1 日時 |
平成17年7月13日(水)15時~17時 |
2 場所 |
経済産業省別館1014号会議室 |
3 出席者 |
(委員)多紀 保彦(座長)、北田 修一、櫻井 博、細谷 和海、村田 修 |
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(環境省)野生生物課長、生物多様性企画官、自然ふれあい推進室長、移入生物専門官 |
(農林水産省)水産庁生態系保全室長 |
4 議事概要 |
(事務局より資料の説明)
<特定外来生物等の選定について>
- 今回の事務局案では特定外来生物の指定候補として9種が挙げられている。前回は、オーストラリア産のマーレーコッドとゴールデンパーチも指定候補となっていたが、被害の実態が不明であること、輸入量が少ないことなどから、候補から外されている。なお、この両種はオーストラリアで絶滅が危惧されており、業界が自制して輸入しないようにするなどの対策も必要である。
- 9種を特定外来生物に選定することに異論はない。ただ、資料1-4の評価の理由の部分で、カダヤシ以外の魚種の記述がわかりにくい。観賞用や養殖用など、どのような目的で導入されるのかを、できれば記して欲しい。また、被害の概要はどれも同じように書かれており、選定する理由が理解しにくい。カダヤシ以外について、どの種が観賞魚で、どれが遊漁で利用する種なのかを教えていただきたい。
- (事務局)カダヤシ以外の種はいずれも温帯域に生息する魚食性淡水魚であるが、国内での定着はまだ確認されていない。導入や利用の実態だが、ケツギョ、コウライケツギョ、ヨーロピアンパーチ、パイクパーチ、ノーザンパイク、マスキーパイク、ヨーロッパナマズは、観賞用として一部で利用され、かつ海外では釣魚として人気種である。ストライプトバス、ホワイトバスは、観賞用としての利用はないが、釣魚として人気種である。資料1-4については、もっとわかりやすいように、表現を改めたい。なお、このような導入の状況、利用のされ方については、資料1-5の各種の個表で詳細に説明している。
- カダヤシは別にして、観賞魚としても入るし、釣りの対象としても人気があるということである。大量に入ってくると危険であろう。資料1-4の評価の理由については、より説得力があるように導入や利用の実態についても記すなど改訂を行う方向で整理していただきたい。
- 未判定外来生物についてだが、通常、科や属のレベルで指定しているのに、カダヤシだけはGambusia holbrooki1種のみを指定しているのはなぜか。
- (事務局)現在、カダヤシが輸入されることはほとんどなく、また、観賞用でカダヤシ属魚類が輸入されることも非常に少ない。世界にカダヤシ属魚類は多数いるが、その中には生態がよくわかっていないものも多数含まれており、今回は海外である程度被害知見が明らかなG. holbrookiのみを未判定外来生物としてあげた。
- 捕食による被害は目立つので知見が得やすいが、カダヤシのように種間競争による被害の実態はつかみにくいので、被害がわかっていないだけではないか。
- (事務局)資料1-1の未判定外来生物の選定作業手順にしたがった結果、カダヤシ属ではG. holbrookiの1種が該当したということである。
- カダヤシの未判定外来生物が1種のみというのは、税関の水際での実効体制まで視野に入れると妥当であると思う。
- かつてカダヤシの亜種であったG. holbrookiは、カダヤシと同様に低温耐性があり、北方にまで広く分布することができ、世界各地で被害が確認されている種である。未判定外来生物の範囲をあまり広くとるよりも、まず、この種を指定して侵入を阻む必要がある。
- ケツギョは被害をもたらすが、高級中華食材ということである。これは、相反する意味であると思われるが、このような種の扱いについて説明していただきたい。
- (事務局)高級中華食材という情報は、あくまで利用方法に関する参考情報として記述したものである。事務局としては、食材に使われていることが良いか悪いかの判断はしていない。国内で生きたまま保管されていればリスクがあるが、今のところ、そのような事実は確認していない。
- 高級食材は生きたまま輸入される可能性があるので、危険な印象を受ける。
- 活魚として輸入されているのであれば、逸出する可能性についての記載があるとよい。
<要注意外来生物リストについて>
