環境省自然環境・自然公園特定外来生物等の選定について

第1回 特定外来生物等分類群グループ会合(魚類)
オオクチバス小グループ会合 議事録


1. 日時 平成16年11月26日(金)10:00~12:00
2. 場所 経済産業省別館8階 821会議室
3. 出席者  
   (座長) 多紀 保彦
   (委員) 瀬能  宏    中井 克樹
細谷 和海    丸山  隆
水口 憲哉
   (利用関係者) 全国内水面漁業協同組合連合会 橋本 啓芳
(社)全日本釣り団体協議会  來田 仁成
(財)日本釣振興会      高宮 俊諦
   (環境省) 上杉生物多様性企画官
堀上野生生物課課長補佐
   (水産庁) 重沿岸沖合課長
長畠生態系保全室長
5. 議事  

【環境省 堀上補佐】 予定の時刻になりましたので、ただいまより特定外来生物等分類群専門家グループ会合(魚類)のオオクチバス小グループの会合を開催したいと存じます。今回、小グループ第1回目の会合となりますので、事務局の方から委員の先生方をご紹介させていただきます。 まず、本小グループの座長を務めていただきます、財団法人自然環境研究センターの多紀理事長でございます。 それから、お隣ですが、神奈川県立生命の星・地球博物館の瀬能先生でございます。 滋賀県立琵琶湖博物館の中井先生です。 近畿大学の細谷先生です。 東京海洋大学の丸山先生です。 それから、同じく東京海洋大学の水口先生です。 お隣、全国内水面漁業協同組合連合会の橋本専務理事でございます。 社団法人全日本釣り団体協議会の來田専務理事でございます。 財団法人日本釣振興会の高宮副会長でございます。 続きまして、環境省と水産庁の出席者を紹介させていただきます。 環境省の方から、上杉生物多様性企画官でございます。 それから、水産庁の方、沿岸沖合課の重課長でございます。 同じく、水産庁から生態系保全室の長畠室長でございます。 私、野生生物課の補佐をしております堀上と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 続いて、お手元にお配りした資料を確認させていただきます。 小グループの委員名簿がございまして、資料1-1が1から5までございます。1が、特定外来生物等の選定に係る学識経験者からの意見聴取要領、1-2が魚類グループ会合の運営方針、1-3が選定フロー、1-4が作業手順、1-5が選定に際しての留意点。それから、資料2としまして、オオクチバスに係る情報及び評価の案。以降は参考資料が1から5までございまして、参考資料1が法律の概要、参考資料2が政省令等の体系、参考資料の3が基本方針、参考資料4が基本方針に係るパブリックコメントにおいて提出された主な意見の概要、それから、参考資料5が前回行われました第1回魚類グループ会合の議事概要となっております。もし不備がありましたら、事務局の方にお申し出いただければと思います。 今、テーブルの方にお配りしておりますのは、環境省の方で昨年度取りまとめておりまして、『ブラックバス・ブルーギルが在来生物群集及び生態系に与える影響と対策』の報告書でございます。よろしいでしょうか。 それでは、開会に当たりまして、上杉生物多様性企画官からごあいさつを申し上げます。

【環境省 上杉企画官】 おはようございます。本日はお忙しい中、また朝早くからお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。また、ちょっと会場が狭いところしか確保できなくて、たくさんの傍聴の方が来られているのですけれども、非常に窮屈な状態になっていることを最初におわび申し上げます。 外来生物法と略して言っておりますけれども、法律が5月に成立をしまして、6月2日に公布をされております。来春、1年以内の施行ということで具体的な対象種の選定作業に入ってきているところでございますが、各分類群ごとに話を進めるということで、大きく六つの分類群、その中で一つが魚類ということになっておりますが、魚類の専門家グループにおきまして、このオオクチバスについては排除をするのか有効利用かということをめぐって、社会的にも非常に問題になっておりますし、国民的な関心も高い事項であるということがありまして、小グループを設けて検討を進めようということにされたところでございます。 本日はその小グループ会合の第1回目ということでございまして、この問題をめぐって具体的な意見のやりとりをぜひお願いしたいと思っておりますし、今までさまざまなところでいろいろな議論がされてきていると思うのですけれども、できるだけ前向きな建設的な意見のやりとりができるようなことを環境省としても期待をしております。なかなか限られた時間の中で検討を進めなければいけないという制約もございますけれども、できるだけ会合の機会を我々として見つけながら進められるようにしていきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

【堀上補佐】 それでは、議事進行につきましては、以降、多紀座長の方どうぞよろしくお願いいたします。

【多紀座長】 それでは、以後、私、多紀が進行役を務めさせていただきます。では、座ったままで失礼いたします。
 ただいま、上杉企画官からお話がありましたように、今日は第1回の会合でございまして、本当に会場も狭くて、皆さんにはちょっとご迷惑をおかけしているのですけれども、かえって近くで顔が見えて、非常にいい面もあるのだろうと思っております 。
 ということで、今日は、これは言うまでもないことですが、第1回で今も企画官がおっしゃったように、建設的な議論をしたいので、今までこう言ったとか、こう言わないとか、言った、言わないの水掛け論的なものはなるべく排除して、建設的な意見交換の場にしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。 それでは、これより議事に入らせていただきます。まず議題の1は、オオクチバス小グループの位置付けについてということになっております。ですから、この小グループがどのような範囲でどのようなことをするのかということにつきまして、事務局からまずご説明をお願いいたします。

【上杉企画官】 それでは、資料の1-1を見ていただきたいと思います。
 外来生物法に基づきまして、その第2条3項、それから基本方針がございますけれども、その中で特定外来生物の指定に係る政令の制定又は改廃等の事項については、生物の性質に関し、専門の学識経験を有する者から意見を聞くということにされておりまして、その聞くための意見の聴取の要領を定めたものがこの資料の1-1になっております 。
 ちょっと先に飛ばしていただきまして、資料1-3をまず見ていただきたいと思います。
 資料1-3が特定外来生物の選定フローとなっておりまして、生物にはいろいろな分類群があるということで、冒頭でも申し上げましたけれども、六つの専門家グループ会合というのを設けております。その中の魚類につきましては、先般11月12日に第1回目の会合が開かれておりますけれども、その中で、このオオクチバスについては、さらに特に関係者を集めて小グループを設置した上で検討を進めるということにされております。 法律が6月2日に公布をされまして1年以内の施行ということで、一番下の段になりますけれども、法律の施行が一応来年の春、予定をされておりまして、そこまでに、これは第1陣という言い方をしておりますけれども、一定の特定外来生物等の指定作業を行っていくということにされております。その指定に当たりましては、パブリックコメント、あるいはWTO通報という手続が必要になりますので、それを考慮に入れまして今の考え方では年明けに全体の専門家会合というのを開きまして、そこで最終的な候補リストの作成を行っていくというような位置づけになっております。 資料の1-1にまた戻っていただきたいと思いますが、第3、意見聴取の手続についてという部分がございます。これの3のところを見ていただきたいと思いますけれども、意見の聴取に際しては、関係する専門家から得た情報や知見を活用する、それとともに必要に応じ、当該生物の利用者等の関係者から得た情報や知見を検討するということとされております。本小グループにつきましては、学識経験者の方に加えまして、この利用関係者ということで三つの団体の方にも来ていただいているという形にしてございます。 それから、続きまして資料1-2を見ていただきたいと思いますが、これはこの会合の運営方針についてでございますけれども、全体会合あるいは魚類の専門家グループ会合、全く同じ扱いにしておりますけれども、基本的に会合については、公開でやるということにしております。特に支障がある場合には非公開とすることができるというふうにしておりますが、基本的には公開で実施をする。 それから、2、出席者のところですけれども、代理出席は原則として認めないとしておりますが、必要に応じ関係者から意見を聴取することができるという形にもしております。 それから、3、議事録ですけれども、これは委員の了承を得た上で公開をしていくということにしております。また、議事要旨につきましては事務局の方で先に取りまとめしまして、できるだけ早く公開をするということといたしております。基本的に今回のこの専門家会合、全体がこういう形の運営方針になっておりまして、この小グループについても同じ運営方針でお願いをしたいというふうに思っております。 以上が、この小グループの設置に係る経緯でございます。

【多紀座長】 ありがとうございました。
 今、資料1-1から1-3に基づきまして、この小グループを含めて、この委員会、この会合がどのような組織で、どのようなフローで仕事をするかということを簡潔にご説明願ったのですが、今のご説明につきまして、この辺はもう少し知りたいとか、これはどうなのだというようなご質問、コメント等ございましたら、どうぞ自由にお願いをしたいと思います。よろしくお願いします。何か 。
 では、細谷委員。

【細谷委員】 近畿大学の細谷でございます。過日行われました専門家グループ会合におきまして、この小委員会とそれとグループ会合との関係を示すフローについてご説明いただいたのですが、まだ理解できないところがあります。未判定であろうが特定で指定されようが、その判定権の所在を会議を進める前にもう一度明らかにしていただきたい。

【上杉企画官】 資料の1-1が基本的には意見の聴取要領ということになっておりますけれども、フローの1-3で見ます、この全体専門家会合が最終的にはもちろんリストを決めていく一番最終段階の会合ということになっておりますが、そこに対して専門的見地からそれぞれの専門家グループ会合、それぞれの分類群ごとに必要な候補リストなりを挙げていっていただくという形になっております。さらにこの魚類の専門家グループ会合とこの小グループ会合の関係も全く同じ関係でございまして、オオクチバスという特定の種については一番の関係者がここの場に集まっているということで、基本的にはこの中で議論されたことを魚類のグループに上げていくという形になっております。

【多紀座長】 今の説明でよろしゅうございますか。ありがとうございます。
 そのほかに質問、コメント等ございませんでしょうか。

(なし)

