1 日時 |
平成17年1月12日(水) 10:00~ |
2 場所 |
経済産業省別館第1028会議室 |
3 出席者 |
(委員)池田 二三高、小野 正人、五箇 公一(座長代理)、横山 潤 |
|
(利用関係者)マルハナバチ利用普及会 光畑 雅宏、米田 昌浩 |
(環境省)野生生物課長、生物多様性企画官、野生生物課課長補佐 |
|
(農林水産省)生産局野菜課課長補佐 |
4 議事概要 |
(事務局が資料3「セイヨウオオマルハナバチの取扱いについて(案)」を用いて説明し、質疑応答)
〔セイヨウオオマルハナバチが侵略的であるかどうかについて〕
- 資料3の3つ目の○の「生態等へ被害を及ぼしているとの確たる知見は得られていないものの、… その可能性を否定することはできない」という記述は消極的すぎる。たしかにデータは十分とはいえないが、生態系への影響があることについては小グループの各出席者の間で認識を共有しているはず。
- (事務局)前回の議事概要を参考資料で配付したが、例えば、3ページ目に「営巣場所を巡る競合はあることを結論とする」とあるが、不明な点も指摘されている。今回、議論していただきたい。
- 前回までの議論では、定着の可能性が高いことは確かだが、野外における生態系への影響については知見が不十分という結論であった。現段階では、被害が出ているとも出ていないとも言い切れない。この結論を踏まえて、セイヨウオオマルハナバチ(以下セイヨウ)を「侵略的である」と認めて取り扱うか、「侵略的ではない」と認めて取り扱うかが、今回の会合の論点となる。
- セイヨウが侵略的かどうかを判定するのは困難である。侵略的かどうかを判定することを前提とした調査もなされていないし、そもそも判定の手法が確立されていない。ただ、一般論として言うなら、一概に侵略的と断定することはできないと思う。
- 現時点では、セイヨウが侵略的かどうか判断をすることは難しい。しかし、確たる知見が得られてから対応したのでは時機を逸するおそれがある。室内の実験では異種間交配が確認されている。予防という観点からは、たとえ室内の実験で得られた限定的なデータであっても、それをもとに予測して対応することが求められる。また、他の外来種とは異なり、商品として大量に流通し継続的に利用され常に逸出しているという特殊性があり、そのことに配意して対応しなければならない。
- 侵略的である可能性は否定できないこと、継続的に導入されていることを踏まえ、予防的に考えるならば、侵略的外来種と同等の被害を及ぼしうる種と認めるべきだ。
- 現場では、今回の種指定にともなう一連の報道の影響もあり、セイヨウを利用して生産した野菜を購入しないという業者も出てきている。侵略的かどうかの判断はできないが、利用者としては、今後も引き続き「環境に安心・安全な生産である」と言っていけるのかどうかに関心をもっている。
- 侵略的かどうかは、データをとった後にはじめて判定できるのであって、極論すれば被害が生じてからでないとわからない。今回の法律の趣旨は、そうしたデータがないうちであっても推定して対応しようということだと理解している。この点、現時点でデータがないのは当たり前であって、データがなくても厳しい目で推定することが妥当だと考えている。
- (事務局)侵略的かどうかについての基準はないので、この小グループ会合での議論をもとにして決めていきたい。
〔小グループ会合の結論の案について〕
- この法律の趣旨に立ち戻れば、予防原則の考え方は非常に重要である。この点、室内実験の結果などから危険な種であると判断し、特定外来生物の指定を行うべきとも考えられる。しかし、法律である以上、いったん指定してしまうと執行のための管理システムなど、規制の実効性を担保するための手段を整えなければならない。流通量や利用者が多いので、これを整えるには一定の時間が必要である。
以上から、小グループ会合の結論として以下の案でどうか。
- 予防原則に則り、室内実験の結果などから危険な種であると判断する。
- 野外でのデータ等の知見を充実するとともに、国、農協、メーカー等の関係者が連携して逸出防止措置や流通における管理手法を検討する。
