1 日時 |
平成16年12月7日10時~12時 |
2 場所 |
経済産業省別館11階1111会議室 |
3 出席者 |
(委員)多紀 保彦(座長)、瀬能 宏、中井 克樹、細谷 和海、丸山 隆、水口 憲哉 |
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(利用関係者)全国内水面漁業協同組合連合会 専務理事 橋本 啓芳
(社)全日本釣り団体協議会 専務理事 來田 仁成
(財)日本釣振興会 副会長・外来魚対策検当委員会委員長 高宮 俊諦 |
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(環境省)野生生物課長、生物多様性企画官、野生生物課課長補佐 |
(農林水産省)水産庁沿岸沖合課長、水産庁生態系保全室課長補佐 |
4 議事概要 |
<会合の進め方>
- 具体的で建設的な意見を提出するように。そうでない議論は座長権限で対応する。
<影響と利用の現状~各委員・利用関係者から資料に基づき順に発言>
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今回の法律に関して9月に全国の釣り団体や釣り人、日釣振に関わりのある203団体や企業にアンケートを実施し、172件の回答を得た。「オオクチバスを選定するか否か」については、その他を選択したものを除く163件のうち、選定されるべきが4件、選定されるべきでないが159件を占めた。このデータはアユやヘラブナを釣る人も、かなりの割合で特定に選定すべきでないと認識していることを示している。
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オオクチバスが特定に選定された場合の問題点としては、法律について自治体、教育現場への普及・啓発が進んでいないこと、バス釣りへのイメージの悪化が起こることがある。また、バス釣りで生業を営んでいる全国数万人の関連業者や漁業者が経済的に大きな影響を受ける。
- さらに、第5種共同漁業権魚種認定の4湖など、現在、バス釣りで成り立っている地域や、漁業組合や観光協会・商工会からの反発が予想される。
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今回の日釣振のアンケートでは、大半の当会関係者や釣り人の間でも、[1]オオクチバスの生息域をこれ以上拡大させないこと、[2]海外からの移入に対して、一定の制限ルールを策定すること、[3]国内の移動についても一定の制限ルールを策定する事、[4]今後、希少種の生息する湖沼等においては、釣り人に対しキャッチアンドイートほかの防除に協力する事を求めていこと、についてはコンセンサスが得られた。
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オオクチバスを特定外来生物に指定することで釣り人からの反感をかうと思われる。問題を解決するためには、特定外来生物に指定せずに、釣り人との協力関係を保ちつつ、管理体制を作っていくべきだ。
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日本各地でオオクチバスが在来生物に与えた影響を正確につかむために、魚類学会では2004年11月に魚類・水生昆虫研究者等に対して緊急アンケートを行った。このアンケートで現状が明らかになった水域は43都道府県761水域である。
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環境改変がなかった199水域のうち、オオクチバスの影響は86水域で「顕著」、27水域で「あり」、ということがわかった。とくに影響がみられたのは、メダカ、タナゴ類、モツゴ、ゲンゴロウ類、水生昆虫などであり、希少種も多く含まれており、なかには地域的な絶滅を伴う事例もみられた。
- 今回、被害が確認された事例の多くはため池などであり、少なくとも池沼などの小さな水域では、オオクチバスと在来生物が共存することはないといえる。
- ため池への侵入は、密放流によると判断するしかなく、そういった現状がある以上、オオクチバスを特定外来生物に指定し、厳正に管理するべき。
- 駆除・排除は先の議論であり、特定外来生物に指定された場合の問題について触れたい。
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オオクチバスによる被害が実在することや、これ以上生息地を拡大してはいけないことは認めるが、全国に分布している中で管理が可能かという視点に立つと軽々に物事を決めることはできない。
- オオクチバスによる影響については、先ほどデータを示してもらったが、このことについて理解している釣り人は少なく、普及啓発が必要。
- 釣り人からすれば、害魚との印象が強調されすぎであり、この印象を払拭する手段が必要。そうでなければ理解を得られずに密放流が起こらないとも限らなくなる。
- 在来魚の減少には環境改変などの他の要因もあり、それらを解決せずに、オオクチバスだけを悪者扱いすべきでない。
- 移動の禁止については、現在、都道府県において「移植の禁止」が定められており、新たに法令で移動の禁止を重ねる必要があるかどうか疑問だ。
