1 日時 |
平成17年1月19日 13時~15時 |
2 場所 |
経済産業省別館10階1028会議室 |
3 出席者 |
(委員)多紀 保彦(座長)、瀬能 宏、中井 克樹、丸山 隆、水口 憲哉 |
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(利用関係者) 全国内水面漁業協同組合連合会 専務理事 橋本 啓芳 (社)全日本釣り団体協議会 専務理事 來田 仁成 (財)日本釣振興会 副会長・外来魚対策検当委員会委員長 高宮 俊諦 |
(環境省)自然環境局長、審議官、野生生物課長、生物多様性企画官、野生生物課課長補佐 |
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(農林水産省)水産庁生態系保全室長、水産庁沿岸沖合課課長補佐 |
4 議事概要 |
(全国内水面漁業協同組合連合会より、資料「特定外来生物に指定することによる利用等団体の影響」について説明)
<オオクチバスの取り扱いについて>
(事務局より、オオクチバスの取り扱いについて資料3を用いて説明し質疑応答)
- 以上は事務局よりの提案であるが、内容を3つに分けて検討したい。すなわち、まず資料3の1番目から3番目までの項目である「バスによる被害」「分布の拡大」「外来生物法による対応」について最初に意見を伺い、次いで4番目と5番目の項目である「防除の現状・課題」「外来生物法における防除の考え方」について、最後に6番目の項目「オオクチバスの取扱いに係る提案」についてそれぞれ意見を伺いたい。
- まず1番目から3番目までの項目については、これまでの議論を通じておおよそのコンセンサスがあると認識している。
- 1番目の項目だが、この文言では「被害」という言葉が水産業への被害だけを指すようにも読める。生態系への被害は含まないのか。
- (事務局)ここで言う被害は、生態系への被害と水産業への被害の両方を含む。
- 1番目から3番目までの項目についてコンセンサスがあるという意見には反対である。過去の会合では、不法移植の証拠、また環境改変による影響について資料を求めてきたが、この点について資料が出ていない。
- 不法移植の証拠がないというが、現状から推定するに不法移植があるとしか考えられない、と多くの委員が判断しているという意味で、コンセンサスがある。
- 日釣振としても、内部での協議を続けてきた結果、当初とは立場が変化しており、「選定も視野に入れながらの検討」についても前向きに取り組んでゆくつもりである。環境省には、「日釣振のバス問題に対する現在の考え方」及び「(財)日本釣振興会から環境省に対する要望事項」という書類を提出し、その内容は今回の事務局提案にかなり取り入れられている。しかし、一番基本的な所では、まだそぐわない部分がある。
- 2番目の項目では、漁業調整規則で移植禁止措置が取られているにも関わらず分布域が拡大しているとあるが、このような状況に対して今回の法律で効果的な手が打てるという見通しはあるのか。屋上屋を重ねることにはならないか。
- (事務局)第2回目の会合で回答しているが、今回の外来生物法は、輸入規制から飼養、運搬、保管、譲渡譲受まで幅広い行為を規制している。罰則も重く、効果があると考えている。
- 3番目の項目では漁業権に言及しているが、防除を考える水域という点で芦ノ湖等4水面をどう扱うのか。そこがまだ議論されていない。
- (事務局)この部分は、規制という面からどう考えるかが主旨である。漁業権を巡る問題は、漁業法との調整の問題である。外来生物法は環境省と農林水産省の共管であり、両者で調整する。
- 最初の3つの項目については大筋で了承ということで、続いて4番目と5番目の項目について意見を伺いたい。
- 防除というと、絶滅あるいは根絶かと考える人も多い。防除とは、「適切なレベルに管理する」ということであり、その文言が必要ではないか。
- (事務局)ご指摘頂いた内容は5番目の項目の2行目に書いている。地域や現場の状況に応じて完全排除、封じ込め、影響の低減といった適切な目標を立て、その被害を考慮し、優先順位を付けることが重要である。
- 続いて6番目の項目について意見を伺いたい。
- これまでにも、指定よりも先に防除のあり方を考えるべきだと述べてきた。合同調査委員会の設置は望ましい提案である。しかし、最後に「半年を目途に」とある部分が引っかかる。この問題はお互いの信頼関係を前提にして取り組むべきではないか。釣り人側としても、出来る限り早く問題を収拾したいと考えているが、期限を切られてしまうと自信がない。「なるべく速やかに」などと変更して頂きたい。