- 特定外来生物への指定を前提として、上記検討の結果を踏まえて、1年程度を目途に指定について検討する。
- 結論の案では室内実験のデータを重要視しているが、実験の規模が小さく回数も少ないのではないか。また、そもそも実験室は閉鎖的な環境であり、そうした環境下でのデータを野外にあてはめるのは安易に過ぎるのではないか。
- 予防原則に立てば、侵略的とする根拠となるような知見は、現状では室内実験のデータしかないので、追加的にデータを集める必要はある。生態系への影響について肯定的なデータも否定的なデータも揃えた上で、科学的な議論を行っていかなければならない。このためにも1年の猶予は必要である。
- 広く流通し逸出しやすい一方で、即座に規制することも困難であるという認識は、その通りだと思う。実際に利用者が失いたくないのは、セイヨウという種ではなくて、マルハナバチ類による振動授粉という効果である。この点、在来種の利用の推進やセイヨウの利用方法の研究など、利用者にとっても前向きにとらえる余地はあるはず。
- 再度検討をすることに異論はないが、なし崩し的に先延ばしできるような状況ではないと考えている。1年なら1年で明確に期限を切ってほしい。
- 1年で何ができるのか懸念している。1年で何を重点的にやるかを示すべき。
- (事務局)この小グループ会合で、引き続き検討を行う必要がある。ここで重要なのは、あくまで特定外来生物の指定を前提とした検討であって、そのためにどんな調査をすればよいのかご議論いただきたい。
〔1年程度を目途とした再検討に向けた普及推進や知見の充実について〕
〈生態等の被害に係る知見の充実について〉
- 次の3つの点について、できるかぎり定量的に把握していく予定。
- どのくらいのスピードで分布拡大しているのか、北海道を中心にモニタリングポイントをとって在来種の分布変化も含め、定量的に把握していきたい。今年度から環境省の予算で研究は始めたところ。
- 営巣や採餌の競合関係について、野外の資源量を定量化し、実際の生息状況を調査して環境収容力から明らかにしたい。
- 種子繁殖への影響について、他家受粉と自家受粉の状況を調べるなど野外での定量的な調査研究を行いたい。
- 交雑の問題と寄生生物の持ち込みの問題について検討を進めていく予定。交雑の問題については、野外で実際に交雑が生じているか、また室内で雑種ができるかどうかという点を把握したい。寄生生物の問題については、寄生生物をリストアップし、在来種に感染した場合の影響について具体的データをとる必要がある。
〈逸出防止ネットの普及推進について〉
- 逸出防止ネット展張について検討を進めたい。これまでの検討でハチの行動をあらかじめ予測するなどしてネットの展張の方法を工夫することによって、逸出防止効果を高めうることが確認できている。今後は、様々なタイプのハウスで試験し、ネット展張の方法による逸出の度合い等について、できるかぎり定量的なデータを収集していきたい。データを揃えることは、1年あれば可能と考える。
(事務局が資料「マルハナバチ逸出防止ネットの展張に係る支援措置について」に基づいて説明)
- 特定外来生物の指定までの間に、逸出防止ネットの展張について法的な担保はあるのか。
- (事務局)既に昨年の3月22日の通知により、マルハナバチ類を利用する場合には逸出防止ネットの展張と巣箱の処理を行うよう技術指導通知を出している。行政指導の形で強力に推進するつもりである。
- 逸出防止ネットに関して、セイヨウとクロマルハナバチ(以下クロマル)の取扱の違いを確認したい。
- この法律は外来種を対象としているため、在来種であるクロマルについては関知しないところ。ただし、生態学の立場からすれば、北海道へのクロマルの移入は外来種の移入と変わらないので、クロマルについても逸出防止ネットを展張すべきと考える。これは別の場で議論すべきである。
- 1年後の再検討の時点になると、一転して「生態系等への影響がない」と判定されることがないかと懸念している。この小グループ会合の結論中に「特定外来生物への指定を前提にして」など、セイヨウについては規制を前提として検討することを明示するような文言を入れることは可能か。