- 前回、事務局に確認したことだが、第二次選定では「原則として生態系等に係る被害の防止を第一義的に」、特定外来生物の選定を行うということであった。ブラウントラウトについては、海外だけでなく北海道においても被害の実態があるのだから、今回、特定外来生物の指定を見送るのはおかしい。危機的な現状を鑑みれば、早急に特定外来生物に指定すべきである。遊漁の対象として人気があるとのことだが、我が国は、生物多様性条約の締約国であり、生物多様性国家戦略を実行している。このような状況下で、今後、水産庁はどのような対策を講じていくのかご説明いただきたい。
- (水産庁)水産庁は水産動植物の保護を担当しているが、新・生物多様性国家戦略において、水産動植物の保護のための移入種対策という項目がある。そこの記述によると、近年急速に生息域を拡大し、食性、再生産能力の過程から、在来生態系や水産資源に影響を与える生物種を対象として、分布拡大の防止や生息数の減少を図ることになっている。ブラウントラウトは明治時代から移植されている種である。また、被害のある北海道では、漁業調整規則で移植禁止等の対応や駆除が実施されている。一方、本州においては、水産業被害は報告されていない。水産庁としては、ブラウントラウトは利用していくという範疇で考えている。漁業者への説明等もできていない状態であり、本日、第二次で特定外来生物に指定するという結論に達するのは困難である。要注意外来生物として引き続き適否について検討することについては、水産庁としても了解している。
- 被害の防止を第一義にするという特定外来生物選定の際の考慮事項を踏まえると、ブラウントラウトは、主たる分布域が北海道でありながら、利用の100%が遊漁で、駆除に成功した例が北海道で無いなどを鑑みれば、議論の余地が無いのではないか。今回リストされた特定外来生物のどの種よりも在来生物に与えている影響は甚大と思われる。
- 5つの漁協が漁業権を持っているということであるが、漁業権の免許の期限を教えていただきたい。
- (水産庁)免許の期限は平成25年である。
- これまでの議論を踏まえ、改めてブラウントラウトの取り扱いについて各委員のご意見を伺いたい。
- ブラウントラウトを要注意外来生物リストにとどめておくのは反対であり、この場で、特定外来生物に指定すべきである。
- 被害は明示されており、早急に特定外来生物に指定すべきである。
- 被害があるのは確かだが、平成25年まで漁業権が存在するという問題もあるため、十分な議論が必要である。今後、議論の場を作っていただきたい。
- ブラウントラウトについては、早急に議論する場を作っていただくことを要望したい。魚類グループ会合としては、ブラウントラウトは特定外来生物に指定すべきという方向性だが、これは意見として述べて、あとは行政当局の判断に委ねたい。
- 資料2-2の「被害に係る一定の知見がある」と「被害に関する知見が不足しており」の区分がよく理解できない。ナイルパーチ、マーレーコッド、ゴールデンパーチ、ヨーロッパナマズ、ウォーキングキャットフィッシュ、マダラロリカリアの6種類は被害の知見は不足しているが、国内には観賞魚として入っている。これらの種とカダヤシ以外の特定外来生物との違いがわからない。定着の実績があるか、ないかで考えたうえで、どのくらい危険性があるかということで特定外来生物に指定したほうがよいのではないか。
- (事務局)特定外来生物と要注意外来生物の特性に差がないとの指摘であるが、資料1-1の手順にしたがって選定しており、定着しているかしていないかは、特定外来生物を指定する際の直接的な判断理由にはならない。定着すれば重大な被害を及ぼすおそれがあるものについても、予防的見地から特定外来生物にあげている。要注意外来生物は、はっきりとした被害がでていないものである。
- 熱帯性、あるいは寒帯性の魚種など、地域的にしか定着できない魚種については、どのように網をかけるのかという問題がある。地方自治体や県の条例で対応可能なのか。
- (事務局)地域的に被害があるということも、重大な被害に該当すると考えている。一方で、被害のない地域で大量の飼養者に厳しい規制がかかる場合や規制による遺棄のおそれの問題がある場合などがあるので、慎重に考えなければならない。
- 日本の気候は冷温帯から亜熱帯まであり、それぞれ生物相が異なるため、日本全体をカバーできる外来生物はいない。地域的な被害しかないものでも、指定しなくてはならない。