- 「半年」とは、いつからのことか。また「指定に向けた検討」とは何を指すのか。
- (事務局)この提案における合同調査委員会とは、この場で設置を決めて頂くものである。
直ちに発足させ、そこから半年という意味であり、6ヶ月あれば防除に関する知見を整理できると考えている。また「指定に向けた検討」については、6番目の項目の4段目にその主旨を示しており、それ以上のものではない。
- 半年以内に防除の態様を検討し、防除と指定を行うということなのか。今日の段階で、「指定に向けた」という点についてコンセンサスはあるのか。
- (事務局)半年以内に全ての水域について防除のあり方を決め切ることはできない。しかし、防除の指針を作成することは可能であり、そのための作業を行うというのがここでの主旨である。すなわち、もし指定された場合の防除のあり方を検討するという意味である。
- 「もし指定された場合」であるなら良いが、指定が100%前提であるとなると困る。
- ケーススタディーの実施や被害状況の把握などは、文言通りに実施すると大変な話になり、大きな予算と時間が必要になる。役所の仕事は予算の切れ目が縁の切れ目となりがちであり、予算が切れるからここで結論を出せ、ということにならないか。
- (事務局)予算については、関係しているところと相談したい。現状でも知見はかなりあると認識している。既存の情報を整理し、必要に応じてケーススタディー、モデル調査をするだけでも、指針は作成できると考える。また、6番目の項目の2段目にあるように、関係者の団結が求められる。釣り関連団体や自治体の協力が重要になると考えている。
- 全国の生息状況の調査という字面をそのまま捉えると、全国センサスをやるのか、というような印象を受けるかもしれない。調査という言葉には実地調査のイメージも強いが、今回の合同委員会の調査では、データ収集や整理にウェイトがある。
- センサスをやらないこと自体を問題にするつもりはないが、研究者の報告やデータを鵜呑みにし、内容を精査していないという面は否めない。モデル調査の内容についても精査する必要があるが、研究者にとって半年というのは厳しく、最低でも1年は必要である。今から半年とすれば7月になるが、バスの再生産への影響はどうであったかなど、防除の有効性をチェックすることもできないのではないか。
- (事務局)既存の知見を活用するというのが基本姿勢である。センサスというよりもモデル的な調査を整理し、その作業の中から防除の指針が形成されてくると考えている。
- バスの影響が社会的な話題になったのはいつ頃からと認識しているか。
- 25年ぐらい前からと認識している。
- 25年前とのことだが、これは今問題になっている半年よりもはるかに長い期間である。その間に釣り人側からバスが無害であるという証拠は一つも出ていない。
- 25年間に何をしていたのかという問いは、釣り人側にとって手痛いものであるが、25年前と比べると、バスについて考える機運は非常に高まっており、釣り人側としてもこの問題に着手するチャンスは今をおいて他にないと考えている。しかし、その一方で、熱心にバス釣りに打ち込んでいる若者も大勢いることを考えると、半年以内という約束は大変厳しいものであり、彼らの心情を理解・整理する時間が欲しい。
- 内水面漁業者からすれば、半年も待たされるのか、この遅れを漁業者にどう説明したら良いのか、という気持ちである。
- 生物学的調査には3年は必要であり、半年というのは短い。しかし、法適用の検討をする上では、優先順位をどうつけるか、希少種の多い水系をどうするかなどについて、既存のデータを整理することにより、半年間で指針を作成することはできるのではないか。
- 指定を前提として、半年を目途に防除指針を作成するという理解だが、もし指定がなされなかったとしたら、その理由は何なのか。
- (事務局)もし指定がなされなかったら、というような事態は想定していない。指定のために何が必要か、という姿勢であり、そのための防除指針の検討である。
- 半年をかけて、指定された場合の防除の指針を、既存の知見を整理して作っていくとのことだが、そうなると指定するか否かを判断するのは半年後になるのか。
