置、そういったことについて総合的に先生方にご発表いただき、議論を重ねてきたというところでございます。これまでの議論を踏まえて、この小グループとして今回第4回の会合で、今までの検討結果を取りまとめるということで事務局の方で、この紙をご用意させていただきました。
 内容につきましては、表裏それぞれあります。最初から基本的に読んでまいります。
 最初の○ですが、セイヨウオオマルハナバチが生態系等へ与える影響については、次のとおり捉えることが適当である。
 最初のチェックですが、定着の可能性について、北海道で自然の巣が発見されて周年の活動が確認されていること、また、毎年、継続的に大量な利用がなされていることから例え定着が確認されてなくとも大量に野外に逸出すれば定着しているのと同様の影響を与えうるということから、その可能性は高いということが推測できる。
 在来マルハナバチへの影響のうち、影響について幾つか指摘されているところでありますけれども、営巣場所をめぐる競争については、実験室内で在来種の巣の乗っ取りが確認されていて、その可能性があると。ただし、野外での実態は不明確である。
 それから、餌資源を巡る競合については、活動地域の餌資源量も含めた競合の状況が不明確である。これら競合に関連して、在来種の分布の変化状況等についても、まだ不明確な状況である。
 生殖撹乱については、在来種と共通の誘引・忌避物質を含んでおりまして、実験室では在来種との交尾が確認されている。生殖攪乱の可能性はあるわけですけれども、野外での交尾の実態は不明確であるということであります。
 それから、寄生生物については、検出されているものがありますけれども、在来種へ影響を与えるかどうかは不明確であると。
 さらに在来植物への影響について、盗蜜行動は確認されております。ただし、結実率に影響を与えているかどうかは不明確である。
 こういったことは、生態系等へ与える影響としてとらえられるということでございます。
 次の○は、現場での利用状況と逸出防止措置の実施状況、それからその効果について状況を述べております。
 全国で年間約7万コロニーが流通されている。セイヨウオオマルハナバチの利用によって、減農薬、省力化、高品質・高付加価値化等、生産面での効果が発揮されている。
 野外へのハチの逸出を防ぐためのネット展張、それから使用済みの巣箱の回収処理については、普及推進が図られておりますけれども、全国的に見れば、まだ普及率は高くない状況にあると。
 そういったネット展張、あるいは使用済みの巣箱の回収による逸出防止の効果については、北海道における調査におきましては効果的であると、そういう結果が出ておりますけれども、経年的な調査はまだ行われていない。
 それから、ネット展張によります温室内の環境の管理、あるいはコストアップに対応した技術開発・支援策、そういったことが重要であると、そういう指摘もございました。
 セイヨウオオマルハナバチについて、こういった生態系等への被害を及ぼしているという確たる知見はまだ得られていない。ただし、実験結果等を踏まえれば、被害を及ぼすおそれについて、その可能性を否定することはできない。さらに毎年、継続的に大量のコロニーが利用されていることを考えますと、そのまま野外へ逸出が続くような状況であれば、生態系等へ被害を及ぼすおそれが高まる。このことから、逸出防止上の高い効果が期待できるネット展張、それから使用済みの巣箱の回収を確実に実施することが極めて重要であるという認識でございます。
 次の○ですけれども、被害の実態について確たる知見が得られていなくて、ネット展張等の実施の状況もまだ高くないとそういう状況におきましては、コストアップの要因ともなりますネット展張を一般の農家の方々に義務づけることに理解を得られないおそれも現状では高いであろうと。一方、個々の農家にネット展張等を促すことに関して、外来生物法によります法的担保をもって義務づけることによる効果も十分に認識することが必要であると。
 以上のことを鑑みまして、この小グループとしましては、セイヨウオオマルハナバチの取扱いについて、以下のとおり三つの点を提案するということでございます。
 最初の点ですけれども、国、農協、メーカー等において、逸出防止措置としてのネット展張及び使用済み巣箱の回収を強力に普及推進する。
 次の点は、逸出防止措置の必要性を農家に普及啓発するためにも、生態系等の被害に係る知見の更なる充実を図る。このため、野外のセイヨウオオマルハナバチ等の状況に関する調査を重点的に実施する。
 こういった調査の実施の状況、それから農家への普及啓発の状況、ネット展張等の普及推進の状況を踏まえまして、1年程度を目途に、特定外来生物への指定について検討するということが小グループとしてのマルハナバチの取扱いについての提案でございます。
 事務局の説明は以上です。

【五箇座長】 ただいまの事務局からのこの説明につきまして、この今回の資料3ですね。これについて各委員の方からご意見、ご質問ありましたらお願いします。
 よろしいでしょうか。

【横山委員】 「セイヨウオオマルハナバチについては、生態系等へ被害を及ぼしているという確たる知見は得られていないものの、実験結果等を踏まえれば、被害を及ぼすおそれについて、その可能性を否定することはできない」というふうになっておりますけれども、私の認識としては、この委員会では確かにデータはまだ不十分だと思うんですけれども、少なくともその生態系影響については十分その可能性があるということを各委員の方々、皆さん認識していただいたというふうに私は理解しておりましたので、今回のその決定というのはちょっと私の意見からすると、ちょっとネガティブなとらえ方をされ過ぎているのではないかなというふうに思っているんですけれども、その点はいかがでしょうか。

【五箇座長】 事務局の方、どうでしょう。

【堀上補佐】 前回の会合ですけれども、議事概要をおつけしてございますが、議事概要の3ページ目になりますけれども、「在来マルハナバチへの影響」の中に3ページ目の上から四つ目の四角ですが、「依然データは少ないが、営巣場所を巡る競合はある」という結論は前回確かに出ております。ただ、それをどの程度見るかということにつきましては、競合はあるけれども被害としてどうかということについて、前回まだきちんと確認はとれていなかったのではないかと。そこは、今回、議論していただければよろしいかと思います。

【五箇座長】 前回、要は結論として、定着に関しては野生化しているだろうと考えられるけれども、競合、それから交雑及びパラサイトの持ち込みといった部分に関しては、屋外における影響という部分については、現段階ではアンノウンunknownというふうな判定はしたと。
 ただし、今、横山委員の方から意見がありましたように、それをもってここに書いてありますように「生態系等への被害を及ぼしているとの確たる知見は得られていない」というふうな表現にしていいかどうかというところだとは思うんですけれども、要はどこまで調べれば確たる証拠と言えるかというところなんだろうとは思うんですね。現段階では、とにかく野外データは確かに不足しているということから、そのような結論はつけているわけですけれども、だからといって被害が出ていないとも言い切れないという状況ですよね。出ているともわからないし、出ていないともわからないという、どっちにしてもわからないという状況が現段階であろうというふうに思います。
 要はここの表現をどうするかというところが、妥協点をどこに置くかというところになるとは思うんですけれども。要は単刀直入に言えば、この種は侵略的であると結論づけた上で今後の取扱いを考えるか、そこを侵略的とは言えないという形で取扱いを考えるかというところだと思うんですけれども、この辺について改めて各委員の方から、この種が侵略的であると認定可能かどうかということについて、もちろん現段階におけるその状況証拠というか、確たる証拠というものを踏まえての意見ということにはなると思うんですけれども、この点について改めてご意見をいただければと思うんですけど、池田委員の方からまずお願いできますでしょうか。

【池田委員】 大変難しい問題でありまして、私もちょっと頭の方のまだ整理が十分できておりませんが、まず侵略的かどうかということで今お話になっていますが、侵略的な種かどうかという、これを判定する手法というものは一体どういうものがあるんでしょうかね。私は、そういうのに今まで仕事の関係なんかでもちょっと遭遇したことがありませんのではっきり言えませんが、侵略的かどうかという前提のもとで今まで調査等をやってきたかというと、どうもされていないんじゃないかという気がいたします。ということは、今までのご発表のいろいろなデータを拝見しますと、それは現場での実態というのが主体になっておりまして、前提条件の侵略的云々のところを判断する手法の調査ではないような感じがいたします。ほかの生物でもそうなんでしょうが、そういった侵略的な種をどういうふうにして判定する手法があるんでしょうかね。私ちょっとその辺がわからないので、ちょっとお答えができません。
 ただ、全般的に言えば、こういった侵略的な種そのものが、日本にいろんな外来生物が入ってきていますが、現実にどのように起こっているかということを考えてみますと、私はこれだというのがちょっと思い浮かばないんですね。確かに我々の身近の中で、いろいろな外来生物が入って、人間の生活環境であったり、あるいは農林生物等に悪影響を与えていることが確かなんだけれども、それは同じく日本でいう農業害虫であるとか衛生害虫とか、そういった環境の生物とどういうふうに競合しているか、どのくらいに駆逐したかということのデータというのも余りないわけですから、そういうことを考えてみますと、私は一概にこのセイヨウオオマルハナバチの、現在生態系に対して侵略的であるということは断定できないんじゃないかと。やるのであればもう一度、もう一度というか、これからまず手法を考えながら、できていればそれを公開なりされて、それでやっていった方がいいんじゃないかということだと思います。
 ですから、私は今回のこの表現については妥当ではないかなというふうに、先ほどから拝見しております。