【多紀座長】 それでは、ないようですので、次にオオクチバスの影響とか利用とか、実態の状況がどうなっているのかということを、現在わかり得る段階でもって確認をしたいと思っておりますので、まず事務局から概要についてご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【上杉企画官】 それでは、まず資料の1-4を見ていただきたいと思います。これは選定作業をするに当たって前提となります基本的な種の選定の考え方の整理をした紙でございます。それで、これは全体会合、あるいは魚類の専門家グループ会合で、一応この資料の手順に沿って選定作業を進めていこうとされたものでございます。 それから、点線で囲ってある部分、枠で囲ってございますが、これは10月15日に既に閣議決定をされている基本方針の中から必要な部分を抜粋しているものになっております。特に今回はオオクチバスという特定の種でございますので、関係のある部分だけ話をしたいと思っています。 まず1ページ目の2番の被害の判定の考え方というところでございます。本法、この外来生物法では生態系への被害、人の生命・身体の被害、それから農林水産業への被害ということで、この三つの被害を防止することが目的になっております。それぞれの生態系等への被害をどのようにとらえるのか、その考え方を整理した部分でございます。 まず、アが生態系に係る被害でございまして、[1]が在来生物の捕食、[2]が在来生物との競合による駆逐、[3]が生態系基盤の損壊、[4]が遺伝的かく乱ということで、被害の対応として大きく四つの考え方を示しておりまして、これらにより在来生物の種の存続、又は我が国の生態系に関し重大な被害を及ぼすようなもの、そういう外来生物を選定するとされてございます。 次の2ページに移っていただきまして、この部分の考え方をもう少し具体的な観点で示してございます。1番目が在来生物の種の絶滅があるかどうか、2番目が地域的な個体群の絶滅をもたらすかどうか、3番目が生息・生育環境を著しく変化させるかどうか、4番目が群集構造や種間関係を著しく変化させるかどうかということで、一応四つの観点からさらに具体的な検討をすることとしております。 それから、イは人の生命・身体ですが、余り関係がないと思いますので省略をいたしまして、ウが農林水産業に係る被害の関係でございまして、これは単に農林水産物に対する食性があるというだけではなくて、農林水産物の食害等により農林水産業に重大な被害を及ぼすようなものを選定するとされてございます。ここにつきましては、農林水産物や農林水産業にかかる資材等に対して反復継続して被害があるかどうか、そういうことを検討しようということにされております。 それから(2)が被害の判定に活用する知見の考え方でございますが、大きくアとイとありまして、国内の科学的知見と海外での知見、両方とも活用するということにされております。アの方では、特になお書きとしまして、被害のおそれに関してでございますが、現に被害が確認されていない場合であっても既存の知見により被害を及ぼす可能性が高いことが推測される場合、そういう場合にはそういう知見も活用した上で検討するということにされております。 それから、次の3ページに移りまして、3選定の際の考慮事項でございます。この法律の目的を達成するというのが本来的な原則ということでありますので、原則として生態系等に係る被害の防止を第一義に考えるということとされております。ただ、いろいろな知見の現状、あるいは適正な執行体制の確保、あるいは社会的・経済的影響と、そういう面も考慮する必要があるということで、そういうことを考慮した上で随時選定をすると。必要が認められた段階でその時点で随時やっていくということとされております。 ここに関連しましては、既に定着、蔓延しているもの等についての話を書いておりまして、特に実施体制の確保の可能性、あるいは輸入、流通、飼養等を規制することによる被害の防止の観点からの効果と、こういうことについても検討するというふうにされてございます。 4ページ以下、未判定外来生物とは直接関係しない部分でございますので、省略をさせていただきます。 続きまして、資料の1-5はこれは魚類群のグループ会合で一応説明をしました紙でありますけれども、この中で3のところに、個別に注目されている生物の取り扱いについてということで、オオクチバスについて既に四つの湖に漁業権が設定をされているわけでございますけれども、排除か有効利用かをめぐって社会的な問題になっている、国民的な関心も高い。そういうことから、学識経験者それから釣り関係者により構成される小グループを設けて集中的に検討するというふうにされたところでございます。小グループの結論については、この魚類の専門家グループに報告をするというふうにされております。これは先ほども説明したとおりでございます。 それから資料2でございます。オオクチバスに係る情報及び評価、これは堀上補佐の方から説明いたします。

【堀上補佐】 資料2の方でございますけれども、基本的にはほかの分類群あるいは魚類のほかの魚種についても同じような整理をいたしておりまして、一応、その個々の種について情報と、それから評価の考え方というものを整理してございます。ほかの分類群でも同じですが、1から9までの項目ごとにそれぞれ整理をしておりまして、オオクチバスに関して、以下ご説明いたしますが、1の評価ランクは、これどの種も同じですがあけております。それから、2の原産地は北アメリカということ。3番の定着実績は、これ国内での定着実績ということで、ほぼ全国的に分布しているということでございます。4は評価の理由というのを掲げておりますが、ここは下の5番目以降から考えられる評価をポイントとして挙げたらこんなふうになるのであろうということを挙げております。 一番最初のところに挙げておりますが、北アメリカ原産ということで、冬の低水温にも耐える、かつ繁殖力が旺盛であるので、日本各地に定着するという可能性があるということでございます。もう一つは魚食性が強いということで、各地で在来種の減少などを含みます魚類群集構造の変化が報告されている。そういうことから、在来の生態系に被害を及ぼすおそれが指摘されているところでございます。希少種を含む魚類、水生昆虫、甲殻類等、さまざまな生物を捕食するということで、各地で対策がとられている。一方で、釣りの対象として人気がある魚でございまして、四つの湖沼、芦ノ湖、山中湖、河口湖、西湖でございますが、そこでは漁業権が設定されている。そのほかでも釣りが行われているという状況でございます。ただ、これ以上分布拡大を防ぐことにつきましては、社会的な合意がある程度なされているということですが、現在、釣りが盛んに行われている、一部水域につきましては引き続き釣りを認めるべきであると、そういう強い主張が一方でございます。 5番目以降、その被害の実態について代表的な事例を掲げておりまして、大きくは生態系に係る被害と農林水産業に係る被害ということでございますが、生態系に係る被害につきましては、環境省で選定しました「日本の重要湿地500」に取り上げられた水域の中でも定着しているところが見られている。それから、京都の深泥池で調査した事例がございまして、オオクチバスなどの侵入後に在来魚の種数が減少しているという事例が示されています。そのほか、宮城県鹿島台のため池、あるいは宮城県の伊豆沼・内沼等でも在来種の減少、あるいは魚類群集構造の変化といったものの確認がされている。このあたりの報告につきましては、文献資料が9の方で、主な参考文献というのが2ページ目、3ページ目にわたって書いておりまして、この中で具体的な指摘があるものをここに取り上げているといった内容になっております。 2ページのところですが、(2)で農林水産被害ということで、水産の方での関係ですが、捕食、いろいろなものを食べるということで漁業被害の可能性が示唆されている。これについても文献があるということでございます。それから、被害をもたらしている要因としては、生物学的な要因と社会的要因ということで整理されておりまして、生物学的な要因としては非常に成長が早いですとか、あるいはいろいろな魚、あるいは甲殻類、昆虫を捕食するといった捕食の性質。それから、卵の数が非常に多いということと、その産出された卵、あるいは孵化後3週間ぐらいまでの仔魚を親が保護する。そういう性質を持っておりまして、割と繁殖力が高いということでございます。 社会的な要因としまして指摘がございますのは、各地で意図的な放流が行われてきた可能性があるという、そういう指摘が一方であるということでございます。 それから、その他関連情報として掲げておりますのは、各学会あるいは団体などで、駆除、保護の要望書が非常に多く提出されていると。それから水域によっては生体での持ち出し禁止あるいは再放流禁止の対応がとられている。内水面漁業調整規則において沖縄を除く46都道府県で移動禁止の措置がとられている。世界的にもイギリスや韓国では生体の持込が禁止されている。一方で、日本のバス釣り人口300万人ということが言われておりまして、各地でバス釣りが行われているというようなことと、一部観賞魚店では販売されているような事例も見られるということでございます。 9番以降は、基本的に主な参考文献として[1]から⑯まで挙げておりますが、テーブルの方にお配りした環境省のまとめた報告書の巻末にも、そういった参考文献等を記載しておるところでございます。 資料2については、以上のとおりです。

【多紀座長】 今、資料2に基づきまして、オオクチバスを選定するときのいろいろなクライテリアを、実際にわかっていることについて簡単にご説明があったわけであります。あと、お手元にありますこの本を参照にしていただきたいと思います 。
 これから委員の方々に今の説明等につきましてご意見を賜りたいのですが、私を除きまして委員が9人おりますので、お一人10分なさっても1時間半かかってしまいますので、その辺をどうぞお考えに入れてご発言をお願いしたいと思います 。
 最初に高宮さんから瀬能さん、來田さん、中井さんというふうに、こう、たすきがけで、どっちからどう始まるかというのはなかなかあれなので、一番最後がだれになるんだ、水口さん、丸山さんになるのですね。という順序でご意見を賜りたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。それではどうぞ、ひとつよろしくお願いをします。

【高宮委員】 はい。日本釣振興会の高宮でございます。今日はこのような場所に参加させていただきまして、本当にありがとうございます。
 ただいま座長さんより、今の説明についての見解をということでございます。特に資料は準備はしてきておりませんけれども、ふだん外来魚問題に対して考えていることをお話を申し上げたいと思います 。
 まず、今回の特定外来生物法そのものにつきましては、これまで日本で整備をされてこなかった部分が新たに一定のルールができたということにおきましては、私ども日本釣振興会としても賛同しております。また海外の欧米諸国を見ましてもかなりの国でそういうような制限ルールがございますので、むしろ少し遅かったのかなというような気がいたしております。当会でもかねてよりこの海外からの外来種の輸入に対しては、一定の制限ルールをつくるべきだということを申し上げておりましたし、また国内の不法移植についてもそういうことはあってはならないというふうに言い続けてきております。また、国内の外来種、これは国内外来種、国外外来種にかかわらず、国内移動について一定の制限を作るべきだというふうに思っておりましたので、そういう部分では今回このような法律ができるということに対しては非常に喜んでおります 。
 ただ、問題が幾つかあるというふうに思っておりまして、外来種そのものが食糧確保や品種改良、水産振興などの理由で、日本にこれまで長年にわたってわかっているだけで2000種以上の外来種が海外から入れられてきました。先ほど説明はございましたけれども、日本の国民の人たちにはそういうことが正しく伝えられ知らされているのかなと、例えば穀物とか食物、代表的なものでもイネとかムギとかジャガイモとかキャベツとか、ヒガンバナ、ヨモギとか、様々な種類の犬やネコなど、いろいろな植物、動物が挙げたら切りのないぐらい日本の中に海外から入れられていて、その大半が日本の中で食物や観賞用の動植物としても有効に利用されておるというふうに思います 。
 魚類に関しましても、ここでは90種類と書かれてありましたけれども、私どもではもう150種類以上が海外から持ち込まれて、その大半がたんぱく資源確保や水産振興など、そういうような国策で入れられており、今回のオオクチバスも、その一環として日本に導入されました 。
 そういうようなことが全国の中で、新潟県の信濃川とか霞ヶ浦とかで調査をされて、数は少ないですけれども、信濃川あたりでも生息魚類の中で本来そこに生息していなかった外来種が71%いる。そのうちのオオクチバスは0.4%なのですが、かなりの湖沼・河川でバスだけでなく外来種の比率が現在多くなっているという現状は、国の責任で正しく国民に広報し、認識をしていただく必要があるのではないかと思います 。
 それから、魚食性ということですが、確かにオオクチバスは魚食性が強い魚だと私どもも認識しておりますが、在来種、外来種にかかわらず大半の魚類が程度の差こそあれ、卵から成魚になるまでその成長過程で食べる食べられるの相関関係にあると思っています。そういう中で、今回、オオクチバスがこの特定に入れられるか入れられないかというようなことが持ち上がっているわけですけれども、私どもでは本当にこれまで人間が破壊をし続けてきたこの環境の問題とか、あるいは海外からそういうふうに持ち込まれたようなもの、既に全国に生息をしており、ある程度自然界に組み込まれているような生き物に対して、総合的な見地から判断していかなければならないと思っています。安易にあるいは短期間に、それが有益とか害があると、そういうようなことを決めていいのかということに対しては、釣り人の間でもかなりの人達が疑問を持っています。これはやはり基本的には、人間の安易な移殖放流とか駆除ではなく、自然、生態系というようなものは自然の摂理に委ねる、あるいはできるだけ豊かな自然を復元させて、そこでやはり自然そのものに決めさせるべきというのが本筋ではないかなというふうに思っています。今回の駆除を伴った行為は、ややもすると人間の身勝手で改変された環境に、更に人の手が加わる事になり、2次的な影響等を考えた時、更に悪くなる結果も予想されます 。
 しかし、現状を考えた時、何もしないで傍観するだけで良いという分けではなく、第一はできるだけ自然環境を持続可能な状態に復元する事が基本と思っていますが、同時並行して実施しなければならないことも数多くあると思います。ただ、一方でこういう問題が出てきておりますので、まず魚類の調査の実施、全国の魚類の調査が環境省でも水産庁でも過去にほとんどされたことがない、それからそういうデータ、生息実態のデータがないということですので、ぜひ何年かかけて、そういう、これを特定する、しないの前に、本当にどれぐらいの在来種、外来種が国内に生息しているのかという事は基本的な前提条件だと思いますので、ぜひその魚類調査をしていただきたい。そしてその調査が終わって、一つの結果が出て、これはやはりちょっと異常な状態だなというようなことになれば、当会ももちろんですが、日本のあるべき姿に向けて釣り人の人たちもかなりの形でいろいろな協力ができるのではないかなというふうに思っております。これまでの報道などでは、それぞれの主張を正当かする為、真実に基づかない憶測で情報発信されている事が余りに多いと思っておりますので、まず、公的機関によって調査し、正確な魚類の生息実態を把握する事が先決ではないでしょうか 。
 一応、そのぐらいで、後の方もおられると思いますので、当会としては普段そういうことを考えております。

