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講演会等

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第1回エコツーリズム推進オリエンテーション

○日程:平成17年2月23日〜24日

○場所:中央合同庁舎第5号館低層棟 講堂他

○主催:環境省

○プログラム

1日目(2/23)

  • 13:30 開会式
  • 14:00 各モデル地区からの取り組み状況発表
    類型1【豊かな自然の中での取り組み】
    知床地区/白神地区/小笠原地区/屋久島地区
    類型2【多くの来訪者が訪れる観光地での取り組み】
    裏磐梯地区/富士山北麓地区/六甲地区/佐世保地区
    類型3【里地里山の身近な自然,地域の産業や生活文化を活用した取り組み】
    田尻地区/飯能・名栗地区/飯田地区/湖西地区/南紀・熊野地区
  • 17:00 エコツーリズム推進方策についての説明
  • 18:00 交流会

2日目(2/24)

  • 10:00 分科会1(パネルディスカッション)
    • テーマ(1)観光利用のルール・制度について
    • テーマ(2)エコツアー商品づくり・販売について
    • テーマ(3)地元住民との連携について
  • 13:00 分科会2(パネルディスカッション)
    • テーマ(1)人材育成について
    • テーマ(2)外部組織や研究機関との連携について
    • テーマ(3)推進組織や地域コーディネーターについて
  • 15:00 全体総括
  • (15:15〜) 第2回エコツーリズム関係府省連絡会議
  • 16:00 閉会式
(写真) オリエンテーション開会式

オリエンテーション開会式
2月23日から24日にかけて、東京都内にて「第1回エコツーリズム推進オリエンテーション」が開催されました。モデル地区のエコツーリズム推進関係者など全国から165名が参加して、各地区のモデル事業の進捗状況の報告や、エコツーリズム推進の現場で起きている課題などについて議論をしました。

第1回エコツーリズム推進オリエンテーションの開催の様子

1.各モデル地区からの取り組み状況発表

類型1【豊かな自然の中での取り組み】

■発表者
知床地区:(財)知床財団(支援機関) 普及事業係 坂部 皆子
白神地区:(財)日本交通公社(支援機関) 研究調査部 鈴木 晴江
小笠原地区:小笠原村産業観光課 杉本 重治
屋久島地区:(株)メッツ研究所(支援機関) 角田 理江

■コメンテーター:(株)ピッキオワイルドライフリサーチセンター 代表取締役社長 南 正人

■進行:(財)日本交通公社 市場調査室長 寺崎 竜雄

類型1は、「豊かな自然の中での取り組み」というカテゴリーでした。発表したのは、知床地区(坂部:(財)知床財団)、白神地区(鈴木:(財)日本交通公社)、小笠原地区(杉本:小笠原村)、屋久島地区(角田:株式会社メッツ研究所)の4地区でした。(かっこ内は発表者、敬称は略しています)

知床地区では、推進協議会の立ち上げ、ワーキンググループにおいて滞在型モデルツアーの企画や観光と地域産業の連携についての検討、ガイド技術講習会を行いました。今後は、地域住民への広報の充実や地域産業と観光の両立を図りながら、通過型から滞在型への転換とそれを支える地域体制の確立を目指します。

白神地区では、推進協議会を立ち上げたほか、キックオフシンポジウムを開催し、ガイドセミナーや地元の人にもエコツアーに参加してもらうなどエコツーリズムの気運の醸成を図りました。また、西目屋村では資源調査も行っています。次年度は、地元提案型や食に着目したモデルツアーの実施、ガイドの養成に力を入れる予定です。

小笠原村はすでにエコツーリズムの実施と保全のルール策定に取り組んできた地域です。今年度は情報交換やネットワーク構築のための視察(知床地区と屋久島地区)、より幅広い関係者で構成される新組織の設立のための調整などを行いました。今後は、地元行政が話し合いの場を意識的に提供していきながら、それぞれの利害の調整を図っていきます。

屋久島では平成15年度に環境省の事業でエコツーリズムに取り組んでおり、今年度は地元主導への転換が図られ推進協議会が設立されました。また地元の方が関わりやすいところから取り組み、同協議会にガイド認定登録制度とモデルツアー開発についての作業部会を設置し検討を行っています。来年度以降はルール作りや基本計画の策定の検討へ取り組む予定です。