【五箇座長】 どうもありがとうございます。
 続いて小野委員の方からもお願いいたします。

【小野委員】 私も現時点で、このセイヨウオオマルハナバチが侵略的かどうかという判断を明確に出すことはなかなか難しいと思います。ただ、生態系へ被害を及ぼしているとの確たる知見というものが得られてからでは遅いということも、やはり言えるのではないかなと思います。予防という観点、そういうことが起きないようにするために、この種の性質というものを理解するということでまだ精密な実験がなされていなくても、あるいは限られた状況の中でもの予備調査というものがなされているとすれば、そういったようなデータも十分に参考にしながら、予測していかなければいけないということも言えるのではないかなというふうに思います。異種間交尾とか、それから営巣の場所をめぐっての競合などについては、可能性としては非常に高いものがあるでしょうし、同所性の日本在来のマルハナバチ同士でも花粉をめぐっての競争とか、営巣場所をめぐっての競合みたいなものは起きているといっても、これは同所性のもともと日本にいるもの同士のそういうインターラクション、相互作用と、輸入種がそれに入ってきたときに及ぼす相互作用というのは全く異質なものと考えることが多分できると思うので、そういった点もやっぱり考えていかなければいけないのではないかなと思います。
 もう1点、今回配付資料の3行目のところに「継続的に大量のコロニーが利用されている」という点があって、これが他の移入生物で問題になっているものと多少違うところじゃないかなと思います。すなわち商品として流通している生き物であるという特殊性があると思います。ですから、このことが今までの委員会の中でも何回となく出ておりますけれども、人がこの蜂の何といいましょうか、ちょっと変な言い方かもしれませんが、後押しをしてしまっているという見方もできてしまうのです。この商品が恒常的に使い続けられて、しかもこのまま野外へ野放しに逃げていくというような状態がずっと続けば、実際にはいつもセイヨウオオマルハナバチが野外に飛ぶ環境を人間がつくってしまっているという形になってしまうという言い方もできると思うんですね。そういう“商品”であるということの特殊性なども、しっかり考えていくということも大切じゃないかなというふうに思います。

【五箇座長】 では、横山委員の方、お願いします。

【横山委員】 確かに侵略的かどうかというのは非常に判断が難しいというふうに私も考えておりますので、今まで侵略的だというふうに言われていた外来生物というのは非常に特殊なものが実際多いですので、セイヨウオオマルハナバチが全くそれと同じような非常に強力な被害を及ぼすかどうかということについては、現時点では非常に判断が難しいところはあると思います。
 ただ、これだけ農環境が日本国内に広がっている状況で、自然環境、例えば人為的に影響を及ぼされた環境が近接して存在する、しかも人為的に影響を及ぼされた環境が非常にいろいろなところに広がっている状況で、しかも先ほど小野先生からご指摘ありましたように、セイヨウオオマルハナバチが人間によってあちこちに継続的に導入されるという状況があるとすると、結局人間が大量に移入しているから侵略的な外来生物と同じような生態系被害を及ぼすという可能性は非常に高いんじゃないかというふうに私は考えておりますので、そういった意味では、もともと持っている性質自体が侵略的であるという可能性も十分あると思いますし、それと同等に、人間が大量に導入していることが、この種が野外で在来の生物に影響を及ぼす可能性をさらに高めているんじゃないかというふうに考えておりますので、私は予防的な意味合いも含めて、この種の生態的な影響というのは非常に強いというふうに考えております。
 以上です。

【五箇座長】 はい。では、続いてマルハナバチ普及会の方からご意見をお願いします。お二方。

【光畑氏】 侵略的であるかどうかということに対しての判断を私の方から申し上げるべきではないと思いますので、利用者の代表という形で申し上げさせていただきますと、まずこの場で侵略的ではないという判断がなされて、このままセイヨウオオマルハナバチが利用を続けさせていただく中で、例えばこのままネットが完全に展張されていない条件下で利用されて、セイヨウオオマルハナバチが北海道内では既に生活のサイクルを毎年のように続けていて、少しずつ分布といいますか、生息範囲を広げていくというデータが確実に出ている中で、では交尾を、例えば在来種のマルハナバチと交尾をしない、それから将来的に植物の種子生産に対しても影響がないという、要するに侵略的ではないと判断されたときに、セイヨウオオマルハナバチが日本のマルハナバチと同様に、ただそこに生活をしているだけということに関して許すことができるのかどうかというところが一つあります。
 要は、ここまでこういった委員会に取り上げられて、それからマスメディア等々で報道されて、セイヨウオオマルハナバチで、その影響で、セイヨウオオマルハナバチの受粉をした生産物を購入しないという生鮮バイヤーさんというか、流通業者さんも既に出てきています。マルハナバチを利用する生産者の方、我々も含めてですが、マルハナバチ、セイヨウオオマルハナバチを利用することで環境保全型農業に寄与しているであるとか、安心・安全な生産物を生産するんだということで、そういう使命感を持って野菜を生産してきてこられた生産者の方々が、そのような理由から、自分たちがつくった野菜を買ってもらえないという状況がもう既に起こりつつあります。
 そういう中で、今回例えばセイヨウオオマルハナバチが特定外来生物に指定されなかった場合に、我々としてというか、生産者としてというか、利用者側として胸を張って、お墨つきというと言葉が変ですが、特定外来生物に指定されなかったので引き続き環境に安心・安全な野菜をつくり続けることができますというような、ちょっと極端な例ですけれども、言うことができるのかどうかということ。そういったこともご判断を下していただくときに、頭の片隅にでも置いていただければなというふうには思うんですが。

【五箇座長】 では、引き続き米田委員の方からもお願いします。

【米田氏】 ちょっと光畑さんとは違った意見になるんですけれども、侵略的かどうかというのは基本的に立場の違いなので、これはどっちがいいかという問題ではないと思います。入ってきた生物が侵略的であったかどうかというのはあくまでも結論で、それはデータがとられた後の問題であり、今回の法律とは全く次元が違う問題である。今回の法律というのは基本的に、入ってくる前にそれを判断しようというのが根本であるはずですので、データがないのは逆に当たり前で、データがあってしまったら、もう遅い。その中で、あるデータを用いて、最大限の効率で侵略的であるかどうかを推定していこうという試みなので、この問いかけ自体が僕自身はちょっと余りピンとこないというのが本当のところです。セイヨウオオマルハナバチが侵略的であるかどうかというのは、やっぱりもう何年もたった後、被害が出てからのことであって、それを防止しようという考えに基づいたことですので、まず侵略的であるというふうに仮定して進めていって、厳しい目で見ていくというのが妥当ではないかというふうに判断します。

【五箇座長】 どうもありがとうございました。非常に貴重な意見を出していただいたと思います。
 ここで一番大事なのは、各委員の方で共通しているのは、実はこれは判定しようも何も、判定根拠というものに関してガイドラインも何も準備されていないまま、こうやって各生物種に関して、こういった会合が開かれて、それぞれの種に対して検討がなされているというのが現状です。そういった中で、池田委員の方からも意見があったように、判定する手法などというものはないわけですね。それがないのも当たり前で、生き物というものは、それぞれにライフサイクル、それから形、大きさ、いろんな意味で全く違った生き物なんですよね。そういった意味では、それを統一して判定するなんていうガイドラインはつくれるはずもないわけで、実際問題、そこがこの法律の難しいところでもあるわけです。そういった中で、そのほかの委員から共通して出ている意見として、やはり予防原則が本来はこの法律の趣旨であったはずであるということに立ち返れば、やはり疑わしきは罰するというのが、本来のこの法律の趣旨であるというふうな考えに立つべきであろうというふうには思います。
 ただ、問題となるのは法律である以上、これを一たん特定外来生物に指定した場合、確実にこれを規制しなくてはならない。規制するに当たっては、規制そのものには今度は手段が必要になります。すなわち取り締まりですね。輸入を禁止する、あるいは管理する、または飼養場面において適正な飼養をきっちり管理するというシステムが必要になってくるということです。個人的には幸いにして、このマルハナバチというものに関しては、まだその部分でのコントロールは可能であろうと考えています。ただ、それに当たっては、やや時間も必要であろうというところです。というのも、やはり日本における農業人口は決して少なくもありませんし、これを飼養されている農家も決して少なくはない。さらに各農家が飼養されている状況というものも、これまた非常にバリエーションに富んでいるという状況にあって、それぞれの場面や飼養時期、飼養量に応じて、どういった形でこれを管理していくかというのは、これからその部分に関してシステムをつくるための調査というものも多分必要になってきます。
 結論から言えば、予防原則ということに立ち入れば、ちょっと話はそれますが、例えば同じように生態リスクを評価するという部分では、化学物質においても化審法という法律があって、これは非常にわかりやすいシステムだと思います。つまり室内レベルでミジンコや魚、あるいは藻類に化学物質をかけて、そのLC50で判定するという方法をとっています。つまり垂れ流しにしてしまう前に、室内レベルでのたった3種の生物試験で、それを決めてしまおうという非常にわかりやすい法律をつくってあります。その部分から言えば、野外で垂れ流しにしちゃってから魚が浮いてしまったということで判定していたのでは、これは予防原則にならないし、それは全く審査にはならないということになります。その原則をこの法律にも同じように当てはめれば、ここに書いてありますように、室内実験結果等を踏まえれば、これはやはり危険種であると認定すべきであろうと考えます。
 ただし、ここで、先ほども言いましたように、特定外来生物に一たん指定してしまいますと、即座にこの法律が執行されることになります。入れてしまうと、もう待ったはなしになるわけですね。そういった意味で、実際はコントロール可能なものなのですが、今ここで入れてしまうということで、そのコントロール手法そのものを確立する前に、それを規制してしまうということが、果たして妥当かどうかということも考えなくてはならないと思います。
 といいますのも、ただいま生産者側からの意見として、実際これに頼っている農家というものは非常に多いわけですね。何より我々委員も含めて、そういった農家が生産している農産物に頼って生きているという現状もあるわけです。そういった実情も踏まえて、というのも、これはやはり法律です。法律である以上、経済的、社会的な部分での日本国民の健康で安全で平和な生活を支えるというのも法律の使命であります。そう考えた場合、単純に危険種であるということで、それを取り締まるという一方的な形だけで、この法律を執行するというのは、また意味が違ってくるだろうと思います。
 そういった意味で、ここに関しては、まずこの文面を変えることの意義はどれだけあるかということもあると思うんですが、私の方からの意見としては、セイヨウオオマルハナバチについては室内実験等により危険種であると判定される。したがって、予防原則にのっとり、屋外において生態系被害が出る前に何らかの対策を講じる必要があるという形で、このマルハナバチに関しては判定結果を出すべきであろうと考えます。その上で、ただし、先ほども言いましたように、このマルハナバチについては、まだコントロールするシステムをつくることは可能であろうと判断されることから、約1年間かけて、その生態リスクそのものを評価するという部分に関して、よりデータを充実させて、その判定法そのものも含めて、文字どおり確たる証拠を得るということ。
 それから同時に、ここに書いてありますように、国、農協、メーカーにおいて連携して、逃げ出すことを防止する措置と及び流通における管理システムというものを整える状況をつくると。それがうまくいくということであれば、継続飼養が可能であろうと判断されると思います。その上で、そのデータの整備状況及びシステムの整備状況を踏まえた上で、最低でも1年間をめどに、このマルハナバチについては特定外来生物リストに入れるということを前提に再検討をするという形で、ここに示してあります事務局案にのっとって今後の方針というものを決めたいと思います。
 この方針に関しまして、何かご意見があればお願いします。
 池田委員。