【多紀座長】 どうもありがとうございました。本来の自然とは何ぞやとか、在来種以外のものの利用と産業とはどういう問題があるかと。なかなか哲学的なお話で、特に非常に示唆的だったのは、今、高宮さんがおっしゃった調査等を通じて釣り人の方々にも協力を願う。それを通じて、むしろ理解が深まるのではないかと。これは非常にいいご示唆をいただいたものだと思っております。ありがとうございました 。
 続きまして、今度は、では瀬能委員、お願いします。

【瀬能委員】 瀬能です。生物の多様性の保全という、そういう立場から発言させていただきます。
 2点、ポイントがあるのですが、1点は今、高宮さんの方から調査が必要だということが出ましたけれども、あと、それから過去たくさんの外来魚が日本に入ってきているという話も出ました。ただ、ここで問題にしているのは、オオクチバスという生物が他の外来生物とは比較にならないほど大きな影響を与えているという認識で、これまでいろいろなことをやってきているわけです。そのための調査というのは、先ほど配られた資料もあります。それから、あと各地で、例えば自治体が主導でやったり、あるいはNPOの方が主導でやったり、あるいは個人でやっている方もおられますし、あと、大学等で卒論のような形で行われているような研究も、実は典型的な事例は本などにまとめられていますけれども、それ以外の多くの研究、調査の事例が積み重ねられています。ただ、それがなかなか集大成されてないという現状は確かにあるのですが、そういった中から、オオクチバスという生物が多くの在来の水生生物へ非常に深刻な影響を与えているということは、もうこれは研究者側では共通の理解だと考えています 。
 そういう前提のもとに、今、オオクチバスの現状、特に日本全国に分布してしまっているという現状を見直したときに、特に適正な管理ができているかという視点で見ると、これはとてもできていないのではないかと思います。例えば、これはあくまで例えばの事例ですが、北海道でコクチバスやオオクチバスが密放流されたという報告がありましたし、あと、栃木県では例えばミヤコタナゴの生息地にタグつきのオオクチバスが放流されたという、そういう事例もありました。それから、長野県の水産試験場の報告では、55市町村中、28の市町村で密放流以外に考えられないという報告も公にされています。それからあと、例えば公園だとか池、中でも象徴的だったのは、何年か前に国立科学博物館の目黒の自然教育園の池にそういうものが放流されたという話もありました。それから、富山県では実際に検挙された事例もあります。 その中で、ごく最近では琵琶湖にフロリダバスの遺伝子が、ごく最近、大量に放流されたとしか考えられないような科学的な証拠も提出されるに至って、今、オオクチバスというのは沖縄県以外のすべての都道府県で漁業調整規則あるいは条例等で規制されていますが、いわゆる現在の現行の法律ではとても管理が無理であろうというふうに判断せざるを得ないと思います 。
 そこで、より罰則の厳しい今回の特定外来生物法に基づいて、この特定外来生物に指定して適正な管理を行っていくべきであろうというふうに考えています。
 以上です。

【多紀座長】 どうもありがとうございました。放流をしないとかいっても、なかなか管理が難しいというようなご指摘があったと思います。ありがとうございました 。
 続きまして、來田委員からよろしくお願いいたします。

【來田委員】 ただいまお話のありました管理の問題なのですが、私どもの考え方として、外来魚が日本の在来魚に大きな影響を与えておる。これは以前から、もう皆さんと共通認識で持っております。ただ、考え方として、要は完全否定するのか、それとも、いわゆるこれまで4湖を中心に管理されてまいりました。ただ、それ以前に全国的に広がり過ぎておりまして、管理をすることが不能である、これは間違いない事実だと思います。ただ、管理が不能であることの原因として全面否定があって、これを全部駆除しなければならないという観点から取りかかりますと、反対する人たちもいるわけです。要は、どうやって、いわばこれまでのバス愛好の人たちに納得しながら同意しながら整理整頓していくのか、これが一番大きな課題だと思っておるのです 。
 ところが、非常に残念なことに、これまでは、ともかく外来生物というか外来魚でフィッシュイーターであるから悪い、この悪者をどうやって駆除しようかというスタンスでしかいろいろな議論がなされてこなかったように思うし、そのことを非常に残念に思っておるのですが、そうではなくて、現在あるものをどうやって整理整頓していこうかという建設的な方向でこの話が進められれば非常にありがたいし、それから非常に素朴なことなのですが、一つの生物というか彼らの意思ではなくて人間たちが新たに持ち込んだ外来生物なんですよね。それを一網打尽に全部この生命を否定してもいいものか。魚釣りなどという魚を殺す遊びの人間がこんなことを申し上げていいかどうかわからないのですけど、私たちは一匹ずつの魚を釣り上げるたびに、その生命体の価値というか、釣らせてもらった、食べさせてもらった命に対して申しわけないけれども、やはりそれだけの価値のある受けとめ方をしようねという、これが本来の魚釣りの基本的な心であろうと思う。ですから、そういう形でみんな考えてきた。その辺のところを踏まえて、やはり秩序づくりへと向かえる話し合いの場であっていただきたいなと思います 。
 それから、無秩序ではあっても、決してもうバスの個体数そのものは減っておる傾向がありますし、それから、仮に増えておるとしましても、これも無責任な言い方なのですが、密放流ということがなされておるというふうな言い方がいろいろなところで出ております。ただ、密放流で増やすということは非常に、もう、現在難しい状況になってきておると思います。私どもの団体でも釣りインストラクターいう組織をつくりまして、それで監視する、密放流が見つかったらすぐにお知らせしようねというふうにしておりますけれども、残念ながらまだ1件もその実態をとらえておらない。ですから、密放流だけじゃなくて、あるいは他の魚種との混入ということも十分考えながら、今後考えていかないといけないし、それからもう一つは、在来種の大幅な減少というものが果たして釣り人の手によるバスの放流だけであろうか。それよりももっと根源的に、自然環境破壊、ここ50年に人間たちがやってきたすべてのツケを、今、バスに押しつけて決着つけようというのはちょっと、私、釣り仲間を説得しかねるなと、そういうふうな考え方でおります。

【多紀座長】 どうもありがとうございました。すべてがバス、それについて座長がいろいろ言ってはこの会合が成り立たなくなりますので私は黙っておりまして、今度は中井委員の方からご意見をお願いいたします。

【中井委員】 中井でございます。今、特に瀬能さんの方のお話とも大分重なるような考えを、私も持っております。ところで、私は(オオクチ)バスの問題は特別だと思っています。それは、これだけ利用する人たちがいながら生態的影響が懸念される魚という意味で、非常に特殊性を持った魚、動物だからです。数ある外来生物の中でも、そういう意味では(影響が問題視されながら、それが野外水域で生息する状態での利用が求められる点で)非常に特別な存在だという認識をしております 。
 バスがなぜ問題かというと、先ほどからも資料でもあるように魚食性という点がどうしても強調されがちなのですが、私自身が思うには、魚食性という以上に、バランスを崩してものすごく増えてしまうこと、これが最大の問題だという理解をしております。幾つもの水域での実際の調査事例でも、魚を食う種類としては非常に重量の比率が高くなってしまう。(魚食性の魚が増えすぎてしまうことで)やはり相当に影響を与えてしまう存在になってしまうということですね。 在来種でも、ほかの魚を食う魚もいろいろいますけれど、もしそれがバスのように増えてしまうのであれば、やはり何らかの管理が必要な対象になると思います。今回、この法律で外来生物を管理しようとするのですけれど、これはよそ者だから悪いからやっつけてしまえ、排除してしまえというような、いわゆる排外的な思想というふうに受けとめられがちな風潮がたしかにあるとは思います。ですが、いみじくもタイトルに「特定外来生物」とあるように、(この法律は)管理の必要なもの、ちゃんと管理していかなきゃいけないものを選定して、それらについて何とか取り組んでいこうという法律です。そういう位置づけだということであれば、オオクチバスが今、十分に適正に管理ができていない状況にあり、この状況は何とか改善していかなきゃいけないことは、今回参加しているどちらの方々も多分納得していただけるであろうと思います。だから、(望ましくない現状を改善していく)そのためには、きっちりと管理をしていこうという共通の土俵に乗って、これからいろいろなこと、対策やこの魚とのつき合い方などを考えていかないといけない。そういう意味で、私も今回の両方の立場の人たちが集まるこういう場が持たれたということ、そこで建設的なことを話し合っていくことについて、非常に期待を持って臨んでいるわけです 。
 生き物とのつき合い方の話という点では、やはり悪いのは我々人間なわけですよね。最近では、クマが出てきたとかシカが増えているとか、在来種であっても、クマなどは保全対象にもなっているような動物ですけれど、人間がいろいろとしわ寄せをするためにつき合い方がうまくできなくなってきている現状が、いろいろとあります。それでも、対症療法としてはいろいろな管理をその中でしていかなければいけないわけで、気の毒に殺されてしまうものもいます。(増えすぎた状況を)放置できないような状況がいろいろと生まれている。内水面の関係ではカワウなどもそうです。かつては保護の対象とされていた鳥だけれども、今や漁業者からは目の敵にされているような鳥になってしまっています。でも、増え過ぎて影響が放置できないから、在来種であっても数を管理していかいといけない。ある意味、人間が天敵がわりにならなければいけないような自然のバランスの崩れが、(在来種にも)いろいろと出てしまっている中で、増え過ぎてしまう外来種についても、やっぱり適正な管理を求めていかなければならないのではないかと思います。 私は、バスという魚もそうですし、ブルーギルなどもそうですけれども、大変気の毒な魚だとは思います。ただ、そういう魚たちとこれからどういうふうにこれから賢くつき合っていくのかということですね。私たちもある程度の心の痛みを覚えなければいけないのではないかと、そういうふうに考えております。 以上です。