- 管理の方法だが、第5種共同漁業権魚種認定の4湖などは、将来どうなるのか。管理については、比較的柔軟な姿勢で臨むべき。
- 心の問題は重要。生きものを人間が増やしたり駆除したりすることに対して考えること必要。
- バス釣りは秩序ある釣り文化へと移行する過程にあると考えられる。このことも理解してほしい。
- 駆除が難しい状況にある中、オオクチバスで生計を立てている人々も多いことから、暫定的な方向性も考えるべき。
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ここまでの話を聞いていると、オオクチバスの生態系被害が実在すること、これ以上の分布拡大を抑えたいことに関しては、専門家と利用関係者との間で共通認識がある。ただ、バス問題が大変なのは、利用者の経済的影響や、人の心情にどう配慮するかなどを考えなくてはいけない点だと感じた。
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先ほど密放流はないという話が出たが、バス釣りをしている人は、バスが定着したくさんいる水域にしか行かないので、違法な放流行為を見ることはあまりないと思う。一方、希少種の調査をしている我々研究者などは、バスが生息していない場所に行こうとするわけだから、意図的な放流を目にする機会が多い。
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瀬能委員の資料にも記されているが、希少種が保全されている場所へも、放流行為が行なわれていることは残念ながら事実だ。そういった放流がオオクチバスの分布拡大に直結していることは確かである。
- 今までの枠組みではオオクチバスを管理できないことが明らかであり、きちんと管理するためにはオオクチバスを特定外来生物に指定すべきだと思う。
- 釣りをする人々は、全国各地でいっせいに防除が始まるという危機感をつのらせているが、実際にはいっせいに防除までは行かない。
- 管理については、琵琶湖の例を説明すべきと思うが、次回以降にお示ししたい。
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全国に40万人の内水面漁業者がいる。彼らの中には、実際に、オオクチバスの被害で、漁業経営が成り立たなくなっているものもいる。密放流はなくなっておらず、それではすみわけはできないため、全面駆除を主張してきた。
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しかし、今回の法令で指定されれば、オオクチバスの管理はできると考えている。密放流をなくすために協力する点では、釣り人側と共通認識が得られている。指定されて完全に密放流がなくなるかどうかは疑問だが、良い方向には向かっているので、是非、オオクチバスを特定外来生物に選定していただきたい。
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生息域実態調査については、平成9年から全内漁連でやっているし、国や地方自治体などの公的機関でも行なっており、ほぼ実態を把握できている。これ以上、生息域を拡大させないためにも、いたずらに特定外来生物への選定を先送りにすべきでない。
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質問事項だが、日釣振がよく提示している、バスの釣り人300万人、市場1億円産業の根拠を示して欲しい。キャッチアンドリリースと子供の情操教育の関係についても聞きたい。また、研究者の方には、これほど減ってしまった在来生物の復元の手法等を伺いたい。
- この外来魚バスに関する文献集(細谷・西井, 2003)では、約500の論文が掲載されており、現状で科学的知見がそろっている。
- 今回は、オオクチバスが在来生物に与える影響について、閉鎖水域と開放水域に分けて説明する。
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閉鎖水域の深泥池では、かつて多様な在来魚が生息していたが、オオクチバスが侵入したあとでは、コイ、フナ、ギンブナなど数種の在来魚しか生息しなくなり、在来魚の多様性が著しく低下している。同様なことが、全国の池沼などの閉鎖水域で起きているものと思われる。
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琵琶湖の周辺には多数の内湖があり、これらは開放水域の例として挙げられる。琵琶湖周辺内湖のうち、オオクチバスやブルーギルが個体数の大半を占めている内湖では在来魚種数が少ない傾向が示されている。
- 内湖では、オオクチバス等の影響で、コイ、フナ等の在来魚の産卵期が2ヵ月程度早まっている。
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そのわずかな時期に、コイ、フナ等の在来魚が産卵したとしても、それらの仔稚魚はオオクチバスの稚魚に食われ、ブルーギルとの餌を巡る競合にあい、減少してしまうというのが、琵琶湖の内湖における在来魚減少のメカニズムの一つだと考えている。
