1 日時 |
平成17年1月21日14時~16時 |
2 場所 |
経済産業省別館10階1028会議室 |
3 出席者 |
(委員)多紀 保彦(座長)、北田 修一、細谷 和海、村田 修、櫻井 博 |
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(環境省)自然環境局長、審議官、野生生物課長、生物多様性企画官、野生生物課課長補佐 |
(農林水産省)水産庁生態系保全室長、水産庁沿岸沖合課課長補佐 |
4 議事概要 |
(事務局より資料を用いて説明し、質疑応答。)
(委員からの主な意見)
〔特定外来生物等の選定について〕
- 前回会合では、予防的な観点から文献に基づき資料を作ってきたが、現実的な状況を考えて再考したところ、特定外来生物候補の7種のうち、カムルチー、タイワンドジョウ、ノーザンパイク、ヨーロッパオオナマズについては、現状では特定外来生物に指定する科学的根拠が薄いと考えられる。これら4種を除いたコクチバス、ブルーギル、チャネルキャットフィッシュを特定外来生物に指定すべきだ。
- 自然環境保全基礎調査によると、カムルチー、タイワンドジョウは、日本各地で分布が確認されているが、最近では量的に多く採集されることはほとんどない。両種によって在来生物相が大きな影響を受けたという事例も報告されていない。したがって、今回の指定は見合わせるべきだが、引き続き動向を把握するためには要注意外来生物にしておく必要がある。
- ヨーロッパオオナマズは、イギリスやスペインに定着し、釣り魚としても人気がある魚種だ。高次捕食者であるが、生態系への被害事例は確認されておらず、今回、特定外来生物に指定するのは望ましくない。ただし、鑑賞用として輸入されているため、要注意外来生物にしておくのが妥当だ。
- ノーザンパイクは、アメリカ等で生態系への被害事例があるが、日本に定着し生態系へ被害を及ぼすかどうかを、現状の知見のみで判断するのは難しい。予防原則という点に配慮すれば指定も想定されるものの、現段階では時期尚早の感があり、要注意外来生物とし知見の蓄積に努めるべきである。
- 4種を外すことについては全く同感だ。第1陣では、文献で被害事例が記されていることを選定基準の一つとしたが、文献で記されていたとしても被害実態が不明なものもある。科学的知見の信憑性について判断するのが学識経験者の役割であることを指摘しておきたい。
- ハワイではホームアクアリウムの魚が定着している。沖縄などでは、そのような魚の定着も確認されている。第1陣では、全国に広域分布できるような種が選定の対象になっているような印象を受ける。今後、熱帯魚についても検討する必要があろう。
- 前回、安全を見て特定外来生物は多いほうがよいとしたが、現状で充分な科学的根拠のない4種を外すことには納得できる。在来種に多少とも影響を及ぼす可能性のある外来生物は全て規制すべきとの立場もあるが、それは現実的ではない。
- 特定外来生物、未判定外来生物について、今日の会合で削除等の意見があった部分は、修正して全体会合に上げるということでよろしいか。
- (一同了承)
- 今回、特定外来生物候補から外した4種は、限りなく特定外来生物に近い種であり、それらを法律の枠外である要注意外来生物とするのは少し気懸かりだ。
- 要注意外来生物は、今後も検討を要するという意味だと認識している。本会合としても継続してトレースしていく種であり、特定外来生物候補から外れた4種を要注意外来生物とするのは妥当だと考える。
- 要注意外来生物とされているタイリクバラタナゴやカダヤシは、生態系被害に関する科学的知見があり、特定外来生物へ指定することも想定された。ただし、両種は国内に広く定着しており、現時点での特定外来生物への指定は有効な対策を実施できない点で現実味がない。対策の方向性を見極めるためには、要注意外来生物にして普及啓発に努め、さらなる科学的知見の集積を行なうことが望ましい。
- (事務局)平成15年度実施の水産庁の専門家委員会では、海面養殖で利用される魚類のなかで、ただちに対策が必要との指摘がある種はなかったが、タイリクスズキについては逸出した場合の危険性が指摘されていた。今回の要注意外来生物リストにタイリクスズキが掲載されていることは、海面養殖の事業者の周知を図りたい。
- 要注意外来生物の案は本日提示されたものであり、今後も種を追加する時間的余裕はあるか。要注意外来生物の選定には、文献で影響の可能性が指摘されていることが必要とのことだが、著者自身の気まぐれでそのような記述をすることもある。文献での指摘がない種についても、影響の可能性を示す専門家の科学的所見によって選定することはできないか。
- (事務局)要注意外来生物の変更についてご意見があれば、近日中に座長または事務局にご連絡いただきたい。種の追加については、文献等による指摘、あるいは専門家の科学的所見を添付することをお願いしたい。要注意外来生物リストについては、他の分類群とも選定基準の擦り合わせを行なった上で、月末の全体会合に提出する。