【多紀座長】 ありがとうございました。適正管理が必要であるということはいろいろな立場の違いこそあれ、皆様認められることだろうと思っております。
 続きまして、では橋本さん、よろしくお願いいたします。

【橋本委員】 全国内水面漁連の橋本です。先ほど釣りの団体から、二つお話がありましたが、基本的に私の方は、お話を伺っていましても考え方が余り変わらないので、当委員会には3団体も要らない、1団体でもいいような気もいたします 。
 と申しますのは、利用する側ということで、私どもも基本的には釣りのお客様が来て、それが私どもの漁協にとっては大きな収入にもなっておりますし、釣りの団体の皆様方もブラックバスをやるかもしれませんけれども、バス以外の釣りもやっておりますので、基本的にそんなに私どもと考え方は変わるはずがないと思うのですね。やはり至るところ釣りがすべてバスになると、今までやっていた在来種を対象にしていた釣りの方は困ると思いますし、そういう面では私どもと何ら変わらないのではないかと思います。私ども全内漁連が、誤解があるといけませんけれども、従来、一尾たりとも日本にいてはいけないと申し上げておりますが、私どもは、はっきり言って、生物的な観点からというよりも、我々は利用する方からすれば、例えばわかりやすく言いますと、池が十ありまして、一つはブラックバスでもいいですが、九つはそのかわり在来種でやりましょう、とした場合、ところが、今までの歴史から申し上げまして、それが絶対守れない。守れないから、我々とすればもうそれは排除するしかないと、ゼロにするしかないと、そういう考え方できたわけです。要は、はっきり言って、十のうちの一つが我々とは別にブラックバスをやっていただいても、そんなに悪くないのですね。ところが、必ずほかのところへいく。今までの歴史がそうだったので、それで全内漁連としては一貫してもう結論的には一尾たりともいてもらっては困ると申し上げております。したがって、先ほどちょっと出ました、取り締まり、あるいは管理が徹底してできれば、排除する必要はありません。ただ、私は新しい法律ができても十分対応できるかなという疑問はあります。しかし、難しいかもしれませんが、そういう仕組みがあれば、できるように努力すれば、その方向にいけるということを期待していますし、そういうことで、一番の問題は、「密放流」という先ほどの言葉がありますけれども、それでうまく歯どめができ、私どもは従来の在来の魚がとれますということであれば、我々も商売できますし、多分、釣り団体の方々もそれで、言うなれば商売できるというふうなことからいきますと、余り変わらないという考え方です 。
 したがって、新しい今回環境省さんのつくられたこの案は、ある面では期待をしておりますけれども、実行できるような形になるかどうか、今まで長い歴史を見ますと、やります、やれますと言っても結局やれなかった、日本全国に広まった、そういう歴史がありますから、そこは我々内水面漁業者が一番身にしみて本当にやれるのかという懸念を持っています。そこは仕組みができれば我々もいろいろ一緒に中に入らせていただいてやれるという期待もありますので、ぜひこの選定、指定をしていただきたいと、そういうふうに思っております。

【多紀座長】 ありがとうございました。なかなか、確かに管理の難しさですよね。結局は何といいますか、仕組みはお役所の方でつくると、管理というのはみんなで協力してやれば何とかなるのではないかという思いで、こういうような会合をやっているわけだと思います。どうもありがとうございました 。
 次には、細谷委員ですね。よろしくお願いします。

【細谷委員】 改めて、近畿大学の細谷でございます。私は瀬能委員と同じで、私は生物多様性の視点に基づいて皆さんとお話をしたい。
 生物多様性は広い概念でございますから、当然、野生生物の保護、それからそれを基盤とする産業、例えば内水面水産業も視野に入れた視点であると考えます。つまり、個別のものにとらわれない視点でこの会をぜひ進めていただきたいと思っています 。
 私自身は、オオクチバスの影響は極めて甚大で、早急に対応しなければならないというのが率直な意見でございます。我が国に、現在のところ、外来種も含めて約320種類の淡水魚がございます。外来魚を含めた日本産淡水魚のうち、ブラックバスほど情報が出そろっている魚種はないと私は思っております。ブラックバスが日本の在来魚になぜこのように影響を与えているのでしょうか。私なりの考え方は次のとおりです。まず、何といってもスズキ型であるということ。ただし、在来種にはオヤニラミのように河川に住んでいるものもいますが。2番目に止水性であるということ。3番目に温水魚であるため容易に我が国の水域に定着するということ。4番目にオスが営巣し稚魚を守るということ。5番目に外来種の問題に根本的にかかわってきますけれども、農業生物と違うのは、環境放出を大前提にしているということです。こういった問題を一つ一つ考えていきますと、残念ながら負の効果をそのまま日本の生態系に全部当てはめてしまったというのがブラックバスの現況だと思います 。
 このような結末ははなからわかっていたわけです。我が国は南北に長い大陸島でもあるために、意外と淡水魚の種類が多うございます。全体をあわせてもヨーロッパよりも多いですし、ニュージーランドなどに比べれば6倍から7倍もの種類数があります。我が国の淡水域の中でブラックバスを絶対に入れてはならない水系が四つあると私は考えておりました。1番目に霞ヶ浦・利根川水系。これは関東・東北地方などフォッサマグナより北の部分で、固有の魚類相が見られます。2番目に琵琶湖・淀川水系。これは言うまでもなく、琵琶湖の歴史そのものが反映されて、固有性も多様性も非常に高いところです。3番目に有明海周辺地域。ここには朝鮮半島など大陸の遺存種に加え、固有種もいます。4番目に八重山諸島。西表島ということになります。こういった水域を見てみますと、西表島を除いてすべて汚染されているというのが現状でございます 。
 こういった状況に対し、私たち魚類学者が当然考えている暇がないということでございますので、早急に対応しなければならないと思っています。この会議では、生物多様性、水産資源に与える影響についてはもう既に言い尽くした感がございます。専門家会合でも申し上げたように、この小委員会では、むしろ一般市民であるとか、地方自治などの社会的な立場におられる方々の意見をぜひ聞きたかったなというところが本音でございます。もちろんバス釣りを継続しなければならない方の客観的な理由についても改めて問いただしていきたいと思っています 。
 最後に、我が国全体の国家戦略について。グローバル・バイオダイバシティー・ストラテジー、要するに世界戦略の中では、生物多様性条約締約国は一つの目標を持っています。すなわち、外来種は生物多様性にとって最大の脅威であるという認識と、ブラックバスを含む外来種への取り組み姿勢は、その国の文化のレベルを図るよいツールであるということが認識されています 。
 特定外来生物法では、ブラックバスそのものがどう処遇されるかが注目され、その評価はいわば我が国が文化国家であるかの踏み絵そのものであると考えております。

【多紀座長】 ありがとうございました。今、いわゆる生物多様性の面から日本におけるブラックバスのポジションといいますか、ということのお話を願ったわけでございます。ありがとうございました 。
 次に、今度は水口委員、よろしくお願いします。

