1 日時 |
平成17年5月27日(金)10時~12時 |
2 場所 |
環境省第1会議室 |
3 出席者 |
(委員)多紀 保彦(座長)、北田 修一、櫻井 博、細谷 和海
(村田 修委員は欠席) |
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(環境省)野生生物課長、生物多様性企画官、自然ふれあい推進室長、移入生物専門官 |
(農林水産省)水産庁生態系保全室長 |
4 議事概要 |
(事務局より資料を用いて説明)
〔第二次以降の特定外来生物等の選定の作業手順について〕
- 資料3に「他法令による輸入の規制があっても国内における流通の規制がない等の生物のうち」とあるが、流通の規制がない以外にどのようなものを想定しているのか。
- (事務局)念頭にあるのは植物防疫法等で、輸入規制は存在するが国内に入った後の規制は分からない部分がある。そのようなものが対象になるかどうかを検討していきたい。
- 資料3の選定の際の考慮事項に「生態系等に係る被害の防止を第一義に」、「特定外来生物の指定に伴う社会的・経済的影響も考慮し」とあるが、第1次選定の時はこの辺のバランスがほぼ無視されていた。第二次選定では是非とも「生態系等に係る被害の防止を第一義に」を遵守してもらいたい。
- (事務局)第二次選定ではしっかりやっていきたいと思う。
〔第二次選定に際しての留意点と進め方について〕
- 資料5に「観賞用は知見が十分でないものがある」とあるが、鑑賞用以外にも分類学的に知見が十分でないものがある。選定にあたって学名が-sp.となるもの扱いはどうなるのか。
- (事務局)種名が確定しないものについては選定対象にしづらい。ただ、一つの属すべてを指定するということならその属が明解になっていればよい。
- 学名がついていないものは対象にならないというのは、選定にあたって予防的な視点を重視するスタンスと矛盾するのではないか。和名をもって一つの対象にするとしないと先に進まない。
- (事務局)輸入規制の際に和名では相手国側が種を特定することができない。学名上の問題はあるが、相手国側に学名で示すことは少なくとも我が国の義務である。
- 学名がなければ実態をとらえようがないのはわかる。しかし、タイリクスズキはラテン語で種小名がついていないが、別種であることはNakabo ed. (2000)などの英語の文献で明示されており、相手国側に説明はつく。学名がなくてもなんらかの形で対応できる以上は、是非とも考慮してもらいたい。
- 一つの種が分類学上の整理で2種に分けられる場合、片方はもともとの学名を引き継ぐが、もう片方は未記載種になってしまう。種として記載されていなくても十分にそのグループが認識されているものについては、学名がついているものと同じ扱いにするべき。
- 今の議論はある特定の種を入れたいからではない。分類は変遷する可能性があり、大きな問題を持っているからである。その点を留意してもらいたい。
- (事務局)学名がついていないものについて技術的な問題がありうると申しただけで、検討の俎上にあげないわけではない。個別に生態系等の被害についてはこの会合で検討していただきたいと考えている。
- 資料6に「野外に遺棄されやすい性質」とあるが、その中に「容易に繁殖する」という文を追加してもらいたい。
- (事務局)追加したい。
〔第二次選定の検討対象種について〕
- 〈細谷委員の主な意見〉
- (第1カテゴリー、選定作業が必要と考えられる生物について)
- ストライプトバスとホワイトバスの交雑種であるサンシャインバスの取り扱いについて視野に入れてもらいたい。飼育品種も外来種と同じような位置付けにする必要がある。
- 生態的特性、社会・経済的ニーズ、地域性をふまえて見ると、カダヤシとそれ以外で大きく二つに分けることができる。カダヤシ以外はすべて釣りの対象魚である。
- カダヤシ以外の「第二次の特定外来生物の選定作業が必要と考えられる外来生物」を整理すると、グレード1(ケツギョ、コウライケツギョ)、グレード2(ストライプトバス、ホワイトバス、ヨーロピアンパーチ、パイクパーチ、ノーザンパイク、マスキーパイク)、グレード3(マーレーコッド、ゴールデンパーチ)の3つに分けてとらえることができるように思う。
グレード1にあげたものは、中国や韓国原産で分布が日本に近接しており、文献等でも被害の可能性が指摘されており、早急に選定すべき。
グレード2にあげたものは、ヨーロッパや北米原産で、海外での被害事例もあり、イギリス、ニュージーランド等で規制されていることを考えると選定は妥当である。
