1.日時
平成28年3月15日(火)13時30分~15時40分
2.場所
経済産業省別館 1107号会議室(11F)
3.出席者
- (委員)
- 村上 興正(座長)、岡 敏弘、角野 康郎、芝池 博幸、成島 悦雄、長谷川 雅美、風呂田 利夫、細谷 和海、森本 信生(敬称略、座長以外は50音順)
- (環境省)
- 自然環境局長、大臣官房審議官、 自然環境局野生生物課長、外来生物対策室長、外来生物対策室長補佐、外来生物対策係長
- (農林水産省)
- 大臣官房政策課環境政策室長補佐、水産庁増殖推進部漁場資源課長補佐
4.議事概要
〔今回指定の考え方について〕
(1)今回指定の考え方について
(事務局から資料1に基づき説明)
- 分類群によって「普及啓発」「適正飼養」が書かれているものといないものがあるのは意図的なのか。
(事務局)ペット等として飼養される種類が多い魚類、爬虫類、植物については書いているが、両生類に関しては、今回、定着予防外来種をほぼ全て特定外来生物に指定することになるため、少し書き分けをしている。
(2)特定外来生物等の選定について
<爬虫類・両生類>
(事務局から資料2、資料3、資料4に基づき説明)
- グループ会合では、特にハナガメについて重点的に議論した。ハナガメを、今後のアカミミガメやクサガメへの対応検討に向けた試金石と位置づけて、指定後の遺棄防止、継続飼育への対応をきめ細かく行う必要性について議論した。また、業界が意図的に交雑個体を作って流通させることも想定されることから、交雑種についても予防的に指定した。カエル類については、事前に導入を防止するという視点である。スウィンホーキノボリトカゲは、現在の小個体群の段階で根絶させ、根絶の実績づくりにつなげるべきとの議論であった。
- (参考資料4p1、参考資料5p1)明治元年以降に導入された生物が選定対象、という部分に関して。一つは、「導入」「輸入」「侵入」「持ち込み」等の言葉の整理がされているか。「導入」は意図的な行為という気がするが、「非意図的導入」とはどういうものか。もう一つ、「明治以降に導入された」の後ろに「あるいは侵入した」と追加するほうが良いのでは。
- ハナガメの輸入量、流通量、飼育数等が分かれば教えてほしい。
(事務局)カメの輸入量は、カメ類全体としての量しか把握されていない。中国からはクサガメ、スッポンが混成しているため、ハナガメだけの数は不明。
- 特定外来生物に指定されれば、飼養等許可の登録数から飼育個体数は把握できるのではないか。
- 飼育者が100%登録するという保証が無いと認識している。ハナガメは規制対象のカメという意識のない飼育者が多数いるという現実を踏まえて、指定後のフォローや事前の飼育個体数の推定が必要である。
- ハナガメの合法的な飼養の許可条件を明確に決めておくべき。条件が厳しいと許可を取らない飼育者が出る恐れもあるが、登録が必要であることは周知徹底しなければいけない。
(事務局)ペットショップ等での周知など申請率を高める仕組みが必要だと考えている。
- まず輸入を止めるという点ではハナガメの指定は評価できるが、犬猫と違って引き取り体制が出来ていないことが問題。引き取りについての議論はどのようになっているのか。
- 引き取るという方向よりも、飼い続けることで遺棄を防ぐ流れの強化が大事だという議論であった。
- カメのように長寿の動物を飼う場合の体制整備は、動物愛護管理法との関係も含めて今後の検討課題の一つである。
- 当専門家会合として、ハナガメ等の爬虫類2種類、ジョンストンコヤスガエル等の両生類4種類を、資料4の「評価の理由」に基づき、生態系に係る被害を及ぼすおそれがある生物として、特定外来生物に指定するべきとの結論でよろしいか。
(一同了承)
<魚類>
(事務局から資料2、資料3、資料4に基づき説明)
- グループ会合ではこれらの候補には全て指定に値し、早急に対応すべきとの結論であった。ただし、ガー科をいきなり指定することはかえって遺棄を促進するおそれがあることから、業界とも連携を取りながら平成30年4月からの規制とするのは妥当。ガー科は耐寒性のある種からやや熱帯性の種まであり、後者はホットスポットである南西諸島に入れば生物多様性に相当な影響を与えることから、予防原理からガー科全種を指定するのは妥当な判断。ナイルパーチも同様で、南西諸島に入れば定着するおそれがある。タナゴ類は一般的に識別が難しいとされるが、オオタナゴについては1種を除いて他のタナゴとの識別は容易で、混獲による釣りへの影響や混乱のおそれはない。また漁業権対象魚であるが、霞ヶ浦のタナゴ類のほとんどは本種とカネヒラ(国内移入)であり、在来種の混獲はほとんどなく、漁業的な対応はそれほど難しくない。オオタナゴに唯一類似している種は絶滅危惧種のイタセンパラであり、オオタナゴが箱根以西にまで分布を拡大すればこれらの在来タナゴ類を壊滅させる恐れがあり、なんとしても阻止しなければならない。またヒレイケチョウガイ等への産卵を通じた拡大可能性もあるため、水産庁とも連携し漁業関係者への普及啓発や資料作りが必要である。
- ガー科は、規制猶予の2年間でかなり有効な手が打てるということか。
飼育者には思い入れもあると思われるので、啓発を徹底すれば手続きして飼育継続されるのではないか。
(事務局)業界と連携して普及啓発を進めていく。現在も販売されており、流通量を減らしていくことも踏まえると2年間が必要ではないかと考えている。
- 逆に、猶予期間を設けたことで、この期間に飼育者が増えないか。
(事務局)想定されることだが、以前は大きくなることを説明せず販売されていて遺棄が生じた面もある。業界でも最近は大きくなることをきちんと説明して販売するようになっている。