- 「目途に」という事務局の表現も苦心の作であろう。一方で、「半年」については、これを7ヶ月、あるいは1年にしても良いが、とにかく具体的な数字を書かなければ取り組むという強い姿勢が伝わらないのではないか。
- (事務局)法を適用するという面から見た現時点での課題が、防除の問題である。そこを整理した上で、指定の問題を整理したい。
- 今日の段階では、「指定を視野に入れる」程度ならば良いが、「指定を前提に」では困る。防除には釣り人の協力も重要であることを考えると、その感情にも配慮すべきであり、調査に最低1年必要という意見に賛成である。
- 法律ありき、という議論になっている印象を受ける。輸入規制は法律で対処する問題であるが、防除の問題は地域指定によって対処すべき問題である。防除については、バスを指定しなくとも対応できるのではないか。
- (事務局)外来生物対策においては、輸入等の規制と防除の両方が不可欠であり、この法が効果を上げるためには、両方をカバーしなければならない。現時点で課題として残っているのは、防除の側面である。この側面について、この法がどう対処するのかという指針を、早急に作成するというのが合同調査委員会の役割である。
- この「指定」というものが問題である。バス関係者が恐れているのは、バスが「悪い魚である」という烙印を押されることである。6番目の項目の2段目には、「大同団結」や「国民運動的」という言葉が見られるが、国民の総意をもって「悪い魚である」と決め付けようとしているようにも読める。
- 現時点では、バスを指定するということについては、合意形成がない。そのことと、防除について議論することはどういう関係にあるのか。防除について指針が作成されたら、自動的に指定につながるというのはおかしい。
- 私の立場から言えば、直ぐにでも指定すべきだという気持ちはあるが、この半年間の合同調査委員会については、前向きに受け止めている。すなわち、防除の指針を立ててから指定することによって混乱を避けるという点、また半年という期間を使ってこの問題を釣り人にしっかり認知してもらうという点で、釣り人が受け入れるための準備期間として意味がある。ただし、指定の問題については、防除の指針の成否に関わらず指定をすべきであり、この点は共通認識とならなければならない。
- 指定の問題については、実態に即して状況判断すべきである。世界の60カ国にバスが生息し、そのうち何カ国かでは輸入規制などの制限をしているものの、駆除を法律で実施している国はひとつもない。バスの影響は、日本だけで特別視されているのではないか。慎重な議論を求めたい。
- バスの生息国は多数とのことだが、その中で、日本ほど多くの釣り人が居て、また大きな産業と結びついている例はあるのか。
- スペイン、ポルトガルなどではバスフィッシングが盛んである。また中国や韓国でも広まりつつある。
- いろいろと意見もあり、玉虫色の側面もあるが、これまで会合を重ねてきた結果、半年を目途に指定に向けた検討という点で、一応は同じ方向を向いているのではないか。ここで、座長からの提案として、将来的な改変の可能性を残しつつも、一応は資料3の事務局案を魚類会合に報告することとしたい。了承頂けるか、各委員の意見を伺いたい。
- 賛成しかねる。今直ぐ指定すべきである。バスの被害の大きさに鑑みると、半年延びても結論は変わらないのではないか。防除というのは運用の問題であり、まず指定を決めてから検討しても十分であろう。
- 基本的には賛成である。我々が御願いしているのは、法を実行する前に、実状を調べて対策を考えて頂きたいということである。まず法ありきでいきなり規制を掛けられても対処できない。釣り人の調整には時間がかかるということを申し上げておきたい。
- 芦ノ湖等4水面をどう扱うかなどの問題もあるが、止むを得ず賛成する。玉虫色とのことだが、どういう色にすべきかを合同調査委員会で議論して行きたい。
- 賛成する。基本的なスタンスとして、ここは現実を見て前進することが大切であると考える。最後の「半年を目途に指定に向けた検討」という点について、これをどのように理解するかが今後の問題であろう。
- この事務局案について、釣り人側のメリットはあっても指定すべきとする側のメリットは何もない。釣り人側と指定すべきとする側と、両方のメリットと思いが一致しなければ意味がない。
- この会合の意義は、関係者が皆同じ土俵に上がって問題に取り組んでいる点にある。この土俵を維持するということが、これからバスの影響を軽減していく上で、最低限必要なことではないか。