グレード3にあげたマーレーコッドは絶滅危惧種、ゴールデンパーチは危急種となっており、オーストラリア産で日本から離れていることを考えると日本での被害の可能性は低い。これらはその希少性によって環境省があげた第3カテゴリーに戻してもいいと思う。
- (第2カテゴリー、指定の適否につき検討する外来生物について)
- ブラウントラウト、カワマス、ニジマスについては注目に値するところで、場合によっては第1カテゴリーに入れたほうがいいかとは思う。とりわけブラウントラウトは近年の分布拡大、被害の状況を考えると第二次指定に入れるべきだと思う。また、カワマスとニジマスでは、カワマスの方が緊急性が高い。
- 〈櫻井委員の主な意見〉
- レッドリストに入っている種でも他の場所へ移されると危ない種がある。危ないものについては選定対象に残しておくべきである。
- マーレーコッドとゴールデンパーチが入っているのであれば、他にもたくさんリストに入るのではないか。
- 国内移入種ではあるが、コイの取り扱いについてはどうなるか。コイは危険な生物で、移植により、植物、底生動物、魚に被害を及ぼしている可能性がある。
- オオタナゴは環境省があげた第3カテゴリーに入っているが、第二次選定の対象にすべきではないか。
- 〈北田委員の主な意見〉
- 第1カテゴリーでは、カダヤシ以外はすべて定着実績がないが予防的な観点で入れている。そう考えると第3カテゴリーにあるナイルパーチ、ヨーロッパナマズ、ウォーキングキャットフィッシュは第1カテゴリーに入るのではないか。
- 定着したものが検討対象種に入っており、それについてどう扱っていくのかがこれからの課題であるが、今回は無理だと思う。
- 日本の栽培魚について、同種であっても地域個体群では遺伝的特性が違うことがあること、閉鎖個体群に長年放流すると遺伝子頻度がかわることがわかってきている。それをふまえ予防的な観点で考えると、タイリクスズキはもっと上にあげて検討の対象とすべき。
- 水産業に関係があるニジマス、カワマスなどはベネフィットがあって人間が導入したものだが、そのためのリスクやコストと予防的観点から比較しなければいけない。
- 観賞魚、遊漁、養殖等は一部の人のベネフィットであり、そのために他方面にリスクをかけるのはどうか。定着の可能性がある観賞魚は第一カテゴリーに入れてもよいかも知れない。
- 第2カテゴリーについては上げていく方向のものもあるが、慎重に議論すべき。
- 〈その他〉
- カダヤシに関する情報に世界各地では土着のメダカ類を駆逐とあるが、メダカ類とするのではなく、正確に種名を明記するべき。
- 外来生物の問題に関して水産庁の基本的な考え方を伺いたい。
- (水産庁)水産庁は環境に配慮をしながら漁業を振興していく立場で、現実的に漁業に利用されているものは、利用実態等を把握したうえで、環境省と協力して慎重に検討していきたいと考えている。
- ブラウントラウトは水産上の重要種となっているのか。
- (水産庁)本州で5件の漁業権が設定されている。しかし、北海道では被害が報告され、内水面漁業調整規則により移植が禁止されており、駆除につとめている。全国的な外来生物の指定については慎重な検討が必要であると考えている。
- ブラウントラウトは、ブラックバスと同じような問題を引き起こしている点で、ミニブラックバスなのではないかと思っている。釣魚として人気が高く、密放流で分布が拡大し、在来魚種に被害を与えているという現実がある。北海道に分布が限られているから選定しないということになると、北海道から沖縄まで分布する種以外は指定しないという理由にされてしまう可能性がある。ブラウントラウトについては優先的に議論する必要がある。
- ブラウントラウトとニジマスについて経済的な効果を教えてほしい。
- (水産庁)ニジマスについては養殖生産というデータで、平成14年で9861トン、養殖生産額48億円という数値があり、漁業権設定が国内で288件の設定がされている。ブラウントラウトについては養殖生産を数値として把握していない。漁業権設定については国内で5件の設定がされている。
- 他の水系に移らないようにするにはどうしたらいいかなど、防除に対する見通しのようなものを将来的に見せてもらいたい。
- IUCNのリストにはコイが外来種としてあげられているが、コイは日本在来のものであり、誤解のないようにお願いしたい。
- (事務局)IUCNのリストは世界の侵略的外来種ということで日本の在来生物も含んであげているが、日本でコイが在来生物ということは認識しており、今回の検討対象ではない。
- カラドジョウはかなり野外で確認されているようだが、対象にはしないのか。
- (事務局)次回までに情報を整理する。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)