【水口委員】 私は30年ほど前から、肉食性外来魚の社会的評価に関心を持ち、発言し続けております。その間今日まで、基本的な考えはほとんど変わっておりません 。
 そういう中で、この肉食性外来魚、例えばラージマウスバスとかカルムチーなんかを批判する言い方として、害魚ということが最初に言われました。しかしそれはだんだん減ってきて、今から十数年ほど前から生態系への影響とか、生態系を破壊するという言い方が強くなりました。そのことについては、12年前のフライの雑誌で本多勝一氏への公開質問状の中できちんと、生態系という言葉を使うのはおかしいということを言っています。その後この魚たちを批判する言葉として、生態系は余り使われなくなったのですね。かわって出てきたのが生物多様性です。これは92年のリオの環境サミットで日本ではほとんど考えられていなかったのだけれども、国際的に大事だということになって、それにみんな飛びついたわけです 。
 しかし、行政や立法府はそういう流れを全く知らないから、法律に生態系という言葉をすぽっとはめてしまったのですね。今回、問題になっているというか、それがゆえにこの委員会もあるわけですけれども、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律。それでは「生態系等」というのは何かといいますと、この第2条の2項、生態系等に係る被害とは、生態系、人の生命もしくは身体、または農林水産業に係る被害を言うということですから、農林水産業に係る被害というのは、これはまたいろいろややこしいところなので、今回はちょっと、そういう議論になりましたらまたしますけれども。残るところは、特に環境省が問題とするところは、生態系に係る被害ということになるわけです。そうしますと、こういう外来魚が生態系に被害を及ぼすかとか、生態系に係る被害、そういうものがあるのかという話になるわけです。これはまあ、しかしこれは法律ができてしまったんですから、字義どおりに考えるしかないのですね。生態系とは何かと考えてみる必要があるわけです。それにいろいろな影響があるのか、ラージマウスバスが影響するのかということをこのグループ、小委員会では検討すべきです 。
 そうしますと、それに対する一つの答えが皆さんのお手元にあります、『ブラックバス・ブルーギルが在来生物群集及び生態系に与える影響と対策』という報告書の中に出ております。この56ページ、この委員会にはこのメンバーの多紀さん、中井さん、私が参加しているのですけれども、これは環境省の野生生物課が編集ということになって、ある程度オーソライズされた環境省の見解の一つということで、これ以外に求めるものはなかなかないんですね、生態系について意見を述べたものは。その生態系に与える影響というのが、10行ほどでというか10行ほどしか書くことがないのですけれども、それを全文読みますと、「生態系エコシステムは、生物群集とそれが成立している場所の栄養塩や水、デトリタス(落葉樹枝、動物遺体、排泄物)などの非生物的環境をあわせたものとして定義され、生態系内ではエネルギーの流れや物質の循環が生じている(宮下・野沢2003)。ブラックバス、ブルーギルが侵入・定着することで本邦の湖沼生態系がどのような影響を受けているのかについての知見はほとんどなかったが、近年、埼玉県のため池で行われた実験によって、ブラックバスの捕食による影響が、直接的にあるいは間接的に他の生物群集へと飛躍をすることが検証された(前園&宮下2003、インプレス)」――これはミスプリントで、2004だと思います。「今後はエネルギーの流れや物質循環も視野に入れた包括的な研究の実施が期待されている」ということで、生態系に与える影響についての研究はないけれども、今後必要だと。ただ、埼玉のため池などで生物群集への影響は具体的に明らかにされているということだと思います。そうしますと、この法律では具体的に明らかになっている小さなため池における生物群集への影響を全国の湖沼の生態系に当てはめようという話なのですね。これは無理です、はっきり言って、そういうことは。ですから、特定外来生物としてラージマウスバスを指定するのは無理だということ。法律の字義どおりに解釈すればですね。ですから、これをやれば、後で法律的に裁判などになれば結局はこういう環境省のこういう報告書を引用するしかないのですね。そういう意味で、こういうくくり方は――これはもう、法律が間違ってつくられてしまったので、それでやるしかないのですけれども、ですから、そういうような事実に基づく実態を無視して事態は進行してこの委員会もあるわけで、何か間違ったことを言ってもみんなで言えば本当になるみたいで、みんなで渡れば赤信号は怖くないみたいな世界になってしまっているのですけれども。ただ、そういっても具体的に問題があるのも事実ですから、何らか対応しなければいけないというのが環境省の考え方だと思います。 そこで、資料1-4の被害の判定の考え方ということで、「生態系に係る被害を及ぼし」というのは、具体的には生物群集だったりいろいろなんだという形で、一種の読みかえをして進んでいくわけです。そうなりますと、具体的に、先ほど配付されたオオクチバスの資料2で、被害の実態、代表的な事例、1、生態系に係る被害、このタイトルはおかしいんですけど、中に挙げられている四つの項目については、この報告書の委員会でも議論されていますし、私はそれを否定するつもりはございません。ですから、そうなると、ここに出てくるのは小さなため池とか、ある程度限られた小さな湖沼ということになって、全国の湖沼という話ではないわけですね。ですから、そういうことで私はもし具体的に対応するのであれば、一種の地域指定、これは天然記念物なんかにはあるのですけれども、種指定ではなくて地域指定で、ここの水域についてはラージマウスバスについては法律の求めているようなことで対応するということは可能だと思いますし、それは行った方がいいと思います。 それからもう一つ、地域指定になりますと、輸入移動の問題が出てくるので、これはやはり輸入移動は規制すべきですから、それについては魚類専門委員会のところで配られた資料を見ていて、あ、こういうのがあるのかと思ったのですけれども、タイワンドジョウについて、タイワンドジョウ属全種は米国ではLACEY法によって輸入禁止、国内移動禁止とされているという形で、それを個別そういうことで輸入禁止と移動禁止をやるような一つのものを対応すれば、それは十分、目的は果たせるのですね。それをこの外来特定生物ということで、もう全部網をかけて、何が何でも全国一匹たりともという話みたいになっていくような対応の仕方は非常に問題が起こるし、法律的にも問題が出てくるだろうということです。 以上です。

【多紀座長】 どうもありがとうございました。「生態系」という言葉について、今、水口委員のおっしゃった委員会でいろいろと、私なんかも生態学者ではないものですから、生態系という言葉を使っていたら、それではおかしいのじゃないか、定義上おかしいのじゃないかということで、生物群集というような言葉に置きかえたことは覚えております。今、そのあたりのご指摘だったと思います。ありがとうございました 。
 これが最後ですね。丸山委員さん、よろしくお願いいたします。

【丸山委員】 ほとんどしゃべることがなくなっちゃったような感じがするのですけれども、私自身、ここにいる方の中ではちょっと珍しい点があるとするならば、一応お魚の研究をやっています。それも生態的な研究をやっています。ある意味、魚類学とかかわり、生態学とかかわり、水産大学、今の海洋大学にいますので、水産ともかかわって、しかも趣味で釣りともかかわっている。非常にタコ足的にいろいろな方といろいろなかかわり方を持っているというのが私自身の特徴かと思います 。
 そのかわり、どこに立脚したらいいのかは自分でわからなくなっているところがあるのですけれども、この問題、いろいろなところでいろいろな不幸ないきさつがあって、非常に混乱してきていると。言葉一つをめぐって、密放流とは何ぞやとか、生態系とは何ぞや、私、生態系の議論、今、水口さんがやってくれましたけれども、それをやることで新しく何が生まれたのかは全然わからないので、私は法律屋ではないので、生態学的に何も新しい情報をいただけたわけではない。その後の方の話と何も関係してないなというふうに思っていますけれども、我々、自分の仕事ととらえる形で、危険因子をきちんととらえて、次の時代へと進んでいくしかないわけです 。
 先ほども高宮さんの方から、実態が明らかになっていない、それはきちんと明らかにした上で前に行きたいという話があったと思います。私もそれは賛成です。
 ただ、一つだけご理解いただきたいのは、我々は自然界で起こっていることのすべては押さえ切れない。生態系というのは、そういったなるべくすべてに近いものを押さえたいという人間の願望、要するにそういう視点から、視野から、枠組みから考えれば、その枠組みを持たないときよりは全体がつかみやすいのではないかというので提唱されている概念です。実在でも何でもありません。それを守るとか何か言ったところで、それはしょせん無理な話で、だからそういう議論をすれば、それでいいので、それを法律と絡める必要は何もないと思うのですけれども。そういった形で、はっきり申しますとギル仲間の議論、これが非常に多かった。これは私は非常に嫌でした、これにかかわっていてね。もっと、前に進みたいです。本当に、本気でやっていきたい 。
 さっきも細谷さんから、ちょっとそういう話がありましたけれども、バスについては今回リストに挙がっている魚種の中で一番詳しいデータがあります、恐らく。だけど足りないとおっしゃる。それもわかります。では何が足りないのか、どういうデータがあったらお互いに納得できるのか、それを具体的に言わなかったら、議論は進みません。來田さんも水口さんも環境のことをおっしゃったと思います。環境のことは大事で、きょうは水口さん、環境なかったな。來田さんは環境のことをおっしゃいましたね。じゃあ、その具体的に環境というのは何なんだ――そこからいかなければ、恐らく何の進展もありません。できれば、今までそういう形で落ちついた話し合いができなかったことを、この場を利用して、本当に具体的に、ただ言い逃れでそういう言葉を利用するのではなくて、今我々が持っている知識をどう生かして、本当にお互いに納得できる情報をどれだけ増やすかという格好で、なるべく具体的にやっていきたいと。それがなかったら、この会議は本当に茶番だと私は思っています 。
 以上です。

【多紀座長】 ありがとうございました。お互いに納得できる具体的情報を持つと、そうじゃないとまずいし、今ないよということだろうと、そういうコメントだと思います。ありがとうございました 。
 これで一通り委員の皆様方からご意見を賜ったのでございますが、ただいまの限られた時間の中で、突然のご指名でということで、いろいろまだまだおっしゃりたいこともありますでしょうし、それから実際の事例、データ等ももしもいただけるものがあったらいただきたいと思いますので、いずれこれを文書の形でもって資料の形でもってご用意いただいて、提出していただいて、次回の会合ではそれをも含めて、それに基づいてさらに論議を深めたいと思っております 。
 この議事次第によりますと、一応、ですから今の各委員のご意見はご意見だけは承ったということで、次にそれを文書の形でもって事務局の方へいただければありがたいと思います 。
 あとは、3のその他となっておりますけれども。まだ時間が、皆様非常に要領よくご発言願ったので、初めは実は私、心配していたのですよ。時間が足りるかなと思ったら、長い演説の方は1人もいらっしゃらなかったので。時間はまだございますので、今の各委員のご発言も含めて、自由にフリーディスカッションをいたしたいと思います 。
 その前に、ちょっと今の生態系等について、何か事務局の方からコメントがございますか。

【上杉企画官】 法律上の用語の観点につきましては、水口委員の方から資料1-4のご紹介がありましたので、特にそれ以上の補足はないのですけれども、基本的には具体的に基本方針で定められました被害の判定の方式、あるいは、今回、資料1-4で補足的につけております2ページの(ⅰ)から(ⅳ)の考え方、こういうことに照らして、事例を見てみていくということだと思っております。

【多紀座長】 ですから、具体的にはこの在来の種とか個体群とかということだということですね。

【丸山委員】 それで問題はないと思います。

【多紀座長】 それより、生態系という、あるようなないようなもので、でも、まあ……。

【水口委員】 具体性のないものなんですよ。

【丸山委員】 だから、社会的にね……。

【多紀座長】 その辺、ですから、ちょっと何か……。

【丸山委員】 余計なことを言ったので混乱して、すみません。社会的にこの法律で使われている使われ方がかなり広くやられていますし、そこでいろいろな受け取り方があることは確かだと思います。ただ、それはいわゆる生態学的な歴史を見た場合には正しくはないと私は思います。もし厳密にとらえるならば、それは表現を変えていった方がいいですし、ただ、できているものですし、実際上の作業上それを先ほど言われたように置きかえをして考える。これは、私自身は何の異存もありません。

【多紀座長】 ほかに委員の、何かご意見いかがですか。

【水口委員】 ほかのことでいいですか。この対応の仕方として、いろいろな言葉が言われているわけです。皆さんも例えば中井さんは、増えて問題になった場合に管理が必要なので適正管理を行うという、そういう言い方をされました。それ以外にも、例えばこの環境省の資料では、「防除」という言い方である程度統一していると思います。それから、世間一般では「駆除」と、そういう言葉が使われるわけですね。その中で、やはり大事なのは駆除とかそういうことではなくて、中井さんの言ったような適正な状態に管理するという考え方は非常に大事だと思います。それはですから在来魚についても同じだという、そのとおりだと思います 。
 そこで問題になってくるのは、適正な管理という、もう一つそれの対応として増えて問題になるということがあるわけですね。それは結局は読み替えだとしても、被害の判定の考え方によれば、いわゆる生態系に係る被害というものが認知されないようなレベルにするということだと思うのですよね。だから、在来生物に影響し、問題が起こるという、例えば外来生物が侵入し繁殖することが在来生物に影響し問題が起こるという点において問題なので、外来生物は。だから、防除という考え方は、駆除ではなく、問題のないレベルまで間引くという、そういうことにならざるを得ないと思うのです、結果としては。駆除とか、全数なくすなんてということは、これは膨大なお金がかかる。しかし、問題のないレベルまで適正な管理をして間引くなり抑えるということは、これは実現可能だと思います。私はオオクチバス、ラージマウスバスについてはもう全国的にそういう状態になっていると思います。特定の漁業権、魚種として認められているところ以外は、八郎湖は何かまたちょっとかえってリリース禁止の結果増えているという話もありますけれども、いわゆる琵琶湖にしても霞ヶ浦にしても、いろいろなところでは今みんな減ってきているのですね 。
 ですから、そういう意味では、何人かの方が言ったが、猛烈に増えているみたいなことを言う事実認識というのは余り適切ではない。ですから、そういう意味では今具体的に何か対応するとしたら、実際今どうなのか、それからこれまでの量的指標が何らかの形で把握して、ここ十数年どうなのかということを押さえて初めて物が言えるわけで、ただ恐怖感なり一つの杞憂感でもって、増えている、増えている、大変だということでは、この法律の中では動けないと思うので、そういう意味では、何事をやるにしても具体的な調査というのは、時間はどうかは別として、必要だということだと思います。