【池田委員】 今の座長さんの方のその根拠として、要するに実験室内でのデータというんですか、それを随分、尊重というのはおかしいんですが、それをもとにされているような感じを受けますが、それだけでいいんでしょうかね。ちょっと実験室、実験の規模とか、実験の回数であるとか、あるいはほかの種ですね。マルハナバチはたくさんの種類がいますので、そういうものの実験というのがなされているわけではない。しかも実験室というのは、もちろん閉鎖的な空間であるので、屋外の開放的な空間の自然環境とは随分異なった地点である。そこを強調するというのは、ちょっとそれを根拠にすると、後々の種類が出てきたときに、ちょっとそれで通用するかなという気もいたしますがね。それはいかがでしょうか。

【五箇座長】 根本的に本当に生態学、純粋に生態学的な立脚点に立つと、おっしゃることが一番ごもっともだと思います。ただ、現段階では、やはり小野委員の方からもご意見あったように、輸入量が非常に多いと。ますますこれは増えているという状況にあって、やはり何らかの形で野放しという部分に関しては措置が必要であると。その部分について、あくまでも予防原則であるということを強調するに当たっての現段階で根拠となるというか、我々自身がそれについて科学的根拠と言えるデータに関しては、残念ながら室内レベルのデータしか今のところはそろえられないというのが現状だと思いますね。
 だから、ある意味、強調しているというふうにとられるかもしれませんが、現段階では、今の証拠をもって意見をするとすれば、室内実験レベルでも危険であると判定した上で、予防原則であるということを認識していただいて、これをいかにコントロールするかというふうな意識に持っていかなければいけないんじゃないかと思います。
 もちろん、だから今おっしゃられた意見も踏まえて、今後やはり証拠集めですね、こういったものは補充しなくてはならないと思います。現実問題、これだけの証拠では本質的には、生態学的には本当に証拠とは言えないというのは確かだと思います。ただ、そういって証拠がそろうのを待っていたのでは、その時間の間にもやはり輸入量はどんどんふえていくという現状もあるということを考えなくてはならない。明らかにマングースとかオオクチバスのようなものとは違って、これは商品として確実に輸入され、飼養されているという現状がある。そういった中では何らかの形で歯どめをかける。平たく言えば、うたい文句が何か必要になってくるのではないかというふうには考えます。
 ただ、その部分に関しては、反対意見や反対証拠というものも、これからどんどん出されてくるべきであろうと思いますね。それが本来の科学的な議論であろうと考えますから、これを機会に、この分野における研究というものが重点化されて、ポジティブデータ、ネガティブデータをきちんとそろえて、同じ土俵で議論するという状況をつくっていくべきであろうと考えます。その意味でも、この1年間を目途にというのは重要な意味を持つんではないかなというふうには考えます。
 どうぞ、小野委員。

【小野委員】 私も全く五箇先生の話に同感なんですけれども、侵略的かどうかということについて、商品であるということの特殊性があるのと同じように、即座に取り締まって使用困難な状態にしてしまうということが難しいのも、また商品であることの特殊性ではないかなと思うんですね。
 ただ、これはちょっと今回の話とはずれてしまうかもしれないんですけれども、関連の問題として、特に商品としての利用というところの関連の問題として、実際にトマト農家、あるいはその他の農家の方でも、マルハナバチを受粉に使っておられる多くの方々が失いたくないのは、セイヨウオオマルハナバチという“種そのもの”ではなくて、マルハナバチという昆虫が持っている“振動受粉”という、その行動だと思うのですね。そういうことから考えると、代替の種を検討する可能性というものはまだ十分に残されているし、またこの今回のこの会合がセイヨウオオマルハナバチそのものをどのようにすれば利用できるかというような使用法を非常に厳格に判定するという前向きなとられ方ということも多分できると思うのですね。
 特に在来のマルハナバチとして、今まだクロマルハナバチが、十分な量とは決して言えない量ですけれども流通しているということがあって、それそのものに関してもいろいろな問題があることは、五箇先生などのご指摘などによって周知されているわけですけれども、ただクロマルハナバチの方に関しても、雄と働きバチ、生殖虫と働きバチを素人でもぱっと識別できるというような、商品として利用する上で巣箱をかえるタイミングですよね。そういったものを見きわめる上で、非常に素人でも扱いやすいという点とか、あるいはオオマルハナバチと生殖隔離がなされている可能性が高いということなど、利点を含むものもありますし、使用法と、それから使用する種と、うまくこれから検討していくことで、商品としての位置づけというものも守りながら進めていくことが可能になるのではないかなというふうに考えてもいいんじゃないかと思います。

【五箇座長】 どうもありがとうございます。今、小野委員の方からもありましたように、今、外来種に頼っているところも大きいけれども、日本にもマルハナバチがいるということで、その部分での新しい技術というものにもシフトする時期に来ているのかもしれないというところだと思います。そういったことを推進する上でも、この法律をどのようにある意味うまく活用していくかということが、今後のマルハナバチ産業のキーになってくるとは思います。
 改めて先ほども言いましたように、このセイヨウオオマルハナバチに関しましては、特定外来生物の候補種として、この1年間さらに検討を重ねるという部分について、この会合として決定していいかどうかという部分について、もし異論があるようでしたら改めてこの場でお願いします。
 では、横山委員の方からお願いします。

【横山委員】 検討自体には異論は全くないのですけれども、私自身は生態影響を主張してきた立場ですので、私自身の意見としては、確実に入れていただきたいと考えておりまして、時期的な、例えば余りずるずるとその期間を延ばすというのは適切ではないというふうに考えておりますので、最低でも上限を必ず設けて、その後、例えば1年なら1年できっちりとその決着をつけるというような形にしていただきたいと思っているのです。
 ただ、いろいろな対策は当然時間がかかると思いますし、もちろん必要な対策はたくさんありますので、それを準備するのに非常に時間がかかると思うのですけど、ただ先延ばしにできるような状況では、結局生態被害というのは、これから先、私自身は非常に高い確度で、さらなる新しい生態被害を示唆するようなデータというのはとれてくるというふうに考えておりますので、そういった観点からしますと、やはり期限をきっちり設けて、ここから先はきちんと規制する、ここまでは経過措置という形で、ある程度柔軟に対応するというようなことを委員会と連結して、できれば明確にしていただきたいというふうに考えております。

【五箇座長】 どうもありがとうございます。
 池田委員の方から。

【池田委員】 私の意見はちょっと逆の立場で、1年で何ができるのかなと。せっかく検討するのだったら、もうちょっと置いた方がいいんじゃないかというふうに思います。
 それから、このまま1年と書いてありますが、この1年程度で一体何を重点的にやるのかな、どういうお考えなのかなと、ちょっとそれをお聞かせいただきたいと思いまして、それで発言したわけです。

【五箇座長】 今、横山委員の方からは1年、この時期には再びこの場で、このマルハナバチに関しては特定外来生物に入れるという会合が開かれるであろうということを確定していただきたいという意見。
 それと、池田委員の方からは、この1年間で一体具体的に何ができるであろうかという部分についてご意見がありました。
 まずその1年、この1年間でデータ収集及びシステムの整備をするということを進めた上で、来年のこの時期、再び再検討するということになると思うのですが、その状況で、これを特定外来生物に入れるというふうな部分に関して、環境省の事務局としてはどうですか。その部分に関しての確定というか、現段階でそれを意見するのは難しいと思いますけれども、環境省の方針としてはどのようにお考えかということを。

【環境省 上杉企画官】 まず、この小グループ自体は、きょうの結論によると思いますけれども、引き続き検討する体制をつくると。例えばチェックをしなければいけない状況が明らかになってきたということで言えば、1年後と言わずに、実はもう少し前倒しの検討を開始していただくということを考えていただければいいのかなと思っています。ただ、それは状況を見ながら、1回で終わるのではなくて何回かやらなきゃいけないということであれば、そういうことでお願いしたらいいのかなというふうに思っています。
 それで、基本的には先ほど五箇座長の方から話がありましたように、ここは指定について検討という、当然それを前提にした検討をしていただきたいということでありまして、その方向での前提として、どういう調査をやっていただいたらいいのかについては、また別途いろんなご意見を伺えればというふうには思っています。
 それから、恐れをどう見るかというところにつきまして、この法律自体は当然生態系等への被害が現に生じていなくても、おそれがあれば対象にし得るということでありますけれども、そのおそれをどう見るのかということについては何らかの明確な基準というものはもちろんあるわけではありませんので、ここでの議論をもちろんベースに判断をしていくしかないと思っています。そういう意味で、先ほどから議論になっていました「確たる知見は得られていない」というところの表現ぶりは、確かにそういう意味では少し直していった方がいいかなというふうに思っています。
 ただ、実態的に、十分に被害の状況をどの程度説明できるのかということについては、まだ知見が足りないという意見も非常にあったということだというふうに理解をしています。