〔オオクチバスの取り扱いについて〕
- 資料2-1の結論は妥当なところに落ち着いていると考える。半年が長いか短いかの判断は難しいが、すぐに実行に移せないのが現状であり、半年の猶予期間は理解できる。ただし、指定を前提とし、半年という期限を決めておいた方がいい。特定外来生物になった場合に、漁業権のある芦ノ湖等4湖については、漁業権の更新がなされる平成25年まで待たなくてはならないが、他の水域については順次駆除をすべきである。オオクチバスは、ある程度の数に管理できないから問題なのであって、全面的に駆除を行うことが望ましい。すぐに指定できるなら、その方がいいと考えるが。
- 現在46都道府県で移植禁止が行われているが、現在も分布が拡大しており、規制はあってないようなものだ。資料2-1は、まさに苦渋の選択だと思う。半年間はバス釣り愛好者が納得するのに必要な期間であるならば理解はできる。本来ならば明日にでも指定すべきである。ただし、今指定しても実効性がないのであれば、半年間程度の冷却期間ととらえる方がよい。
- 小グループの結論は甚だ疑問であり、全く納得できない。その理由は、生態系被害の科学的知見について正当な評価がほとんどないためと、特定外来生物への指定を前提としない議論が続いていたためである。先般、水産庁がゾーニング案をまとめられなかった経緯があるが、何の産業も背負っていない環境省がゾーニング案に類似の案をまとめられるとは思えない。半年でケースタディをまとめることは不可能であり、この提案は実効性がない絵に描いたもちである。研究者としての倫理観からも、このような提案は理解しがたい。
- 日本での被害実態は極めて深刻であり、オオクチバスの指定はあらゆる意味で緊急だ。遺伝学的にも、栄養学的にも密放流は明らかだ。道路の周辺で定着している事例が多いことは、人為の関与が甚だしいことを物語っている。絶滅危惧種のゼニタナゴについては、オオクチバス等の外来魚の影響が大きいことが指摘されている。このような危機的事態をみると、一刻も早く特定外来生物に指定し、監視していくことがこの法律の意図するところだと考える。
- 国外的な意味でも、早急に指定すべきである。オオクチバスは日本から韓国、中国、タイへと密かに輸出されているが、輸出国は責任を問われることになる。本邦が東アジアの環境先進国を自負するのであれば、指定を急がなくてはならない。世界生物多様性戦略の中でも、外来種対策は必須であり、その国の文化国家としての程度を照らすツールであることを認識すべきである。
- 「半年を目途に」と記されているが、一刻も早く指定すべきというのが率直な意見である。
〔その他〕
- 第1陣の選定だけでなく、今後の選定作業においても、本会合を継続的に運営していただきたい。
- (事務局)未判定外来生物に係る届出が提出された場合に判定が必要となることから、その際にはこの会合でご意見をいただくこととなる。また、要注意外来生物についても情報を収集し、引き続き検討をお願いしていくこととなると考えている。
- 最近の管理釣り場では、要注意外来生物リストに含まれている種に加えて、アカメの仲間やピラルクなど、様々な魚種が利用されている。危険と思われる種もかなり入っており、どのような種が利用されているか、はっきりと把握しておくことが必要だ。管理釣り場は、河川や湖沼そのものを区切って使っているものと、人工的な池を作りしっかりと管理してものの2つがあり、前者については逸出が心配である。
- 管理釣り場の例もそうだが、大切なのは業者の自浄努力だと考える。
- 本法は外来種を対象にしている点で画期的だ。種に絞り、対処療法に加えて、予防的措置も入っているが、個別対応になっている。水産で放流を行なっている魚は私物だが、それ以外の資源は無主物となる。個人のため池にいる魚は個人の所有物になるのだろうか。無主物であっても国民の財産であれば、しっかりとした管理が必要になるのではないか。
- (事務局)漁業法では、釣り堀等については全く扱っていない。ため池も漁業法の管理の対象外である。
- (事務局)にわかにお答えできないが、公的水面は無主物。獣であれば鳥獣法で管理できるが、現状の法の枠組みでは、個人のため池の魚まで管理できていないと思われる。
- 無主物であっても国民の財産であり重要という視点は、まさに生物多様性保全の視点だ。オオクチバスの対策については伊豆沼で成果が出始めており、その過程で在来種保全の機運が高まりつつあるようだ。外来種対策は裏を返せば在来種を守ることであり、例えゴールが遠くても対策を継続すべきである。バス対策を通して里山の保全を考えていくことができる。バス対策は、河川清掃とも合わせ、子供だけでなく大人にとっても本当の意味での環境教育の場となりうる。また、都市住民にとっては貴重な野外体験になる。バス駆除のポジティブな面も正確にとらえていく必要がある。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)