- 生産者は、特定外来生物の指定の議論があることを知っており、既に逸出防止ネットの展張を始めている。この小グループ会合の結論が「先送り」の印象が強いように記述されると、せっかく始まったネット展張の動きが減速しかねないと懸念している。逸出防止ネットを推進する際に、生産の現場で「1年後には特定外来生物に指定されるから」と言ってしまってよいのか。
- 特定外来生物に指定することは前提として、指定の準備を進めながらそのタイミングをはかるという認識。しかし、生態系等への影響があるのかないのか、どちらについても確たる証拠がないのが現状であり、これを踏まえると1年を目途とした再検討は、あくまでデータに基づいた科学的な議論によって決するべきである。したがって、指定を前提とするが、科学的なデータの充実を図り、流通管理システムの整備を検討するという結論が妥当でないかと考えている。
- 指定を前提として検討を進めるが、あくまで科学的なデータ如何で判定されるということは堅持しなければならない。そもそも、法律以前に、外来生物を野外に放さないということを普及啓発することが大切である。
〈防除について〉
- 並行して、防除についても取組を進めることが大切。既に逸出して野生化した個体の防除については、労力をかければ根絶も可能だと考えている。農業害虫よりは容易ではないかと思う。今、北海道で防除を取り組むなら、よい機会だと思う。
- もちろん既に野生化した個体を野放しにするわけにはいかないので、防除は重要な課題である。ただし、殺虫剤などを用いて駆除しようとすれば在来種等にも影響が及んでしまうのが難しいところだ。
- フェロモンを利用した防除の可能性について、マルハナバチ類のフェロモンは種によって異なっており、野外でも誘引活性があると推定されるので、成虫を誘引して捕殺することは検討すべき課題と考えている。
〔流通の管理可能性について〕
- マルハナバチ類の流通ルートは2つ。第一にメーカーから生産者に至るまでに農協を経由するルート、第二に農協を経由せずに種苗店や代理店を経由するルートである。農協にしてもその他の種苗店などにしても、誰がどれくらい購入したかという情報は必ず持っているはず。もし、こうした情報を集約することができれば、流通を管理することは可能なはずである。
〔その他〕
- マルマナバチの調査研究費として、環境省の地球環境局に研究費があり、そこから国立環境研究所が研究費の補助を受けている。横山委員の調査にも、そこから委託をしている。また、農林水産省からも「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」において競争的研究資金が出るとのこと。今回の法律で、マルハナバチに限らず、外来種関係の研究に弾みがつけばよいと考えている。
- マルハナバチ類は農業で利用されているのだから、ミツバチと同様に家畜に認定することは可能ではないか。
- (事務局)今のマルハナバチ類の位置付けは「農業生産資材」である。家畜の認定如何については、今は知見がない。
- たしかに家畜に認定されれば、検疫や移動の面での法的担保が違ってくることになる。今後検討が必要かもしれない。
〔小グループ会合の結論について〕
- 以上の議論から、この小グループ会合としては、以下のように結論したい。
- セイヨウは生態系等への被害を及ぼす可能性が高い。
- 調査や普及啓発を進めながら、随時、この小グループ会合での議論を継続する。
- 1年間を目途にして、特定外来生物への指定を前提にして検討を進める。
- (事務局)資料3の三つ目の○の前段については、以下のように修正する。
「セイヨウオオマルハナバチについては、野外における生態系等への影響について十分な知見は得られていないものの、実験結果等を踏まえれば可能性が強く示唆されている。」
また、五つ目の○の第3点目については以下のように修正する。
「調査の実施状況及び農家への普及啓発状況を踏まえ、随時当小グループにおける検討を重ね、1年程度を目途に特定外来生物への指定について検討する。」
以上
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)