【五箇座長】 今、環境省の事務局からも説明がありましたように、この問題はむしろコンスタントに常に検討し続けていくことになるだろうと。大体、年度がわりには見直しということになりますから、その意味では最低でも来年のこの時期には、それが決定されているはずであろうということになると思います。
 ただ、それについては、やはりここにそろっておられる委員も含めて、研究者、あるいは生産者、利用者が常にこういったものを議論するという場は設けて、コンスタントにこれを検討し続けるということは必要だろうというふうに考えられます。
 今、池田委員の方からも意見があったのですが、実際に1年間で何か具体的にデータ収集及びシステムを整備するということが可能かどうか、またそれが可能だとして、実際にどういったことをやるべきなのか、やらなきゃいけないか、やれるかということも考えていかなきゃいけないと思うのですけれども、ちょっとその部分について、それぞれに今回検討していく上で、生態影響の部分に関しても各方面の専門分野から意見もしていただいたと思うのですが、逆にその専門分野に立って、そういった生態リスクという部分について、どういった研究がこの1年間で可能かどうか、あるいは進める準備ができるかどうかという部分について、具体的な意見をいただきたいと思います。
 最初に、定着、野生化の部分や競合の部分という意味で研究を続けておられる横山委員の方から、もしこの1年間さらにデータを収集するとなれば、何を重点的にやるべきかということ、あるいはここでいうところの確たる証拠というものについて、どういった補充が可能であるかという部分について、もし何かビジョンがあるようでしたら、ご意見をいただきたいと思います。

【横山委員】 私、個人的な意見としましては、やはり今のところ非常に我々の出しているデータは、定性的な部分が非常に大きい。ですから可能性は非常に高いけれども、具体的にどれくらいの例えばスピードで、あるいはどれくらいの割合で、そういった特定の在来生態系に影響を及ぼしているのかということについてのデータが非常に弱いというふうに私自身は認識しておりますので、今回大きく三つの点に注目してデータをとりたいと思っているのですけれども。一つは、具体的にどのくらいのスピードで例えば分布を拡大しているのか。そういった分布が拡大される、そういうふうに広がっていく場所には何かしらの例えば環境的な要因があるのかどうかということについて、北海道を中心にモニタリングポイントを設定して、それでそこにいる在来マルハナバチの種数、あるいは存在量も記録をしながら、セイヨウオオマルハナバチがどういうふうに今現在、北海道に野外で存在していて、なおかつそれがどのくらいのスピードでその周辺に広がっているのかいうことを定量的に把握したいというふうに考えております。この点は、既に環境省の予算をいただきまして調査を開始しております。
 2番目は、実際に競合関係がどれくらい具体的に今まで起こっているのかということについて、営巣環境とそれから採餌環境について、両方の面から明らかにしていきたい。これは今回の会合の議論になりましたけれども、実際にどのくらい野外に営巣可能な環境があって、あるいはどのくらい採餌可能な環境があって、なおかつどのくらいの資源量が野外に存在しているのかということを定量化したい。その定量化を踏まえた上で、定量化したデータ、そういうふうな採餌可能な範囲、それから営巣可能な範囲、それがどのくらいあって、そこに実際どのくらいのマルハナバチが生息しているということから、マルハナバチのその地域内での環境収容力みたいなことをきちんと把握した上で、実際どの程度の競争が起こりそうかということをより定量的に明らかにしたいというふうに考えています。
 3番目の点は、種子繁殖の方で、これは一番データが少ない点ですので、この点については観察データを踏まえて、実際に在来植物でセイヨウオオマルハナバチの訪花が頻繁に観察される種類を対象にして、実際に種子繁殖にどの程度の影響があるのかということを今までの定量的な研究を行っていきたい。それから、できた種子の質ですね。実際に例えば他家受粉などで質のよい種子ができるのでしたらいいですけれども、そうじゃなくて自家受粉の種子をつくってしまうとかということが、もしセイヨウオオマルハナバチが訪花することによって起こるのであれば、それはやはり長期的には影響を及ぼすことになると思いますので、そういった種子の質の問題についても定量的に明らかにしたいというふうに考えております。
 以上です。

【五箇座長】 どうもありがとうございます。今、競合及び在来植生に対する影響という部分についての重点課題としては、どういったものがあるかということを説明していただけたと思います。
 あと、もう一つのリスクとしては交雑の問題があったと思います。この部分については、私自身が国立環境研究所の方で中心になって、実際にセイヨウオオマルハナバチが在来のマルハナバチと交雑をしているかどうか、屋外で起こっているかどうかとか、あるいは室内交雑実験で雑種ができるかどうかということも、小野先生のところもやられていたのですけれども、こちらの方でも再検討をしているという状況です。
 現段階でわかっていることは、まだ野外で雑種が増えているという証拠は今のところは出ていないのですが、モニタリングそのものは、ここ3年は行っておりませんので、改めて再調査する必要があるということ。それから交雑実験においては、セイヨウオオマルハナバチの雄と日本のクロマルハナバチ、これを交雑させると、受精まで行くんだけれども胚発生をしない。つまり不妊化をさせてしまうおそれがあるということがわかっておりますので、そういったことが野外で実際に起きているかどうか。つまり野外の在来の女王蜂の受精嚢の中に、セイヨウオオマルハナバチの雄の精子が実際に入っているかどうか。いわゆる異種間交尾が実際に野外で起きているかどうか。また、起きているとすれば、その頻度はどれくらいかということを定量化するということが必要であろうと。これは過去3回の会合でもたびたび出てきていることですが、それが多分この1年間での緊急課題ということになるかなと考えております。
 もう一つ、パラサイトの持ち込みの問題ですけれども、これについてはどちらかというと外国の方ではかなりナーバスにとらえておりまして、実際にアメリカ合衆国の方でセイヨウオオマルハナバチとは違うんですけれども、同じマルハナバチ属のボンバスオキシデンタリスという種類を合衆国の中で商品化して飼養していたものが、その工場の中で病害、微胞子虫によって、その工場が壊滅的打撃を受けたりとか、あるいはそのほかさまざまな体内寄生性の昆虫などが発生すると、工場の中のコロニーの生産が非常に著しく落ちるという状況がある。どちらかというと工場生産という部分に関して、寄生生物というものの脅威がとらえられていたわけですけれども、日本の場合は特に、野外にもマルハナバチがいる、日本在来のマルハナバチがいる。こういったものに対して、こういった持ち込まれたパラサイトがどういったインタラクションをもたらすであろうかということについては、ある意味世界的にもそういった事例はないという状況にあるので、この部分については具体的にやはり在来種に、もしそういった寄生生物が感染すればどういった影響を及ぼすかという具体的なデータをとっておく必要があるであろうと考えます。そういった部分で、まず持ち込まれているパラサイトそのもののリストアップ、それからそういったパラサイトを在来種に感染させた場合に起こるであろう現象というものを、やはり科学的、定量的にとらえるという研究が必要になってくる。それが、パラサイトの部分についてのこの1年の課題になるかなと考えられます。
 今、言いましたように、生態リスクという部分に関しての評価というところについては、それぞれの分野においてやるべき研究はあるであろうと考えられるのですが、同時に例えば防除手法ですね。ネットを張って逃亡を防止させるということは既に具体的にやられているわけですけれども、それによる効果の判定ですね。実際にネットを張るということで、どれだけ逃亡が防げるか。あと、逆にそのポジティブな効果として、それを張ることで生産性がどれだけ上がるか。あるいは逆にハウス内での環境が悪くなることで生産性が下がるということも考えられる。そういった部分に関しての影響評価も必要になってくるというふうに考えられますけれども、この部分に関して普及会の方と、あるいは農水省の方とで、何らかの形で具体的にそういった試験系というものは可能かどうかということですね。それもこの1年間の間に実行可能かということについて、ご意見いただければと思います。

【米田氏】 普及会の方からお話ししますと、ネットの展張というのはいろんな地域のハウス、あるいは生産者ごとにハウスの形は違うものですから、こういうふうにしたらいいよというのは具体的には存在していません。ネットを張ったら逃げ出さないというのは、普及会の方でも岐阜大学と共同でこれまでも試験しておりまして、ネットの張り方によって逃亡をさせなくするようなものというのは、それなりに見つかりつつあります。つまり、どんなところに蜂が飛んでいくかというのをハウスの中で行動を観察したりとか、そういったものを専門家の方と一緒に見ることによって、蜂の動きをあらかじめ予測しながら、そういったところにネットを張ってしまえば帰ってこないみたいな実験というのをこれまでにもやっておりますし、これから先ももっといろんなタイプのハウスで、いろんな大型のハウスですとか、これまでネットの展張が無理だと言われてきたハウスなんかでもやっていこうというふうには考えておりますし、計画も進めています。
 そのときに、例えば巣の大きさがどれくらいのものが出荷されてきて、そこから何匹逃げ出す、それがさらにハウスの外へ何匹出ていくということと、ハウスの周辺で何匹捕まるかというようなもののデータがそろえられれば、横山先生の方のデータと照らし合わせていくと、屋外にそのまま存在している数というのを大まかに割り出せるんじゃないかなというふうに考えておりますので、これは特に北海道の方とか、そういったところを中心に皆さんと協力しながら、これまで生態系への調査ということになると、どうしても野外の環境ばかりの調査だったんですけれども、それを生産者の方と共同でハウスの中に入らせてもらいながら、どの個体がどこまで行っているというようなデータもひっくるめてとるような形での協力、そのことを考えております。これは1シーズンあれば大体幾つかデータはとれると思いますので、そういったことを考えています。