- 「バスを悪者にする」恐れがあるという人がいるが、バスを悪くないと言えるのであれば指定する必要はない。「イメージが悪くなる」という人がいるが、そういう人たちが、本当に在来種への影響を認識しているのか、非常に疑問である。半年待ったとしても結論は変わらない。
- 日釣振の要望書を見ると歩み寄りは見られるが、今日の会合では要望書とはニュアンスの違う発言をなさっている。一方、事務局の説明は半年の検討期間ということであるが、この半年の遅れにも納得はできない。しかし、バスの問題に取り組んで行く上で、会合自体を壊すことはできないので苦渋の選択であるが賛成せざるを得ない。ただし、最後の2行をもっと明確にしてほしい。結局「指定に向けた検討」とは何を指すのか。
- (事務局)その部分だけでなく、議論の流れ全体を踏まえて理解して頂きたい。この小グループの目的は、法の適用についての是非を考えることである。防除の問題が、法を適用する上で非常に重要であることから、これを検討したいということである。
- (事務局)委員の皆様のご意見は大変に勉強になり、また勇気づけられるものであった。
文言について言えば、役人的な考えからすると、これまでの経緯を踏まえて記しており、これがギリギリの表現である。法を運用するにあたっては、実態が大事であり、結果を予測しながら運用しなければならない。法で決まったから行政がそれを押しつけるというのは論理矛盾であり、委員会の意見を聴いて、それを受けて実行するというのが行政の立場である。そこからすると、委員会に対して「半年後に指定する」という案を事務局として提出するのは余りに僭越なこととなってしまう。プロセスとしては、委員会に打診をして、データや現場を踏まえて調査し、その結論を受けて実行するのが役所の立場であり、文言の解釈に際してはその点をご理解頂きたい。
- 致し方なく賛成する。ただし、今後は過去の議論を再び蒸し返すことだけは止めて頂きたい。蒸し返す場合には、感情論ではなく、必ず科学的な資料を出して議論するという点を約束事にしてほしい。
- 同様に賛成する。日釣振の要望書に書かれている「選定も視野に入れながらの検討にも前向きに取り組む」という言葉を信じたい。
- それでは資料3の事務局案を認め、その内容に沿ってバス小グループによる魚類会合への報告をまとめるということで良いか。
- (了承)
- (水産庁)既存の漁業調整規則と本法との調整に時間が必要との議論があったが、法律を扱う事務方としては速やかに整理できる問題と捉えており、この作業に半年の期間を要するものではない。
<オオクチバス合同調査委員会の設置について>
(座長より、合同調査委員会の設置について資料を配布し質疑応答)
- 資料には学識経験者とあるが、これは魚類学者だけなのか。バスの問題にはトンボ、鞘翅目、水生昆虫なども密接に関係するため、魚類学者だけで議論していては、問題を矮小化しているとの謗りを免れない。学識経験者として、特に水生昆虫の専門家を加えることを要望する。
- (事務局)合同調査委員会の委員については、適宜調整し、追加も考慮する。
- 防除実施の際には釣り人が重要な役割を果たす。防除実施団体としては市民団体などが想定されているようだが、釣り関連の団体も力になれると思う。
- 漁業関係者の中には、バスを活用したい人もいるので、そうした人の意見も重要である。
- 合同調査委員会のメンバーについては、以上の意見を受けて事務局で検討することとしたい。
- (了承)
<その他>
- 多くのマスコミの方々がいらしているので最後に一点述べたい。今回の結論について、第一陣からバスが外されたという見方をする人もいるかもしれないが、そうではない。バスの問題は、第一陣の選定では即決できないシンボリックな問題である。今回の結論は、今後ますます建設的にバスの問題に取り組んで行こうという主旨のものであり、その点は留意していただきたい。
- (事務局)短い時間内で大変複雑な議論をして頂き感謝している。非常に良い結論が出たと考えるが、結論だけを大切にするのではなく、今回盛り込めなかった点、議事録に残された様々な発言も重視して参考にしながら、ますます精力的に取り組んで行くというのが環境省の姿勢である。今後の合同調査委員会でも宜しく御願いする。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)