- 漁業資源の復活、生態系の保全を目的として、オオクチバス・ブルーギルを防除するには、まず琵琶湖から、それも周辺内湖から行なうべきだ。
- 生物多様性とは、基本的に、群集、種、遺伝グループの多様性のことだ。
- 昨年の環境省の報告書は、オオクチバスが群集に与える影響を中心に調べたものだ。
- 種レベルでは、どの種が影響を受けているのかについては、RDBの報告書が役立つ。
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「改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物―レッドデータブック4 汽水・淡水魚類」のデータに基づいて解析を行なったところ、希少種の減少要因としては河川開発等が95%を占めており、オオクチバスなどの捕食者侵入の影響は残りの5%を占めているに過ぎない。
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瀬能さんが提出した資料などは、在来魚に対するオオクチバスの影響を誇大に示している感がある。オオクチバスを減らせば、在来魚が増加するわけではなく、環境改変などの他の要因についても十分に対策を講じるべきだ。
- 利用関係者の話はほとんどの部分で特定外来生物指定の理由と一致する。ただ、経済的な影響や釣り人の心情等のことがあり、難しい問題である。
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先ほど、オオクチバスだけでなく他の魚食性魚類も問題との話題が出たが、オオクチバスはすでに稚魚期で魚食性であり、他の在来種の仔稚魚を捕食するという点で特殊な魚食性魚類である。
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ヘラブナの稚魚を放流するときに、外来種の稚魚に食べられないくらいに大きくなったものを放せば、逆に外来種の資源を抑制するうえでも役立つことなどが明らかになっている。
- 研究者も利用者もバスが管理のできない恐ろしい種と考えているが、実際には抑制や管理は可能だと思う。
<議論>
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各委員の説明により、ある程度の共通認識を特に2点で得られたと思う。第一に、オオクチバスは多少なれ生態系に影響を与えている。第二に、これ以上の分布拡大を防ぐために管理が必要である。委員の中には、心情的に多少なり違いがあるであろうが、オオクチバスの問題点については、共通の認識があるのではないか。
- 一部にはバス釣りが出来なくなるという誤解も生じているようである。各自でのご助力にて、正しい情報を提供していただきたい。
- まずは、特定外来生物に指定された場合、どのような問題があるか、又は指定されなければ、何が問題なのかを議論したい。
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テレビで紹介されたことであるが、琵琶湖には未だ自然は残っており、在来種も多い、特定外来生物の指定に向けて、害魚としてのイメージを固めているが、周辺環境とオオクチバスが共存しているケースも多い。
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心情的になる理由は、キャッチ・アンド・リリースが禁止されることにある。釣り人は漁業者がオオクチバスを駆除することに反対はしていないし、日釣振としては、密放流など行っていない。我々としても外来魚の管理に積極的に取り組むために、具体的な取り組みを行っていきたい。
- 外来魚問題における今後の具体的かつ新たな取り組みとしては次の項目が挙げられる。
- 希少種の生息する湖沼等では、これまでオオクチバスによる影響が大きいということであれば防除に協力することとしていたが、今後はそのような前提を置かず積極的な防除に協力していく。
- 将来的にはルールの確立のため、利用者側でも費用を負担していく必要がある。
- 積極的に在来魚、外来魚の調査を実施していく必要がある。
- オオクチバスによる食害は高いと思っており、生息数の抑制や釣り堀などへの移し替えを前提として、防除などにも協力する
- 過去700程度の記録のあるバス釣り大会の情報をまとめる。大会では、今後も日時、天候などに加え、釣果、水辺の環境などの情報も調査し、報告していく。報告書のフォームについては、学者、環境省などとも相談し、漁業者とも連携をとっていい報告を出したい。
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これらは日釣振が考える問題解決のための提案であり、オオクチバスが特定外来生物に指定されるかどうかに係わらず、携わっていきたいと思う。ただし、これまでにキャッチ・アンド・リリースが禁止された際に釣り人の賛同が得られなかったように、今回の法律で特定外来生物に指定されれば、釣り人からは反発が予想され、彼らの協力は大幅に減少すると予想する。