【五箇座長】 ありがとうございます。今、普及会の方からも説明があったように、ネットそのものの効果というものは、ある程度、既に得られているところもあり、今後そういった部分で農家の協力も得られれば、さらにデータはとれるであろうということですが、ここでお手元の資料にもあると思うのですが、マルハナバチ逸出防止ネットの展張に係る支援措置についてという…。

【池田委員】 ちょっとすみません、その前に。

【五箇座長】 どうぞ。

【池田委員】 一言なんですが、防除の関係で、今、ネットの話しか出ていないんだけれども、現実に野外へ出ていったこういった個体ですね。これの防除というのもできるのですから、これの取り組みというのはどのようにお考えになっていますか。

【五箇座長】 ちょっと話が前後してしまって、今ちょっと先にネットの方の話を済ませた上で、今度、野生化の方の駆除ですね。これをどうするかという部分についても、ちょっと検討していただければと思いまして。
 ちょっとそのお話の前にネットの話に戻しまして、実は農水省の方から、マルハナバチ逸出防止ネットの展張について、支援措置を準備しているということが、資料も配られておりますが、この部分に関して、ちょっと農水省の方から説明をいただきたいと思います。

【農水省 岡田補佐】 農水省の野菜課ですけれども、お配りした資料で前々回ですか、マルハナバチの逸出防止ネットに係る支援措置ということで、その際、私の方からは基本的に補助金として個人に行くものはございませんというお話をさせてもらったのですけど、ちょっと表現的にはそれで正確なのですけれども、全体像としては見えにくかったので、1枚の紙にまとめさせてもらいました。
 お手元の資料のⅠですけれども、当然こちらは農水省なので、生態系保全ですか、そういう目的のための支援措置というものはございません。これはなしということで、当然農水省でございますので、野菜の生産なり、その振興ための支援措置ということで、大きくは二つ用意してございます。
 一つ目は制度資金ということになります。ここに書いてある公庫なり、近代化資金、改良資金という感じの資金で、これは個人の方が借りてやっていただくということなので、例えばネットを買うということに対して、資金的な利子補給という形になりますけれども、そういう支援をまずしていると。これがどっちかというと、一般的な使われ方かなというふうに思っております。
 もう一つは、補助金ということになりますけれども、これは個人の方には出しておりませんで、原則的には集団でやられる取り組みに対して補助金を出すということです。前回、説明すればよかったんですけれども、まだ概算決定されていませんで、今回概算決定の数字で出しておりますけれども、今回のマルハナバチに関する、例えばネットを展張したいというものに対しては、ここに書いてある輸入急増戦略的対応特別対策事業というものが対応できるというふうに考えておりまして、ただ、この事業、来年度から交付金カット、ちょっとこの場では聞きなれないとは思うのですけれども、今まで基本的に事業というのは国が採択してやるという方式だったのですけれども、来年度からはある一定の指標に照らし合わせて、各県にお金を交付して、各都道府県に使ってもらうという方式に変わりますので、それの「強い農業づくり交付金」という名前なのですけれども、これが大体470億ほど用意してあります。
 これによって何ができるかということですけれども、そこに書いてありますけれども、例えば新たにマルハナバチを導入する際の実証ほの設置、これに対して助成が可能と。この際、ネットの展張代についても補助対象にはなってございます。
 この新たなマルハナバチということなのですけれども、今までセイヨウオオマルハナバチを入れていない場合は、当然これは新しく入れますというのは新技術という形で補助対象になるのですけれども、今はもう入れているという産地の場合はそうはなりませんので、むしろ当方としては、普及が余り進んでいない在来種のマルハナバチの試験導入と実証ほの設置に対しての助成ができるんじゃないかなというふうに考えております。いずれにせよ来年度からは、各都道府県の意思で交付金の方は決定されますので、うちとしてはメニューとしては用意しているという状況でございます。
 Ⅲの方は、これはちょっと逸出防止ネットの展張に係る支援措置とは直接は関連しないのですけれども、昨年末28日に当方から公表したことで、ある種の宣伝にもなるのですけれども、「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」と、これは競争的研究資金ということになるのですけれども、これの全国領域設定型研究において「セイヨウオオマルハナバチ等の生態影響に関する研究」というものを研究領域として設定させてもらいました。一応、この概要については、またホームページ内で見てもらえばよろしいのですけれども、その中には結構幅広く想定される研究ということを入れておりまして、その中にもマルハナバチの逸出防止のためのネットの展張の仕方を開発するという課題は一応盛り込んでありますので、これは競争的資金ということですので、応募される方がそれをやらないというとできないんですけれども、そういう一応領域は設定して、今防止をしておるという状況であるということだけはお知らせします。ちなみに締め切りは、今月の28日が締め切りでございます。
 以上がネット展張に係る支援措置ということで、ご説明させてもらいました。

【五箇座長】 どうもありがとうございます。この会合の中でもたびたび農水省の方から何とか、いわゆる農家さんに対するそういったマルハナ管理に対しての補助というものは出ないかという意見があったのですが、それに対しまして、こういった形でいろいろある程度縛りといいますか、条件はありますけれども、補助というものは可能であるということは示されております。あと、研究資金に関しましては、また後ほど改めていろいろ検討したいと思いますけれども、農水省の方でもこういった資金は準備しているということが説明いただけました。
 あと、先ほど池田委員の方からも意見がありましたように、実際に野外に逃げ出して定着、野生化しているというものの駆除に関して、どのような手法がとり得るかというところですが、まず最初に池田委員の方から、もし駆除するとすれば具体的にはどういった手法が考えられるか。特にこういった分野に関しての経験が豊富と考えますので、その辺何か意見をいただければと思います。

【池田委員】 いやいや、これはマルハナに限らずに、これからいろいろと外来生物の関係であると思うのですよ。
 それから、もう一つには、いわゆる農林害虫ですね。その取り組みもあるのですが、今まで入ってきたものに対しては、農林省も緊急防除対策事業というのがあるのですが、病害虫の関係ですね。あるのですが、それを適用して、そして根絶等が終わったという事例は本当に少ないんですね。考えてみると、99%はそのままという状態になっていまして、それは各府県で対応するというようなことで、今まで処理してきたと思うんですね。ですから特別な方法というのは、決められたメニューというのはないと思うんですね。
 これは今後、どの程度これを要するに根絶するのか、あるいは生態系、あるいは人間の生活環境に生きている中で、どれぐらいまで容認するのかとか、その辺の見通しというのがどうなっているのか。根絶というと、もう次元が違いますので、非常にもうこれは大変なことになりますが、やってできないことはない。それによってうんと違うんですね。私はあえてこういう方法でやればいいということは、この席では言いません。むしろどういうお考えかということをお聞きしたいんです。

【五箇座長】 農業害虫と違いまして、これは確かにマルハナバチですから、要は害虫のように農作物を食い荒らす農業現場において、殺虫剤をまけばいいというのとは、またちょっと状況が違ってくると思いますので、ちょっと正直なところ、池田さんの方で何かもしいいアイデアがあったらと思って、ご意見を伺おうと思ったんですけれども。確かにこれは結構難しいと思うんですね。その問題となるのは、いわゆる農業環境から逸脱して、それ以外の生態系の部分で野生化しているというものですから、そこで駆除するというのは、そこに生息するほかの生き物に対するインパクトも考慮しなくてはならないというので、非常に厄介なところがあるかと思うんですね。
 以前、前回の会合で小野先生の方からフェロモンに関する研究データも示していただいたと思うのですが、こういったフェロモンを例えばトラップに使うとか、そういった可能性というのはありますでしょうか。例えば殺虫剤だとどうしても無差別になってしまう。非常に非特異的で、結局は在来のマルハナバチも一緒に駆除してしまうことになるだろうと考えられるんですが、フェロモンであれば、特異性があれば、いわゆる誘引剤ですね。アトラクタントとして使うことも可能かと思うんですけれども、その可能性についてはどうですかね。
 では、先に池田委員の方から。

【池田委員】 ちょっとその前に、こういう防除というのも一応考えているんですか。

【五箇座長】 もちろんそれは考えています。ですから基本的には屋外に出ているというものは駆除しなくてはならない。いずれ特定外来生物に指定されれば駆除対象になるというのはありますから。したがって、それは野放しにするというわけにはいかないということですよね。

【池田委員】 恐らく農林害虫より私は楽だと思いますよ、逆に。楽だと思います。

【五箇座長】 その部分に関して、何か具体的根拠があれば。

【池田委員】 根拠は私なりのアイデアがあるから、私もそれでもってちょっと研究してみようかなということがあるので、ちょっとこの場では言えません。前回も言いました。前々回かな、言いましたが。アイデアはありますがね。

【五箇座長】 じゃあ改めて、フェロモントラップという手法は使えるかどうかということに関して、小野委員の方からご意見あればと思います。

【小野委員】 たしか2回目のこの会のときに、ちょっとお時間をいただきました。その際にマルハナバチの野外における配偶行動が、雄蜂の生産するフェロモンによって成立しているという知見が、日本の種類に限らず既に広く知られているというようなお話をしました。そして、そのフェロモンが種によって異なっているということです。ですから、そのフェロモンを細かく分析して、そして、つまり日本在来のマルハナバチ種の雄のフェロモンを比較分析し、それにセイヨウオオマルハナバチの知見も加えてくることによって、生態系で交雑が起きてしまっているかどうかということも同時に予測することができるというようなお話をさせてもらったわけですけれども、それをさらに発展させた形が、今の五箇先生のお話になってくると思います。
 誘引性がある化合物であるならば、屋外での生物検定がまだ行われていないという話もさせていただいていたわけですけれども、その生物検定にも今後重点を置いて見ていかなければいけないわけですけれども、きちっとした野外における誘引活性が認められれば、フェロモントラップ開発の可能性は高まると思います。さらに、それを利用して野外に逸出している生殖虫を誘引し、捕殺するというような応用面的な研究というものも十分に考えられると思います。