【多紀座長】 今、オオクチバスについては一番、事例、データがそろっているという発言がありましたけども。

【水口委員】 それはちょっと、2人の言い方が微妙に違って。

【多紀座長】 その辺についていかがですか。

【水口委員】 ちょっといいですか。

【多紀座長】 ですからね、水口委員の言うように、経時的な変化とかそういうのも全部わかっているのかと、そういうことね。

【水口委員】 はい。というのは、中井さんは、320の淡水魚の中で一番よくわかっている、という言われ方をしたのですね。それに対して細谷さんは、選定された外来7種の中では、と。細谷さんの言うのはもっともだと思います。だけれども、中井さんの言ったようなことを言ったら、アユとか、いろいろなものがもっとよくわかっていて量的変動もあるので、そういう意味では間違っているので。細谷さんの言うのはもっともだと思います。この7種プラス、オオクチバスかラージマウスバスの中では一番資料がある。それは事実です。ただし、漁獲量なり密度なりの経時的・経年的な変化というのはほとんどないです。ですから、この報告書でもゼロです。実際にはあるのですけど、私たちの研究とかいろいろあるのですけれども、この報告書の中でもあえて挙げてないわけですね 。
 例えば、琵琶湖を取り上げているけれども、琵琶湖の中のラージマウスバスの漁獲量すら検討してないのです。あえて避けている面があるので、そこらのところはいろいろ問題があるのですけれども。そういう意味ではそういうことも考慮に入れてやらないと、実際に琵琶湖のリリ禁訴訟ではそういうことが問題になっているわけですから。

【多紀座長】 はい。
 ほかにどなたか、コメント。

【高宮委員】 先ほどのお話の中で、幾つか出ていました、今の水口先生の話でもあったこのオオクチバスがここ数年増えているかというような話ですが、私ども釣り人の情報、バス愛好家は300万人と言われておりますので、そこからの情報は、恐らくどこよりもその増えているか増えていないか、釣れるか釣れないかというような情報というのは、かなり高い精度を持っていると思っています。私どもではもう10年くらい前より、全国的にかなり生息数は減少しているというふうに思っています。もちろんこれは地域によって多少ばらつきがありますから、全国一律に減っているとは断言する事は出来ませんが、大幅に、全国平均でいくとこれは相当に減っていると思っています。機会があれば後日それに関する資料についてご説明申し上げたい。そういうようなこともあって、私どもはそうではない、増えていると言われる方もおられるので、また先ほど科学的な知見ということで、たくさん、バスに対してはデータがそろっているという話がありましたので、先程も申し上げたように、それなら全国の生息域や生息数の実態の調査をまずしてほしいということを申し上げました。そのような全国調査が環境省でも水産庁でもされた事が一度もないので、実施した上で、まずそれが外来魚だけではなくて、在来種もある程度のことがわかることによって、そこから対策も考えられる、また釣り人もいろいろなことがまた協力もできる。先ほど言われたように、狭小水域や希少種の生息する場所について釣り人も何とかした方がいいというようなところも出てくるというふうに思っていますから、その辺のところはまずお伝えをしておきたい 。
 それからもう一つは、この環境放出とか密放流というようなことが何人かの委員から出ました。これに関しては、かなり私どもの認識と違うと思っています。1992年に水産庁の長官から通達が出されて、各県が少しずつそれに対応して漁業調整規則で外来種のこの移入・移植禁止というのが出され始めたわけですけれども、私どもではその当時以降、こういう釣り人によって日常的に密放流が横行している、あるいは業界が組織ぐるみで密放流をしているというようなことが書かれたり言われたりしているのですが、そういうようなことはあり得ないというふうに思っています。そしてまた、私ども日本釣振興会も、もしそういうことが事実であるなら、こういう公の場でこのオオクチバスを資源活用とか有効活用とかいうようなことは発言できないと思っていますし、私自身もこういう問題を語る資格はないと思っています。それぐらいにそういうことはあり得ないというふうに確信をしております 。
 今までにいろいろな方々にそういう密放流とか環境放出というようなことをいろいろ言われるのですけれども、そのような人達に、具体的に何か根拠があるのですかということをずっとお尋ねしますけれども、ほとんど憶測か無理やりこじつけただけで、具体的なことが出てこない。ただ漠然と、本来いなかったところにいるようになったのは、魚が飛ぶ訳ではないからそれしか考えられないでしょう、ということなのですよね。ちょっとそれはおかしいでしょうと、1件もそういう事例がない。先ほど富山の例はありましたけれども、せいぜいこの十数年間でその事例だけで、それ以外にそういうことがない中で、そのような事が当たり前のように発言され報道されていますが、これはちょっと我々としても納得がいきません。オオクチバスが日本に先程の経緯で80年前に移入され、様々な要因で全国に広がりました。昨年のコイヘルペスですが、一年足らずで全国に広がり、1000万匹以上のコイが死滅しました。その広がった原因ですら正確に解明されておらず、わからないという事ですが、バスの場合は根拠も無いのに密放流と決め付けています。我々も、もちろん内部で組織的なとかいうことも言われておりましたし、また釣り人がということがありますから、相当な調査をしていました。またホームページ上でも、全釣協でもそうですけれども、もう相当前から、そういう問題があったらこれは知らせてほしいと言い続けてきました。我々はこれまでポスターや釣雑誌などいろいろなことで、絶対そんなことがあってはだめですよということもかなり前から啓発をしていますし、また情報も得ようとしていますけれども、我々が調査する限りでも全くそれはないわけです。そのように根拠がないにも拘らず、憶測で人を犯罪者扱いする事は大きな問題だと思います。その辺のところが、駆除派の人達に何か別の思惑があるのかもしれませんが、ちょっと過剰反応し過ぎているんではないかなというふうに思いましたので、あえてそのことを申し上げさせていただきました。

【多紀座長】 はい。

【橋本委員】 いいですか、全内漁連ですけども。
 基本的に同じなんですけど、今のところは、要はだれがやったとかというのではなく、結果的にそのようになっていると、結果的に人が動かさなければそのようになっていないわけです。おっしゃるとおり、会社組織でやってないかもしれません。マニアがやったのかもしれません。それから、あいつが憎いからといってやっているのかもしれません。あいつを少し懲らしめてやろうと。しかし、いろいろなことを、想定してやらざるを得ないということです。あえて特定する必要はないといいますか、結果的に、もうそうなっているわけですから、そういうことを全部考えながらやらざるを得ないと思います。私は先ほどお話ししたように、これは基本的に取り締まりの話です。ある面ではむしろ取り締まりの学者の方がこの検討会に入った方がいいのかもしれませんけれども、取り締まりをどうするかというところがポイントだと思います。生態系というよりも、我々利用しているサイドからいいますとそうなると思います 。
 したがって、結果的に今までそうなっており、実際的に入っているのですから、そこはすべてのことを想定してやるべきだと思っております。それが一点です。
 それから、調査の話ですけれども、今のお話ですと、調査は100%、何尾いるかわからなければできないという話では私はない、と思います。そんなの待っていたら、これはもうできないと思います。管理もできませんし、そこはもう見きわめた時点でやらないと、これは手遅れになってしまう。何尾いるということをカウントする必要があるのかと思います。大まかな数字、私ども全内漁連も、もう何十年、調査も毎年やっていますし、あるいは各県でもやっていますし、いわゆるクロスチェック的な管理で、もう私とすればデータはかなりありますし、それで判断しておかしくないと、そういう考えを持っています。精度を高めるのは結構ですから、毎年やるべきだと思いますけれども、ただ機械的なものと異なって、生物ですから、それは海面調査もそうだと思いますけれども、生き物ですので、日々変化するわけですから、そこは割り切らざるを得ないと、そういうふうに考えております 。
 以上です。

【多紀座長】 はい。
 では、水口さん。

【水口委員】 今、全内漁連さんの方から調査ということが言われたのですけれども、これは農林水産業への被害ということと関係してくるわけですけれども、これは水産庁にもお伺いしたいことなのですけれども、具体的に内水面漁業の漁業権魚種であるアユとかワカサギとか、そういうものについて20年ぐらい前から害魚ということが言われて、動きが起こり出したわけですけれども、そういうものについて具体的な漁業被害が数字で報告されているかということを、3年ほど前に佐藤謙一郎衆議院議員から質問趣意書で聞きました。そうしたらば、総理大臣名で、水産分野としてはそういう数字は今まで把握してないと、要は数字はないということを言われたのです。そうなると、では具体的に農林水産業の被害というのだったらどのぐらい金額でなるか、農林水産業という以上は生物多様性とは別ですから、金額でどれぐらい被害があるかということなしにいろいろな補助金が出ているわけで、それはおかしいわけで、やっぱり具体的な数字というのをやっぱりきちんと全内魚連としても出していく必要があると思うのですね。ですから、これ以上詳しい資料は必要ないと言う以前に、これまで、あった、あったというのが本当にどうだったのかということをきちんとやっていかないといけないということだと思います。

【多紀座長】 細谷委員がさっき。

【細谷委員】 委員の方々には大変失礼なのですが、何か少しずつ論議がずれているような感じがするので、増えているか減っているかというところに戻してよろしいでしょうか 。
 個体群は言うまでもなく変動するのが自然であるはずですから、断面的な時期をもってふえている減っているかで論議するのは、どうも生態学的な常識から考えておかしいです。食う食われる関係を見るのに数十年のタームで変化するわけですから。現状は、分布域の急激な拡大と動物群集の変遷こそ最大の問題であるという視点も持ってこないと、なかなか先には進みません。もちろん釣り人の情報も非常に重要です。しかし、現在の社会的な関心度から言えば、地元市民こそその変化を熟知しているはずです 。
 ですから、釣り人、市民団体の情報、プラス、それから私ども研究者個人のプライベートデータ、そういったものを踏まえて分布域拡大の状況を把握していかなければなりません。被害実態については、どうでしょうね、水口先生。私、個人はワカサギの群馬県の事例のように、金額では出ているようには覚えてはいるのですが。その辺、全内のデータでなくても、きょう水産庁の方々が出ていますけれども、漁業被害の実態、出ているのではないでしょうかね。