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日釣振として、密放流はしていない、それに管理に向けて協力もすると言っている。では何故、特定外来生物に指定することに反対するのか。適切な管理が必要と思っているのではないのか。
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これまではルールがなかったから拡大した。ルールは必要である。しかし、今回の特定外来生物に指定すると全国のオオクチバスが対象となる。すでに分布しているバスを、どう対処するか議論すべきである。特定外来生物に指定すればどのような管理体制になるか不明である。これまで漁業権魚種は組合で管理してきたが、例えば漁業権魚種以外の魚類も組合では管理できるのか。
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釣り人も含めた地域ごとに発言に耳を傾けなければならない。やはり時期早々であり、もっと地元の釣り人の意見を聴取し、適切な管理方法を考えなければならない。
- インターネットなどを見ると、正しい情報が流れていないのではないか。法律の趣旨をきちんと説明すべきである。
(事務局)
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外来生物法では2つの事項が考えられる。第一に、飼養、栽培、保管、運搬などの行為は規制されるが、釣りは規制されない。販売と輸入も禁止はされ、野外に遺棄するのも禁止である。したがって、別の水系にバスを移動したり持ち込むのは禁止になる。一方、法律上では、キャッチ・アンド・リリースは禁止していない。個々の湖沼では、釣りをするのに何ら問題はない。第二に、すでに野外にいるものの扱いとしての防除である。必要となれば国が防除の公示をして防除を行う。地方自治体、民間もこの公示に沿って入れば防除に参画できるようになっている。ただし全国一律に強制するものではない。環境省としては基本方針にあるように、絶滅危惧種が生息するなど、保護の対象として優先順位の高いところから計画作りを行い、個々の事情に合わせて考えていくこととしている。
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内水面漁業のように秩序があれば良いのだが、実際はどうか疑問である。既に十分に管理されている漁業権のある4湖のような場所を用意すれば機運は高まるが、そうでなければ全体では、かえって無秩序になるのではないか。
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第9条で放つことを禁止しており、34条4項にて罰則を定めている。これまでより厳しい罰則などによって、密放流がなくなることを期待しているのか。これまでも軽い規制があったが、屋上屋を架すことにならないか。
(事務局)
運搬、譲渡、飼養が禁止される罰則がつくので密放流の抑制になると考えられる。また、罰則が強くなるだけではなく、漁業調整規則などで対象外であったため池なども本法律の対象となる。また譲渡も輸入も禁止される。
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特定外来種に指定されれば、飼養、輸入、譲渡が禁止され、罰則が強化されることは認識できる。また、日釣振、全釣協にも歩み寄りはあるのではないか。重要なことは方向性であり、まさに特定外来生物に指定することこそが、方向性なのではないか。本来は、防除方法の確認などが重要なのでないか。
- 釣り人と言ってもバス釣り以外、在来種の釣り人は、どう考えているのか?
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バス釣り以外の釣り人にもアンケートは実施している。釣り人は、バスを釣る否か関係なく、外来種に対して強い関心を持っており、特定外来生物に指定される危機感を持っている。
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指定されるかどうかに関わらず、拡大分布を防ぐために助力いただければ有り難い。団体として何らかの方向性があるのは認識できた。個々の釣り人の心情を考慮すれば、困難が多いことも理解できる。ただし、ある種の危険物を取り扱っているのと同じで、しっかりとした普及啓発も重要である。
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特定外来生物に指定されなければ、無罪放免と思われ大きな問題である。また、ここで指定しなければ、マスコミで話題になっているように、外圧によって特定外来生物に指定できなかったとされる。
- 拡散しているのは疑いの無い事実である。密放流などの目撃事例もあり、拡散している事実は認めてもらい、建設的な議論を期待したい。
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業界関係者は、あまりこの問題を深く認識していないのではないか。例えば、どのような資料を付けてアンケートを実施したのか?しっかりとした情報を整備して、公的機関として情報は公開すべきである。
以上
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)