【五箇座長】 どうもありがとうございます。個人的にはちょっと、池田さんのやれるという手法が本当は一番気になるところなんですけれども、何分にも研究ということであればネタばれはさせるわけにはいかないということもありますので、ここではあえてこれ以上追及はしませんけれども。
 今言いましたように、ある程度具体的に既に各委員、あるいは企業の方でも、これまでも実はこういった法律ができる以前から、生態リスクに関しての研究は進めてきておりましたし、その生態リスクのみならずマルハナバチの生態そのものについての研究というものも進めてきていると。そのバックグラウンドをもってすれば、さらに研究を重点化すれば、そのリスク管理及び防除という部分についての具体的な手法は確立できるであろうと考えられると思います。
 あとは、要はいざ法律に指定された場合、販売そのものも管理していく必要があると。要するに飼養許可を得た上で飼養するという状況になってくるというふうにも考えられます。そういった流通システムについても、これまでは余り議論していなかったんですけれども、実際にそれを管理可能かどうかという部分に関して、マルハナバチ普及会の方からご意見いただければと思います。

【米田氏】 普及会の方から、今、商品の流通ということに関してお話をさせていただきます。現在、セイヨウオオマルハナバチが生産者の方、農家の方につながるまでのルートというのは大きく二つあります。一つは農協を経由するもの。もう一つは農協を経由しないもの。どこのメーカーも、少なくともマルハナバチ普及会に入っているメーカーは、メーカー側から農協、あるいはメーカー側からそれ以外、いわゆる種苗店とか、農協以外のことを主要店とか代理店とかという言い方をするんですけれども、生産者がじかに買う代理店までの情報というのは、まず間違いなく、いつどこで、だれがというのはわからないですけど、だれが何群ぐらい使うかというのは必ず把握しています。なぜかと言ったら、それによってお金が動くからです。農協に関しては、生産者のところの名簿を持っております。代理店というところも、その名簿を持っています。これらは一般に企業上は絶対に明かさない秘密なんですけれども、それらをひっくるめて、データをどっかに集めて統合することができれば、メーカー側から、いつ、どこで、だれが何群使っているかというような情報は逐次わかるというふうに理解していますし、それ以外のところというのはないはずですので、そういうふうに再合成することが可能だと思っています。

【五箇座長】 はい、ありがとうございます。これまでの流通システムをうまく運用すれば、法律で指定された後も管理が可能であるというふうに判断されると思います。
 今、いろいろ意見を出していただきまして、具体的にそれぞれに、実際には研究を重点化すべきというテーマもあるし、それを今すぐにでも進めなくてはならない。それから、ネット展張も含め、そういった防除に関する手法の確立及び流通システムに関しても整備は可能であると考えられるということですね。
 あとは、要はこれを推進していく上では、人とお金が必要になってくるというところですけれども、研究予算という部分に関して、あるいは事業予算という部分に関しては、先ほど農水省の方からも提示がありましたように、競争的資金ではありますが、こういった研究資金も確保は可能であろうと考えられます。
 あと、先ほど横山委員の方からも説明がありましたように、一部、研究は既に今年度から、16年度から国立環境研究所が推進しております地球環境研究総合推進費の侵入種プロジェクトの方でも、一部セイヨウオオマルハナバチの生態リスク研究は既に先行してやっております。これに関しては分布拡大の部分について、横山委員の方で研究していただいております。特に今の推進費については、冒頭で池田委員から意見がありましたように、侵入種の生態リスクの評価手法というものをどうとらえるのかという部分ですね。この部分に焦点を当てまして、実際にそういったリスク判定というものが可能であるかどうか、またそれを可能とするためにはどういった手法が必要かということについても既に研究をスタートしております。そういった意味もありまして、1年という年月はある意味非常に短いとも考えられますけれども、この1年間にコンスタントにそういった研究、継続される研究、あるいは新規に立ち上げる研究も含めて研究データを集め、あるいはまた普及会を中心として、そういったシステムづくりというものを進めていただいて、コンスタントにその状況を確認しながら、再度このセイヨウオオマルハナバチについて、特定外来生物指定というもののタイミングを図りたいというふうに考えます。
 以上、結論としては事務局案にありましたように、基本的には、まずこのセイヨウオオマルハナバチについては特定外来生物に入れるということを前提に、さらに検討を重ねると。この1年間の間にコンスタントに検討を重ねて、入れる準備を進めるということにしたいと思います。
 また、今回のセイヨウオオマルハナバチの取扱いについての案、資料3につきましては、先ほどからも意見がありましたように、特に裏側2ページ目の一番上の○の「セイヨウオオマルハナバチについては、生態系等へ被害を及ぼしているとの確たる知見は得られていないものの」という、この部分の文言については若干修正をしていただいて、取扱いという部分について方針をつくっていただければと思います。
 その部分について、では環境省の方からご意見をお願いします。

【上杉企画官】 修文案の提言、提案というのは、させていただけるのであれば、ちょっと具体的にこういう形で直したらどうかということなんですけれども、ここの「セイヨウオオマルハナバチについては、生態系等へ被害を及ぼしているとの確たる知見は得られていないものの」という部分についてですけれども、「セイヨウオオマルハナバチについては、屋外における生態系等への影響について十分な情報はまだないものの、実験結果等を踏まえれば、被害を及ぼすおそれについて、その可能性を強く示唆する結果となっている」というくらいな言い方にしたらどうかと思うんですけれども。
 それから、一番最後の行ですね。一番最後の部分なんですけれども、「調査の実施状況及び農家への普及啓発状況を踏まえ、随時当小グループにおいて検討を進め」という言葉を入れたらどうかというふうに思っています。「1年程度を目途」の前の部分ですけれども。

【五箇座長】 今、環境省の方で、早速対応していただいたというか、修正案が出てきましたけれども、今の修正案に対して、ご意見、ご異論があればお願いします。よろしいでしょうか。

(なし)

【五箇座長】 では、今の文章に変えていただいた上で、この会合の結論としては、この1年間の間に検討を継続するということで、この会合を終了したいと思います。いいですか。

(異議なし)

【五箇座長】 では、最後に普及会の方から。

【光畑氏】 一つご確認をしたいというか、質問なんですが、この1年間の間に関しては、ネットの展張等を促すことに関して法的担保というものはなしで、強力に推進するということになるのでしょうか。

【五箇座長】 この部分どうですかね、事務局の方は。
 では、農水省。

【岡田補佐】 ネットの展張についてなのですが、今、法的担保あるなしという話もあったのですけれども、既に農林水産省の方は一昨年の中央環境審議会の結果を受けまして、昨年の3月22日付で、実は技術指導通知というものを発出しておりまして、それによってセイヨウオオマルハナバチを使う場合のネットの展張及び巣箱の適正な処理ということは既に指導しておりますので、当然この結果を受けまして引き続き強力に、ここは強制的に指導していくという方針は決めておりますので、法的担保がないとできないじゃないかというお話があるかどうかは当方の関知するところではないのですけれども、基本的には非常に常にそういう形で農水省としても強力にやるという方針はもう決まっておりますので、そういうことはご承知おき願いたいというふうに思います。

【五箇座長】 よろしいですか。
 では、米田さん。

【米田氏】 普及会の方からなんですけれども、セイヨウオオマルハナバチと商用化された在来マルハナバチというものの取扱い方の違いというのはあるのでしょうか。

【五箇座長】 それは法的な部分でということですか。

【米田氏】 そういうことです。

【五箇座長】 この部分に関しては、まず法律そのものは、特定外来生物というものの範疇に入る生き物の条件としては外国産であるということですね。したがいまして、国内の種類に関しては、つまり国境線でくくった場合は北海道から沖縄諸島に至るまで、すべて在来種という扱いになりますので、その場合はこの法律は一切関知しません。したがって、在来種の利用が進む中では、確かにこの会合とは別の部分での議論の場となると思うんですけれども、次の問題としては、本州にしかいないクロマルハナバチを北海道に持ち込むというケースも考えられるということですね。ただし、その場合でも、この法律では一切規制はできません。その意味では、それはまた別の議論が必要になってくるということになります。
 したがって、この場では在来種利用という部分に関しては、あくまでもセイヨウオオマルハナバチの代替戦略としての議論であって、今度はその在来マルハナバチを利用するに当たっての生態リスクという部分に関しては、この法律とはまた違った部分での議論が必要になると思います。
 ただ、あえて言うならば、その意味では生態学者の意見としては、今言ったとおり、本州にいるクロマルハナバチを北海道に持ち込んでいいという話は、セイヨウオオマルハナバチを北海道に持ち込んでいいと言っているのと全然変わらない話だと思います。その部分に関しては、当然やはり在来種を利用するに当たってもネットを張るというのは前提条件にすべきだろうと考えます。ただ、その部分については、この法律の担保はないです。外来種法で取り締まるということはできません。その部分に関しては、別途また指導指針というものが必要になってくるだろうと考えます。
 そのほか、ご意見ありますでしょうか。
 では、横山委員。