【多紀座長】 はい。
 では、瀬能委員。

【瀬能委員】 今の細谷さんの意見と、私全く同じで、ある一断面で見ても全く意味ないと。仮に減っていてもそこに例えば在来魚を例えば復元する目的で放流したときに、ではその後どういう変化が起こるのかとかということを考えれば、もう自明のことですので、全くある一断面の現存量を見ても、意味ないと思います 。
 あと、水口先生にちょっとお聞きしたいのですが、先ほど全く経時的な変化をとらえたデータがないというふうにおっしゃいましたが、例えば琵琶湖での中井さんの報告ですとか、深泥池とか、そういったところのデータというのをどういうふうに考えておられるのか。具体的にどこがどうまずいのか、それからあと、実はデータはあるというふうにもおっしゃいましたが、具体的にそれはどこのどういう事例で、どういうデータなのかということをちょっとお聞きしたいのですが。

【水口委員】 まず関連するのですけれども、細谷さんの方で動物群集の変遷を問題にしているのだと。そのとおりだと思います、それで。しかし、今細谷さんも中井さんも、増えているということをおっしゃったと思うのですよね――言ってないですか。じゃあ、細谷さんと瀬能さんかな。何か増えているからラージマウスバスの増え方は格段に違うのだということを言って、増えているということを言われたので、申し上げたのですけれども。 では、その次に増えているか減っているか断片的ではだめだと、例えばここ10年ではだめだと。だけど、実際に農林水産統計でラージマウスバスの漁獲量が琵琶湖以上に長いところあるかと。ないんです。だけれども、中井さんはご自分のいろいろな中でその漁獲量を具体的に検討し、ほかの影響があったとされる魚種の漁獲量を、検討はされてないですね。動物群集の変遷はいろいろ出されていますけれども。その中に、どれだけラージマウスがいたということは言われていますけれども。本来、個体群生態学なり群集生態学の中で見ようと思ったら、個々の個体群の影響があるかどうかというものについてのかなり似たような年限のものを使って検討するしか、方法はないんです。統計がなければ自分で調べるしかないのです 。
 そういう意味では、公表はしていませんけれども、一部は昔、釣り雑誌に書きましたけれども、私どもの研究室では精進湖で13年間にわたって個体識別標識放流をして、ラージマウスバスの個体群変動を見ています。出てきた結論は何かというと、東京電力が水をどう使うかで精進湖の水位を下げるかどうかが決まるという、それが結論です。これは青木湖とかいろいろなところでスモールマウスで起こっていることです。伊豆沼などでもそういうこともあるという話ですけども 。
 そういうことで、だけど、この話はこの委員会には、前の報告書のときには関係ないから出さなかったので。というのは、個々のラージマウスバスの漁獲量の変遷ということが全く議論にならなかったのですよね。しようとしなかったのです、委員会として。そのことを今申し上げたのです 。
 ワカサギの話が出てきましたけれども、ワカサギはどうやって漁獲量というのは決まっていると思いますか。基本的には放流です。在来のところ、例えばもともといる霞ヶ浦とか宍道湖とか、そういうところは放流をしてもどんどん減っています。これはもう、一律に減っています。それから、もともといないところで、国内外来としてのワカサギは完全に――諏訪湖がそうなのですけれども――放流量に対応して漁獲量は決まってきます。ただし、ここ20年近くの諏訪湖は、環境のいろいろな問題、変化でそのレベル、対応するレベルが一段下のレベルで対応しています。そういうことはみんな私たちの研究室で、これは長野の水試の人たちといろいろ相談してやっていますけれども。そういうようなことで、ワカサギについて単純にどうのというよりは、霞ヶ浦のワカサギを100年の、ある意味では一番長い統計だと思いますけど、100年やると、結局は県統計というのが増殖効果をあらわすためにつくられた数字だったということを歴史民俗博物館の紀要に私たちは報告していますけれども。先ほど細谷さんは、食う食われるの何十年の統計表と言いましたね。これは有名なオオヤマネコとカワリウサギの話だと思います 。
 これはどういうことが今言われているか、ご存じですか。あれは単純に食う食われるじゃなくて、猟師の戦略によってやったんだということに、今はもうなっていますよ。だから、そういうようなことで、単純に漁獲量の変動とかそういうのを言い切るのは、非常に人為が加わっているものは大変なんです。ですから、そういう意味では前園さんなどのため池の仕事というのは、これはある意味では人為のかからないところできれいな形で出てくるのはそういうことなんですよね。ですから、人為のかかるところでは漁獲圧力になるし、釣りも圧力になるし、それから環境改変も圧力になるし、いろいろあるので非常に難しいのです 。
 ですから、それを皆さん避けたがるのですけれども、それ抜きに議論して、単純に生物的関係だけで減ったの増えたのというのは、もう無理があるということです。

【多紀座長】 はい、どうも。ちょっと待ってください。
 座長が余り私見は述べるべきじゃないということであれなのですけれども、一つ議事進行についてコメントさせていただきますと、論議が何かだんだんよその方へいっちゃっているみたいな気がするのですよ。ここのあれは、こういう特定外来生物が、どれをどういうふうに指定する、選定するのか、それからオオクチバスを選定するべきかどうか、どのレベルでするかと。もしもするとしたら、皆さんも適正管理というのは必要だろうと、そこまでは皆さん合意しているわけですね。ですからそれで、それこそ、ここまでデータがあるとかないとか、それはもちろん重要な議論だけども、余りそっちばかりいってしまうと、何か何回やったって、なかなか結論まで僕は到達しないと思うのですよ。ということで、ちょっと皆さん軌道修正をよろしくお願いをいたします 。
 今、だれでしたっけ。どうぞ。

【來田委員】 申しわけない。私、申し上げようとしておりましたのをまさにそこのところで、要は今、特定する必要があるのかないのかという話と、それからもう一つは、厳密にやらなければならないことは生息域ですね。新しい生息場所が見つかったら、直ちにみんなで協力一致して、そこからバスを排除するということについては、釣り人も協力できる。だから、そういうふうな、例えば特別の、ここはいちゃいけないんだよという場所をまず決めてくださいと、それは我々アマチュアには全然わからないから。そうやって順番に住んでいない場所を、どういう言い方だと正確にとられるかわからないけれども、住んではいけない場所であったり、住んではいない場所、そういう場所をどんどんふやしていくことが、これは大きな目的にかなうのではなかろうかという提案を何年か前からずっとさせていただいているわけですが、全然具体案にかからずに今日まで来ているわけです。今回こそは何とかそれを進めていただきたいなと。

【多紀座長】 ちょっと先ほどにつけ加えますと、今度の徹底的に防御しようとか、そうじゃないという、その法令ではないのですよね。そうでしょう。これを指定したらば、飼ってはいけませんとか、譲渡したらいけませんとか、放流したらいけませんとかいう法律でしょう。うっかり変なことを言って、また後で怒られるのは嫌だから。

【上杉企画官】 はい。では、ちょっと確認だけしますと、参考資料の1が法律の概要になっておりますけれども、基本的には特定外来生物に指定をされると、飼養、栽培、保管、運搬ということで行為が規制されるのが四つの種類の行為ですね。飼ったり、保管をしたり運搬をしたりということが許可制になる。さらに許可を受けてないと輸入ができない、譲渡・譲受ができない、つまり販売ができないということになっていますし、これにかかるものについては野外へ放してはいけないというのが具体的には規制の中身です。これとは別に防除というのは、一応枠組みを定めているのですけれども、この法律上のいろいろな規制を一応解除するということで、具体的に防除を進める仕組みをつくっておりますが、これは必要に応じて実施をするということになっておりまして、国が基本的には実施するのですが、地域によって自治体あるいは民間の団体の方がそういうことをやることについても、一応、国としては認めていくという形になっています 。
 あと、具体的な防除の考え方は基本方針の方でいろいろ書いておりまして、1点だけ補足をさせていただくと、基本方針のこれは、この冊子の方で言うと9ページになりますけれども、防除の公示に関する事項(3)防除の内容、それで防除の目標というのがあります。これは防除の対象となる特定外来生物の生態的特性と予想される被害の状況を勘案し、区域からの完全排除、影響の封じ込め、影響の低減等の目標を設定をするということで、防除の考え方というのは幾つかあると。その地域の状況等に応じて目標を考えていったらいいのではないかということを一応基本方針では定めております 。
 以上が補足です。

【多紀座長】 ですから、防除については、その種それからその地域によって適当と思われる方策を講ずるという理解でいいのだろうと思うのですよね。
 ということで、まだ15分ばかりありますので。

【上杉企画官】 水産庁の方から。

【多紀座長】 そうですね。水産庁、ぜひ。

【水産庁 重課長】 議論がそれる話になるかもしれませんけれども、先ほどからいわゆる被害の関係の話でちょっとお話があったので、現状の話だけちょっと若干申し上げますけど 。
 被害の把握につきましては、先ほどからいろいろお話ございますように、全国的な意味で、例えば被害があったときにアユが何匹食害を受けたとか、そういう定量的なものというのは当然のことながらなかなか把握しづろうございまして、そういう観点で直接的な数字として押さえているわけではございません 。
 また一方、事例として、ただ実際に現場のところの状況を一番よく知ってらっしゃるのが現場の釣り人なり漁業者の方々、漁業協同組合ということで、そういうところで放流されている効果が上がらない一つの理由に、いろいろな環境条件の問題などもあるわけでしょうけれども、その中でやはり特定の一つの大きな要因として、外来魚による食害等というものがある意味で定性的に把握されているようなところについては、そういうものの対策として被害に基づく駆除というものにつきまして、国としても補助事業というような形で支援しているというのが実態でございます。ですから、金額的なところでは地域地域でその被害の実態につきまして、地域の事例として算定しているところなり、それから漁獲量等につきましても、農林統計の中でその他なんかに入っているところについては、オオクチバスという種としてはなかなか出てこないわけですが、やはりその地域によってそういうものを把握しているところもあるというようなことで、全国的には統一的にはとれていませんけれども、そういう意味で事例的もしくは定性的なレベルでは、その被害の実態について押さえているというようなことで考えております。