- (事務局)被害をどう判断するかという問題だが、事務局としては被害に係る知見が不足していると判断したものを要注意外来生物リストにあげている。今回、要注意外来生物の候補のうち、沖縄に定着している種の現状について琉球大学の立原先生にご教示いただいたところ、グッピー以外では被害の実態が十分にわかっていないようである。なお、普及啓発の資料のなかでは、熱帯魚全般に関わる配慮事項として、沖縄等の定着しやすい地域では絶対に遺棄を行うべきではないなどの注意喚起が必要であるという整理をしている。
- 沖縄だけで問題があって、その他の地域で問題がないような種については、この法律で対処できないということなのか。
- (事務局)地域的にしか定着できない種を指定しないということではなく、グッピーのように指定することによってさまざまな課題や問題が発生するものについては、慎重に検討すべきということである。
- 法制的には地域個体群的な考えはないようだ。沖縄や北海道などで、しかるべき対策がとられるのであれば、全国で網をかけなくてもいいのかも知れない。
- ブラウントラウトは、現在は北海道でとどまっているから、様子をみるというのはおかしい。ただし、地域性をみることになると、国内移動のことを考える必要が出てくる。この場合に、対外国という視点をもつ法律の主旨に合致するのかという判断は難しい。
- 外来魚問題に係る社会的な情勢を考えたとき、社会的な背景の最大の問題点は遊漁にある。今回、特定外来生物に指定するカダヤシ以外の種は外国の遊漁対象種でもある。現状ではペットとして輸入されているが、我が国の釣り人はそれを導入することを標榜してはばからない。いろんな外来種の影響があるものの、結果的には魚食魚によるリスクが大きいという視点があげられる。
- 要注意外来生物は知見の有無で分けられており、定着実績の有無に関してではない。要注意外来生物のカテゴリーについて、リスクを考慮して分けていただけたらわかりやすいのではないか。
- (事務局)リスクの意味がわれわれの考えているものと違うかもしれないが、生態系等に対して重大な被害を及ぼしているのか、また、その可能性があるのか、ということを考えている。要注意外来生物リストの(1)がそれに該当する。
- 被害の知見の有無ではなくて、知見がなくてもリスクが大きいから、要注意外来生物にリストしているのではないのか。
- (事務局)今回、特定外来生物に指定する生物については、国内で定着あるいは被害という知見がなくても、海外において知見があるものという整理である。
- 何を根拠に評価の理由を決めているのかわかりにくいので、そこがわかりやすくなるよう、整理していただきたい。
- (事務局)資料1-4について、評価の理由のところで、被害に関わる知見とそのおそれ等を、もう少しわかりやすく理解できるよう工夫をしたい。
<その他>
- 今後の宿題だが、ガーパイク類の国内を含めた繁殖状況、レイクトラウトの海外における実状などの情報を収集して欲しい。インターネットの情報によれば、兵庫県で、スポテッドガーについては、幼魚が捕れているということである。繁殖という視点を前面に出すのであれば、ますます注意しなくてはならない。レイクトラウトについては、アメリカのイエローストーンにおいて、厳重な法的な規制があるはずである。
- ガー、アミアといった魚種は、参考資料3の日本魚類学会からの要望書の中にも入っており、遺棄事例がかなりある。ただ、繁殖事例が少ないので、今後は資料などを集めていただきたい。
- 栽培漁業に関連するが、病気、疾病の観点からも指定していただきたい。外国からの魚類の防疫についての情報を収集していただきたい。
- (環境省)輸入されたものが在来のものに影響を与えるおそれがあるということであれば、特定外来生物の指定の理由になりうる。事務局でも、そういった事例があるかどうか調べていきたい。
- (水産庁)外国の魚類の疾病については、水産資源保護法と持続的養殖生産確保法関連で、指定をするという制度はある。
- 要注意外来生物の中でタイリクスズキだけが海産の養殖魚であるが、この種については、一部定着が認められている。外国から入れてまで養殖するのはどうか。これを防疫の問題と関連して考えていただきたい。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)