【横山委員】 光畑さんの方から、法的担保の話が出ましたけれども、要はこの文言でいくと1年後検討の結果、ひっくり返るといったら変ですけれども、影響ないやないかということになることもあり得るという可能性を十分含んでいるんじゃないかなという印象を非常に強く、私はどちらかというとリスト入りを主張してきた立場としては思いました。そういった懸念を少し感じないわけにはいかないので、できれば例えば「リスト入りを前提に」といった文言が加えることが可能かどうかについて、ぜひご検討いただきたいと思います。
 やはり今まで特定外来種の議論の中で、先日ブラックバスの報道が出ましたけれども、ブラックバスのあの報道だけを見る限りは、ブラックバスはもうこのまま入らないんじゃないかというような印象を非常に強く受けてしまう。もちろん我々は会議の内容を知っていますので、継続審議になったので、当然その継続審議の結果によっては十分ブラックバスをもう一度指定するというような形になることはよく理解してはいるのですけれども、やはりそういった意味で、会議の今までの議論の方向性として、セイヨウはこの法律で規制することをある程度前提にして議論が進んでいるんだということを、やはり文言の中に明言していただきたいというふうに考えております。

【五箇座長】 今、横山委員の方から1年後には確実に入っているという保証がほしいという意見でしたけれども、この部分についてはいかがでしょうか、環境省の方は。事務局の方としては。

【上杉企画官】 少し中で、議論をしていただいたらというふうに思いますけれども、委員の方で。

【五箇座長】 なかなかこれは図式としては、図式という言い方はおかしいのですが、まずここで決めなきゃしようがないのですね。今、言いましたように、入れるということは前提にしているつもりです、この会合としましては。
 ただ、今ひっくり返されるんじゃないかという意見もあったと思うのですが、逆に、例えば池田さんの方からも意見があったように、確たる証拠がないという部分に関しては、影響がないだろうという部分についても確たる証拠もない、影響があるだろうという部分についても確たる証拠はない。どっちの部分についても確たる証拠はない以上は、反対意見という言い方はおかしいですけれども、影響がないという人々も、それなりに科学的データをそろえていただければと思います。
 文字どおり、科学的根拠をもとに、本当にそれをひっくり返すようなデータが出るのであれば、それはそのようなことも考えなくちゃならないだろうと思うんですね。あくまでも科学的な議論の上というのが前提になりますので、そういった意味では、やはり入れるということを前提としていますけれども、当然それはすべて科学的データに依存しての話になるというふうに判断します。
 したがいまして、入れることを前提とはしていますが、それを進める上でも、さらにデータを充実させるということが、この1年の間に行われるべきであろうと考えておりますけれども、その辺についてどうですかね。会合の皆さんとしては、そういった考えで承諾いただけるかどうか、あるいは、ここは何が何でも「リストに入ります」という文言を入れるべきかどうかということですけれども、いかがでしょうか。
 どうぞ。

【光畑氏】 非常に書き方の問題というか、非常に難しい表現になってしまうとは思うのですが、これまでも実際に利用されている方々は、報道等でマルハナバチが審議されているということはご存じですし、既にネットを張るということを自主的に始めておられる方も多々いらっしゃるのですが、そうでない方々が、見ようによっては、例えば審議が先送りになって、また1年後にもリストに入らなければネットを張る必要がないという受けとめられ方をするということになってしまいますと、我々としてはネットの展張を強力に推進すると、これまでも強力に推進してきたつもりではございますので、その部分で、先ほど法的な担保があるのでしょうかという聞き方をさせていただいたのは、そういうところではあるのですが、審議が先送りになったというか、決定が先送りになったという印象を受けられないような文言の書き方が重要なんじゃないかなと思うんですが。

【五箇座長】 そうですね。ある意味、これは結構いろんな意味で、報道の仕方も含めての話になってくると思いますので、実際、公聴会形式ですので、有り体に言ってしまえば、ここで変に誤解はしていただきたくないというのはあると思うんですね。先送りという言い方をすれば確かに先送りかもしれないですけれども、検討は常に継続して行われていきますし、今言いましたように研究という部分についても、あるいは流通システムの部分に関しましても、今後この委員会を中心に進めていくということは間違いなく行われるわけですから、随時この会合は、こういった形でないにしても、そういった部分でのデータの共有及び検討は重ねていくということは決定しております。だから、その意味では単なる先送りというものではなく、準備をした上でリスト入りのタイミングを図るというふうなとらえ方をしていただければというふうには考えております。
 先ほど言いましたように、実際問題は科学的データに基づいての話ですから、ひっくり返るような意見も出てくる可能性もあるかもしれないという話もしましたけれども、どうですか池田先生、その点に関しては。その可能性について何かあれば。

【池田委員】 難しい話でして、今、メーカーさんの方から、ちょっとメーカーさんの立場にしたら珍しいような発言の内容と思うんですが、メーカーさんの方で1年ということがある程度容認されておれば、私はそれでいいのかなというふうな感じもいたしますが。
 もう一つは、今ちょっと予算のところはわかりませんが、環境省の方で北海道等において野外のいろいろな生態調査等の研究費というのは補助して出しているのですか。

【五箇座長】 その部分については、自然環境局じゃなくてファンデーションの部分が地球環境局の方にありまして、先ほど説明しましたように国立環境研究所の方で地球環境研究総合推進費のプロジェクトを今年度、つまり16年度からスタートしております。実際その部分については、セイヨウオオマルハナバチの野外における生態影響のデータ収集という部分について、研究補助をしております。こちらにおられます横山委員の方にそれを委託しまして、データ収集をしていただいているという状況ですので、研究予算という部分については、環境省からは資金は出ております。
 ただ、もちろんそれだけで十分なものではないというのも確かです。ただ、やっぱりその部分については、こういった研究予算にしろ、事業予算にしろ、何分にもすべてが競争的な資金の獲得ということになりますから、こういった研究データをまた着実にそろえていって、あと、この法律というものも一つのきっかけとして、さらに研究予算の獲得の部分についても、さらに弾みがつけばということは我々としても期待はしておりますし、先ほど農水省の方からも、この研究予算というものが準備されているということもありますから、こういった動きというものを、こういった生態リスクに関する議論及びこういった法律を踏まえた中での一つの進歩であろうと考えられますので、今後もこういった動きで、マルハナバチに限らず、さまざまな侵入種分野において、こういった動きがあればというふうには期待しております。

【池田委員】 それに関連して、ですから生態学的な研究に対する補助というのは、わかりました。出しているということがね。防除等に関するその資金、研究費の援助というのは、どんなふうに考えていますか。今までやられていますか。

【五箇座長】 マルハナバチについては今のところ、まだ生態影響評価の部分でとまっております。野生化の駆除に関しては、先ほども小野先生の方からご意見をいただいたように、フェロモントラップ、あるいはネットを張って逃がすということを防除するといった方法、さらにコロニーの処理の仕方、そういった部分に関して、具体的に言えば先ほど農水省から提示していただいた研究予算ですね。この部分に関しては、国立環境研究所の方としても、防除というものを主眼に置いた研究テーマを立ち上げて研究を推進していきたいという準備はしておりますが、現段階ではまだその部分に関する資金援助というものはなされておりません。

【池田委員】 並行してやっていくのであれば、私も前々回のとき思ったのですが、今、北海道でやればチャンスであるから、恐らくことしの4月からですか、これを立ち上げて緊急的にやれば根絶防除が可能かもしれない。それを踏まえてやるなら1年というと、1年後ずっと別の判断の材料が出てくるんじゃないか。1年、大々的にやれば根絶できるかもしれない。それをやらずに生態学的なことでもって、どんどん面積が増えてくる、個体群がふえてくる、これは危ないというふうなところだけだと、私が今までの農林害虫的なことをやって来て、ちょっと腑に落ちない点があります。やればできるということもあるわけです。それをやっていないだけですからね。それはやっぱりやってみる必要がある。だから、私がさっき1年でどうかなと言ったのは、そのことを含んでいるのです。数年やってみれば根絶ができるかもしれない。私は多分できると思っておりますけれども。その前提でちょっと考えていたのです。それでいいです。
 先ほどの岡田さんの生態影響に関する研究というのは、これは農林省の予算ですか。

【岡田補佐】 農水省です。

【池田委員】 農水省の予算。この中で、「セイヨウオオマルハナバチ等」となっていて、その「等」というのは何を含んでいるのでしょうか。

【岡田補佐】 特に何という部分と想定していませんけれども、広く。これは公募なので、基本的にうちがこういうことをやってほしいという大枠のところは実は書き込んであるんですけれども、全体を方針で決めているわけではありませんので、「等」と読むとしたら、例えば在来種の利用とか、そういうところになるのかなとは思っていますけれども、ちょっと広めには書いてあるというだけのことです。

【池田委員】 外来生物一般も含むというような解釈でもいいわけですか。

【岡田補佐】 それは違います。セイヨウオオマルハナバチ。

【池田委員】 それに関してだけですか。

【岡田補佐】 そういうことになります。

【池田委員】 セイヨウオオマルハナバチだけに関してですか。

【岡田補佐】 そういうことになります。そういう意味では、マルハナバチということになります。

【池田委員】 マルハナバチで。じゃあ生態影響というのは、防除の方までは含まれていませんか。

【岡田補佐】 含まれております。含まれていますけれども、当然提案がなければできません。要は、うちがこれをやるという事業ではありませんから、当然その提案があって、それに対してよければ出るということですので、一応排除はしていませんけれども、出るかどうかはまだわからないということになります。

【池田委員】 これの申し込みの資格というのは、どこなんですか。

【五箇座長】 すみません。ちょっとその部分に関しては、とりあえず会合後にまた説明したいと思いますので、ここではとりあえずセイヨウオオマルハナバチの取扱いという部分に関して議論を集中させたいと思います。
 いいですよ。どうぞ。

【光畑氏】 話を戻してしまうんですが、先ほど池田委員の方から、メーカーとしての発言として珍しいということを言われたんですけれども、要は私どもがネットを現場で強力に推進する際に、環境省のホームページをよく読んでくださいというのもあれなんですけれども、現場でネットを張ることについて、1年後に入りますから張ってくださいと言ってしまっていいものなのかどうか。張っていただくお話をさせていただく際に、どのような説明をすればいいのかというところをちょっとお聞きいたしたいなということで、あのようなご質問をしたんですが。