【多紀座長】 ありがとうございました。

【水口委員】 今の点でちょっと。

【多紀座長】 先に、じゃあ。

【水口委員】 すみません。被害ということでもう20年ほど前だと――十数年前ですかね、これ、たしか水産庁から補助も出ていたと思いますけれども。茨城県とか山梨県の水試等で、ワカサギが今いろいろ資源的に問題があるので、ラージマウスバスの食害があるかどうかという調査を行いましたね。その中で出た結論は、それは明らかにならなかったという結論なんです。実際にはその当時、芦ノ湖では史上空前絶後のワカサギ漁獲量などというのは新聞記事にもなったりして、だけど山中湖、河口湖なんかでそれぞれ減ったりふえたりがあって、結局はわからなかったのですね。それが実情なのであって、それだけ大変だ大変だと言われたところでも、ちゃんとかどうかわからないけど、水産庁が助成をして調査をしても出なくて、証明できなかったという。やっぱりそういうのを含めてきちんと考えていかないと、ただ減っている、食害だという声で動くというのはやっぱり問題なので、そのことをちょっと。それはご存じないと思いますけれどもね。大分前の話ですから。

【多紀座長】 それでは中井さん。

【中井委員】 今、座長あるいは事務局の方からご説明のあったことにかかわるんですけれども、これから考えていかなければいけないのは、まさにこの特定外来生物という枠に定めるのか定めないのかということなわけです。まず恐らく我々の相互理解として、(特定外来生物に)定められると何がどう変わるのか、あるいは定められないとしたらどうなのかという部分、これを共通理解としてまず持っておくことが大事なんじゃないかなというふうに思うのですね。私どももどこまでそれがちゃんと理解できているかというのは心もとないんです。法律のことは苦手ですので、勘違いしているところがあるかもしれませんし 。
 私が非常に驚いたのは、滋賀県で問題になったキャッチ・アンド・リリースについてですが、基本方針の中でもちゃんとキャッチ・アンド・リリースという表現はないではなく婉曲的な表現ではありますけれど、捕獲したものをもう一度戻す行為は禁じないという形で明文化されているとか、あるいは、これはたしか説明会のときにお話になっていたと思いますが、釣りの行為そのものは禁止されない。先ほどおっしゃったような四つの行為は禁止されるけれども、現場にいる魚を釣ること自体は今回の法律の関知するところではないというようなこともあります。また、全国一律一斉に駆除が始まるわけでもないというような形で一応ご説明いただいていているわけです。まあ、実際には何が起こるかわからないという不安は、特に利用される側あるいは経済的影響を得ている方からすれば、当然あるでしょう。ものすごく心配であろう心情はよくわかります。が、指定されることによる危機感を具体的にどういうふうに抱いておられるのかなということまでは(私にはよくわかりません)。(指定されてもされなくても、実質上は)どちらでもそれほど変わらないのであれば、まず適正管理の方向で指定して、ちゃんと賢く管理していきましょうという形の話になってもいいなと思うわけです。逆の立場だから、そう気安く言えるのかもしれませんけれども、そのあたりはいかがでしょう。

【多紀座長】 今のに関連してどなたか、コメントありませんか。今の中井委員の。

【丸山委員】 すみません。直接関係ないんですけど、ちょっといいですか。
 さっきちょっとタイミングを逸してしまったのですけれども、さっきの水口さんの言い方の増えているというのはおかしいというおっしゃり方、あれに関しては中井さんは増えているとは言っていません。増えることが危ない、とおっしゃっているわけです。ですから、あの後の議論はかなり行き違っていると思います 。
 それと、先ほどのバスが減っているという話、実感として、いろいろな方からそれを聞いております。ただ、そう簡単にこれも即断できない。魚はいてもキャッチ・アンド・リリースをやり過ぎて、すれっからしになっても釣れませんので、ただ釣れないというだけでは減ったとは言いがたい。そういった面があるのと、もう一つはたとえ減ったとしても、それはつまりバスが増える前の姿に戻ったということではないということなんです。その過程で起こった変化、それが恐らくその後も引き継がれていくと、これについてまだはっきり言って余り詳しいデータはありませんけれども、川原大池でやられた、長崎でのある湖畔の仕事なんかでは、まず、ある特定の魚種をねらいうちにして食べていく。そのえさが減っていくと今度は切りかわって、次に多い食べやすいえさにかわる。その間に、もと食べられた押された魚はまた増えてくる。そういう振動を始める。だから、永遠にそれは続くのではなくて、ある減っている時期にぽんと渇水があったり、いろいろなほかの刺激があると、そこでその種がぱたんと消えてしまう。そうすると、もう一方の種の方に今度は徹底したセスジが始まって、それがどんどんレベルが下がっていく。こういうことの繰り返しなんですね。これを1回や2回、1年や2年、断片的な調査をやっただけで全体像をつかめとか、あるいはそれを全国的にやれと言うのは勝手ですけれども、だれがやるのですか、だれのお金でやるのですかと。ですから、我々はどうしても着手、我々に実行できる範囲で何をやるかと。どういうことが明らかになったら納得できるのかと 。
 先ほどの被害、この法律が施行されて何が困るのですかという話も同じなのです。もう一般論じゃなくて具体的にやっていかないと、即、前に進めないと思います。それだけです。

【多紀座長】 ありがとうございました。何と申しますか、また、これ、私見じゃなくて座長としてのコメント。生態系と言うとまた怒られちゃうので、生物群集と。動くのは当たり前でね、トランペッターの坂田さんという広島大学でミジンコをやっている人がいますね。ミジンコなんかは一番いい例で、中学校の実験室でもできる。特によそから来たものは、私なんかがそれを言うと余り信頼されないので中井さんあたりに言ってもらった方がいいのかもしれませんけれども、もちろん初めの潜伏期があって、ばっと発展期があって、それから安定期があって、それからどうなるか、衰退するかどうなのかということがあるのはもう当然のことで、それがどのレベルでとまるであろうかというようなことを考えて、指定しましょうかとか、これはどうでしょうかという、そのためにこの委員会はあるのだろうと思うのですが、幸いにして適正に管理をしようということは、皆様これ共通、その必要性は共通認識だと思うのですよ。今、だれかがおっしゃったとおり、別に釣りをやっちゃいけないというようなことではなくて、むしろ釣りの方の方々が積極的に、先ほどもおっしゃってくださいましたけど、参加してそちらができるようなことはやっていただくと。 例えば、これは話が違いますけれども、観賞魚の業界が今回かなり影響をこうむるんです。詳しいことは述べませんけど。そうすると、観賞魚の業界では既にやっているお店もありますし、これからやろうとしているのは、例えばガーパイクという大きな魚がいます。熱帯魚屋さんでちゃんと看板をつけて、「この魚は今は小さくてかわいいけど、大きくなりますので買う方は気をつけてください」とか、それから「大きくなった魚は引き受けますよ」というような、業界でもそれなりの努力をしている、また、これからその努力をふやそうという空気にあるわけですね。同じようなことが釣りの仲間のサークルでも一緒に――横文字を使って申しわけないけれども、一緒にパーティシペイトできるところがいっぱいあるのだろうと思うので、いろいろ解釈の違いとか、言葉の解釈だとか、法律の何とかというのはまた別として、このオオクチバスの小グループでは何とか、きょうすぐに結論を出せと言われてもそれはできませんけども、余りそんなに何年も時間をかけないで、何とか、何か一つの合意に達するのではないかなという、今ちょっと希望的観測を持っているところでございます。 大体時間になりましたので、事務局の方から今後の進め方等について。 高宮さん。

【高宮委員】 先ほど中井さんの方からご質問があり、それも含めて今の座長のお話もありましたので、本当にこういう会が持たれたわけですから、できるだけ現実を踏まえながら前向きなことができないかということを考えております。そのうちの1点が、もしオオクチバスが指定されたとしたらどういう問題が、特に釣りにかかわることが多いと思うのですが、次回、私どもでも整理しまして、書面で出させていただきたいなと思っています。皆さんにまたそれもごらんいただいて、あ、こんなことがあるのかと。恐らくそのうちの半分ぐらいは想定外のこともあると思いますし、逆に、指定されないとしたらどういう問題があるのかというのも同時にお尋ねをしたいと思います 。
 それと、指定される、しないにしても、先ほどから出ておりますように、生息域の拡大ということに対しては、もうこれはこれ以上広げないようにしていく事は釣り人の間でも大方のコンセンサスは得ています。希少種などの生息する地域によっては、生息数もできれば少しずつ減るような状況をつくっていきたいというふうにも思っていますし、そういうことに対して、釣り人とか日釣振とかからの提案というか、考え方についても次回、資料を添えてお話をさせていただきたいと思いますので、またそのときはよろしくお願いいたします。

【多紀座長】 ありがとうございます。そうですね、正確な情報をどうぞ入れていただいて、それに対する反応をぜひお願いをしたいと思います。
 何かこれだけは一言という方、いらっしゃいませんか。では。

【瀬能委員】 その被害があるかどうかというのは多分指定される際の大きな要因になると思いますけども、先ほどこの話の中で、結局、漁業的に重要な魚の話は少し出ていますが、我々というか多様性の保全という立場から言えば、余り一般というか皆さんには注目されていないような小さな魚、特にため池ですとか湖沼――河川というよりはどっちかというとオオクチバスの性質から言うとため池とか沼とか、小さな湖とか、そういったところのものが多分非常に影響を受けている。これは事実としてあります 。
 それがすぐに霞ヶ浦とか琵琶湖とか、大きなところだけがとかく事例として出てきますけども、現実に水域の数からいっても、受けているいろいろな希少生物の数からいっても、湖沼の数というのはとてつもない数がありますので、しかもそこでのいろいろな調査事例というのは実は結構集めていますので、これは多分もし必要であれば次回お示しできると思います 。
 その際は、先ほど経時的な変化という話がありましたが、あるところで例えば消失してしまうような、そこの地域でも絶滅してしまうような事例というのも結構な数がありますので、それはもう定量的なという話よりは、もういなくなってしまうわけですから、それは非常に重く受けとめていただきたいということを最後に申し上げたいと思います。

【丸山委員】 あと一つ、補足。

【多紀座長】 はい。

【丸山委員】 先ほど高宮さんの方から、大事な場所を指定してほしいという話があったのですけれども、それは常に問題になるのですけど、あれはどなただったかな、指定しにくい場合はいっぱいあるのですね。公表しにくいというのですね。希少種の生息地そのほかは具体的に出せないのですよ 。
 だから、今度の場合も、データとしては全部具体的に名前が入ったものを持っていますけれども、差し支えのないものだけここでは多分出すことになると思います。

【多紀座長】 はい。そういうような情報を含めまして、次回までにぜひ文書を、資料の形でもって事務局の方にいろいろとご提出を賜りたいと思います。
 それでは時間になりましたので、今後の進め方について。

【堀上補佐】 次回のこの小グループの会合ですけれども、一応あらかじめ委員の皆様の日程を伺っておりますので、12月の7日で午前10時からということで開催したいと存じます。それまでに、資料等の調整につきましては、別途事務局の方から委員の方々にさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

【多紀座長】 それでは、狭いところに2時間座りっ放しで、どうも。エコノミークラス症候群にならないようにと。  では、本日は、どうもいろいろと活発なご意見、ありがとうございました。また今後ともよろしくお願いします。ありがとうございました。