- ガーは40~50cmになると遺棄されるようだ。飼養者に殺処分させることは難しいので、小さいうちに対処するよう促し、引き取った後で処分することも考えた方がよい。2年間の間に遺棄されることがないよう、対策のスケジュールをしっかり立てることが重要。
(事務局)ガーに限らず、飼養者が捨てないということが浸透することが最大の未然防止である。今回の指定は一部の業界にとっては痛みとなるだろうが、今後、こういったことが起きないようにするためにできることを話していく必要がある。
- アクアリウムは自然を身近に感じられる大事なものである。今後、熱帯魚等が家で飼えないということにならないよう、業界とも歩調を合わせて啓発を進めていくべきタイミングだと考える。
- 業者にも理解のある良質な業者とそうでないところがある。ガーは人気のある種類のため、安易に飼養許可を出すようなことは、少し考えた方がよいのではないか。
- この2年間が単なる引き延ばしにならないよう、規制の細目や手続きをスケジュールしておく必要がある。飼いきれない個体の回収システムをペットショップにお願いすることも提案できればと思う。
- 2年間の猶予期間中に申請の受付は行うのか。
(事務局)手続きが可能となるのは、平成30年2月からの予定。
- これから飼う人に対しては、ショップを通じて説明ができるが、すでに飼っている人に対してどうするか。有効な戦略が異なるので考えて頂きたい。
- ガー科の指定はほぼ決まっているので、先行してペットショップ等で購入者リストを作ってもらうことを検討できないか。
(事務局)顧客を把握しているショップもあると思われるので、業界とも相談したい。
- 業界との窓口はできているか。
(事務局)観賞魚に関しては、日本観賞魚振興事業協同組合が窓口になる。その他にも、各種雑誌に広告を掲載してもらうことなども検討したい。
- 当専門家会合として、ブラウンブルヘッド等の12種類を、資料4の「評価の理由」に基づき、生態系に係る被害を及ぼすおそれがある生物として、特定外来生物に指定するべきとの結論としたい。
(一同了承)
<植物>
(事務局から資料2、資料3、資料4に基づき説明)
- グループ会合では4種の指定について合意が得られた。侵入予防外来種のビーチグラスは、入った場合の被害が大きいと考えられるため予防的に指定すべきとした。植物では特定外来生物に指定されていない緊急対策外来種が2種あるが、このうちアメリカハマグルマについては、行政面で指定の実効性が得られ難いため今回は見送ることとし、ツルヒヨドリのみの指定とした。ナガエモウセンゴケ、エフクレタヌキモはいずれも食虫植物で、野外への意図的な植栽や遺棄が無視できない状況にある。他の分類群にも共通するが、ペット飼育や観賞植物栽培についてのルールやモラルにも踏み込んだ普及啓発が求められ、警鐘の意味を含めた指定である。
- ツルヒヨドリの侵入地がホットスポットの南西諸島であるが、西表島に侵入した経緯や繁殖の状況を教えてほしい。アレロパシーの在来種への影響はどうか。
- 導入の経緯は不明。意図的か非意図的かも分からないが、特に観賞用に栽培されているものではない。近年非常に広がり、増殖速度をみると、今手を打たなければ手遅れになると思われる。アレロパシーによって西表島に多数ある絶滅危惧種を絶滅に至らしめるおそれもあることから、早急な対策が必要。
-
湿地に食虫植物を植える人の目的は何か。
- 自分の庭と混同しているのだろう。マニアの中には色々な食虫植物を野外に植えて楽しんでいる人がいる。業者が販売用に植えて増やしている場合もある。危惧しているのは、外来生物問題に対する世間の関心が高まっていることへの反発からの確信犯の可能性もあることだ。そういう意味でもしっかりした対応に出る必要がある。
- 管理できる場所で外来種を飼育栽培するのは構わないが、自然環境に出すことが問題。どの段階で問題になるのか、なぜ問題なのかを、啓発する必要がある。
- 飼養生物と野生生物の混同が根本的な問題としてある。長期的に、子どもの頃からの教育が必要である。
- 当専門家会合として、ビーチグラス等の4種類を、資料4の「評価の理由」に基づき、生態系に係る被害を及ぼすおそれがある生物として、特定外来生物に指定するべきとの結論としたい。
(一同了承)
(3)今後の指定等の進め方について
(事務局から資料6にもとづき説明)
- 今の進め方は、業者等の当事者に対するものが中心となっているが、日本国内での外来種問題に対する社会的関心はまだまだ低く、一般への周知活動が弱い。在来種のホットスポットをモデル地域に選定して具体的に活動することで一般社会の関心が高まり、そういう社会の目があることで、業者や飼養者も規範がつくられていく。具体的行動の成果の「見える化」と、そこから得られた情報の科学的整理が必要。
- 全国の防除の成功事例をインターネットで紹介し、検索できるとよい。
- 特定の種類の外来生物だけでなく、地域全体の生物群集に対応するようなプロジェクトを支援してほしい。
- 対策情報のデータベースを環境省で構築して誰でも見られるようになるとよい。外来種対策は関係者だけが知っている状況になっている。
- 事例については、まずは委員から情報を提供してもらうとよい。
- 国内での二次拡大の問題を痛感している。ホットスポットである西表島は観光客がイヌやネコを連れて渡ることも多いが、猫ウィルスの感染なども考えられる。国外からの侵入だけでなく、生物多様性の視点から国内における二次感染についても目を向け普及啓発やチェックを徹底し、場合によっては何らかの規制も必要。
- 侵入経路の特定と、それに対する業界等への啓発、侵入経路の遮断が必要。実態把握のための調査も必要だろう。
(4)その他
事務局から今後のスケジュールについて説明。
(特に議論無し。)