【五箇座長】 その部分について、確かにある意味お墨つきがあればやりやすいであろうというところもあるとは思うんですが、現実に法律にこれからも入れようという議論はしているのは事実であって、それはうたい文句にはできると思うのですが、入っていないものを入ったというふうな言い方は、まずできない。これは明らかに法律の問題ですから。間違いなく入りますよということですね。これはもちろんそのつもりでこの会合は進めておりますけれども、先ほど言いましたように、実際には科学的データというものも根拠にしておりますので、逆に1年やっている間にひっくり返るデータが出てくれば、また話が変わってくるというのも事実です。それはやはり事実だと思います。あくまでも科学的な問題としてです。いわゆる単なる政治的な力問題とか、そういう問題じゃなくて、科学的なデータの問題としての話です。
 その意味で、その担保をどうすればいいかという部分に関してですが、これは非常に難しい話だとは思うんですが、こういったことが議論されているというのが現実にある。セイヨウオオマルハナバチというものは外来の生き物で、そういったものが逃げ出すことはよくないことであるというのは、もう十分議論はされているということです。そういった部分に関して、いかに法律に入っているから逃がしちゃいけないというよりも、外来種だから逃がしちゃいけないというのが本来だと思うんですね。それ以前に、マルハナバチに限らず人間の利用目的、ペットも含めて人間の都合で利用している生き物を簡単に野外に放していいというのは間違いであるというのが本来の精神だと思うんですね。その部分の普及啓発が、恐らく大事になってくるだろうと考えます。
 したがって、本来ならば確かに法律に入っているという説明があれば一番わかりやすいかもしれませんが、それはある意味、逆にそういった普及啓発とはまた別の問題だと思います。外来の生き物を利用するという問題、これはマルハナバチに限った問題ではないはずですね。天敵農薬も含めての話ですから。そういった部分で、そういったものを飼養するという場合は、そういったものを逃がさずに、そのほかの生き物へのインパクトを最小限にするということは当たり前のことであるという前提に立った上での飼養指導が必要になってくるだろうと思います。むしろ、これは法律以前の話じゃないかなというふうには考えています。

【小野委員】 今の五箇先生の話は、本当にごもっともだと思うんですね。ある意味でモラルみたいな問題があるんじゃないかなと思います。
 その一方で、現場でマルハナバチの販売をされる立場の方が、ネット展張というコストがかかるものをマルハナバチの利用拡大と一緒に、車の両輪のような形で普及していく際に、後押し的なものがほしいというのもわかるんですね。結局、この1年、2年か、ちょっとわからない。今、具体的に1年という期間が挙げられていますけれども、そこを設定したのは、今、突然指定しまった場合に、商品として流通している上で混乱は避けられない。だから特定外来種に将来入るとしても、準備期間をある程度つけなきゃいけないのではないかということであれば、1年後に特定外来種に指定されるからというふうに、決めつけるような言い方はできないにしても、指定することを前提に議論が進んでいるのでというような、後者の方は、確実性がないという点では全然前者とは違うとは思うんですけれども、そういうような多少動きとしてはポジティブな動き、そして、その準備期間という意味合いもあるので、今のうちにネット展張をきちっとやるような形で進められないかと。あるいは、これまでも法律とかで縛られているからということじゃなくて、外来の生物、あるいは生き物を、人為的な条件で大量増殖されたような、遺伝的に非常に偏りのあるようなものなんかを使ったりする上で、常に考えておかなきゃいけないものなんだけれどもと、そういうような意味合いの中で、決まっていないけど前提にという意味では、農家の方々にこういうことを進めていく上で、非常に力強い一言になる可能性はあるのではないかなというふうには思います。

【五箇座長】 どうも貴重な意見ありがとうございます。今、小野先生の方からもお話があったように、先ほどから説明していますように科学的根拠にのっとっての話ですので、やはり今の段階では、今のデータをもとにすれば入れるということを前提に議論は進めるわけですけれども、実際問題として、たとえ特定外来生物に指定されたものでも、ちょっと事務局の方に確認ですけど、逆に生態リスクは全くないという保証が出た場合、これはリストから外されるということはあるんですか。

【上杉企画官】 法律上の位置づけでいいますと、もちろん政令で指定をして、その政令について廃止をする、削除するということは当然あり得る話だと思います。それは知見によるということだと思います。

【五箇座長】 ということなのですね。つまり指定するというふうに確約しようが、指定してしまったとしても、逆に本当にそれをひっくり返すようなデータが出た場合はご破算になってしまうんですよね。その意味では、現段階ではやはり入れるということを前提に議論をする。その方向性は全く変わりはないわけですが、それが本当に入った後でも、ひっくり返される可能性というのは十分ある。それは、あくまですべて科学的データに基づいての話になります。
 その部分で、どういった言い方をすればいいかという話にはなってくると思うんですけれども、今、小野先生がおっしゃったように、既に議論はそういった形で進められているということ。それにも増して、そういった議論が起こるという今の状況ですね。やはり外来種が氾濫して、日本のその環境が非常に危うくなっているという状況の中で、外来種であるセイヨウオオマルハナバチを使う場面においても、やはり各人がそれを使用するに当たっては注意をするというのが、やはり日本国民としての義務であるという形での普及啓発、教育というものが今後必要になってくるだろうと思われます。これはもちろんメーカーサイドのみの責任ではなくて、我々研究者自身もそういったことは常に発信して、世の中の人たちが、そういったことを理解して、そういった動きになるような働きもしていかなくちゃならないというふうには考えております。どちらかというと法律の枠を超えているというか、法律以前の話だというふうに考えています。もちろん普及会、販売側のそういった部分での苦悩というか、難しさというのは十分理解しますけれども、その部分に関しては、やはり売る方の努力というものにも、これからはやっぱりちょっと期待したいというふうに考えております。そういったことでよろしいでしょうか。
 それでは、最後に池田委員、何かご意見があれば。

【池田委員】 これに直接関連はしていないんですが、このセイヨウオオマルハナバチばかりじゃなくてマルハナバチでいいですがね、マルハナバチをこういう農業の段階で使われてくることになってきますから、これを家畜に認定するということはできないのでしょうか。そういう考えというのは、今までされたことはございませんか。蜜蜂が今、家畜になっていますよね。家畜衛生法でもって全部処理されていますから、そういう取扱いになってくると、また別途考える余地があると思うんですよね。そういうのを検討されたことはございますか。

【五箇座長】 その管轄は農水省の方になるんですかね。環境省ですか。農水省ですね。家畜扱いだと、やっぱり農水省。

【岡田補佐】 ちょっと知見がないので、お答えできないというのが答えになるんですけれども、今のところ農業生産資材という位置づけになってございます。

【池田委員】 それを家畜にすることは。

【五箇座長】 その部分については、さらにちょっと議論が必要なってくるかなと思いますけれども。

【池田委員】 蜜蜂と、だからどう違うのか。

【五箇座長】 実際そうだと思いますね。確かに、例えばパラサイトの部分でも、前にも議論したように、セイヨウミツバチと蚕に関しては家畜伝染病予防法でパラサイトの侵入というのは阻止できるようになっているんですね。ところが同じ生物資材でありながら、マルハナバチはその法律の範疇外であるというところで、結局、検疫の対象外というところもあるという。

【池田委員】 移動もそうですよ。

【五箇座長】 そうですね。そういう部分での法的な難しさというものはあると思いますが、それに関しては今後またそういった部分の議論も、さらに続けていく必要がある。今後どれだけマルハナバチの利用というものがさらに普及し、継続されていくかというところにもかかわってくるかと思います。
 そのほか、何かご意見ありますでしょうか。一応、マルハナバチの会合は、今年度はこれで最終となります。最後にご意見があればよろしくお願いします。よろしいでしょうか。

(なし)

【五箇座長】 では、時間もそろそろ迫ってきておりますので、本会合、マルハナバチの小グループの最終会合の結論としましては、セイヨウオオマルハナバチについては生態系等への被害を及ぼすおそれは非常に高いと考えられ、したがって、さらに調査及び農家への普及啓発というものを進めながら、随時このグループで検討を重ねて、約1年間という期限の間に、このセイヨウオオマルハナバチを特定外来生物へ指定するということを前提に議論を重ねていきたいと考えております。よろしいでしょうか。

(なし)

【五箇座長】 それでは、これで、この会合を終了したいと思います。
 では、最後に事務局の方、よろしくお願いします。

【環境省 名執課長】 野生生物課長の名執でございますけれども、このセイヨウオオマルハナバチの小グループにつきましては、これまで4回会合を重ねていただきまして、非常に有意義なご議論をいただきまして、ありがとうございました。今日、明日の昆虫グループへの報告をまとめていただいたんですが、ちょっと私、国会筋で呼ばれていて、大事な部分をかなり聞き逃してしまったんですけれども、今、最後に五箇委員にまとめていただいたように、今後1年間かけていろいろ引き続きやっていただくことがあります。ネット展張の効果についてデータを集めるですとか、あるいは研究について環境省とか農水省の予算を使っていただいたり、あるいは、さらにほかにある科学的知見を収集していただいたりということもあるとは思いますし、あるいはその防除について、あるいはさらには流通システムの管理についてとか、そういうことについても引き続きご議論いただきたいというふうに考えておりますので、ご協力をお願いしたいと思います。
 本日はどうもありがとうございました。

【五箇座長】 事務局の方は、最後何かよろしいでしょうか。

(なし)

【五箇座長】 では、本日をもちまして、今年度のマルハナバチ小グループ会合をこれで終了したいと思います。どうもご苦労さまでした。