このカテゴリーの4地区は、それぞれが世界的に見ても豊かで貴重な自然を有する地区となっています。ただそれだけに、資源の利用とリンクされた高度な資源の維持管理システムの構築が不可欠であり、そこには観光産業だけでなく農林漁業など地域全体を取り込んでいくことが求められます。この地域におけるエコツーリズムの取組みは、保全と利用という古くて新しい課題に対する処方箋のモデルの一つとなるのではないでしょうか。

写真・文:(財)日本交通公社

(写真) 各モデル地区からの取り組み状況発表(1) (写真) 各モデル地区からの取り組み状況発表(2)

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類型2【多くの来訪者が訪れる観光地での取り組み】

■発表者
裏磐梯地区:NPO法人日本エコツーリズム協会(支援機関) 海津 ゆりえ
佐世保地区:佐世保市経済部観光課 中島 大幸
六甲地区:神戸市生活文化観光局観光・国際部 観光交流課 宮道 成彦
富士山北麓地区:山梨県観光部観光資源課 川元 修

■コメンテーター:NPO法人ホールアース研究所 代表理事 広瀬 敏通

■進行:NPO法人日本エコツーリズム協会 理事 海津 ゆりえ

この類型2は「多くの来訪者が訪れる観光地での取り組み」というカテゴリーでした。発表したのは裏磐梯地区、佐世保地区、六甲地区、富士山北麓地区の4モデル地区で、いずれも日本を代表する観光地でした。冒頭に、NPOホールアース研究所代表理事で、今回のコメンテーターを努める広瀬氏が「これらの地域は現在多くの課題を抱えているが、それについての評価はしない。この場の目的は結論を出すことではなく、ディスカッションを通じて繋がりをつくろう」発言したのを受けて、和やかな雰囲気の中で活発な議論が行われました。

最初の発表は裏磐梯地区で、発表者はこの場の進行役でもあるNPO法人日本エコツーリズム協会理事 海津 ゆりえ氏でした。裏磐梯地区は既に取り組み2年目ということで、他地区より進んだ状況にあり、すでにプログラム作りや推進協議会設立などを年度内に終了する予定です。次年度はエコツーリズムカレッジと情報提供を核にして体制作りと基本計画の策定をめざし前進します。

佐世保地区の発表は佐世保市経済部観光課の中島 大幸氏でした。佐世保地区にはハウステンボスという巨大観光施設があり、そのイメージが強烈ですが、西海国立公園の自然、海軍基地としての歴史、伝統産業など、エコツーリズム資源が豊富にあることをアピール。住民の参加を得ながら取り組みたい、という姿勢で臨んでいます。

六甲地区の発表は神戸市役所生活文化観光局の宮道 成彦氏でした。関西地区のレクリエーションの場として親しまれ、また有馬温泉があることでも有名な六甲地区ですが、阪神淡路大震災以降来訪者が急減したことに加え、マイカーでの来訪者が増え、環境に負荷をかけていることが問題になっていました。今年度実施した事業の1つとしてエコファミリー制度を披露し、公共交通機関乗車数増加をはじめ、さまざまな効果があったことが報告されました。

最後は、富士山北麓地区で、発表は山梨県観光部の川元修氏でした。観光客数年間2000万人という世界的観光地ならでは苦労があり、マスのエコ化というテーマに向けた取り組みを発表しました。特に県が策定したガイドラインについては、更に適用範囲を広げたいという意向を示し、観光と環境を調和させるためのルール作りの必要性を訴えました。

写真・文:(財)日本交通公社

(写真) 各モデル地区からの取り組み状況発表(3)

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類型3【里地里山の身近な自然,地域の産業や生活文化を活用した取り組み】

■発表者
田尻地区:田尻町商工観光室 西澤 誠弘
飯能・名栗地区:飯能市環境緑水課 馬場 定男
飯田地区:NPO法人ふるさと南信州緑の基金 伊澤 宏爾
湖西地区:滋賀県湖西地域振興局 総務振興部地域振興課 古田 剛
南紀・熊野地区(三重県):紀南振興プロデューサー 橋川 史宏
南紀・熊野地区:和歌山県環境生活部環境政策局 環境生活総務課 岡 淳

■コメンテーター:東京大学大学院農学生命科学研究科教授 下村 彰男

■コーディネーター:(財)日本交通公社 理事 小林 英俊

類型3は、「里地里山の身近な自然、地域の産業や生活文化を活用した取り組み」というカテゴリーでした。発表したのは、田尻地区、飯能・名栗地区、飯田地区、湖西地区、南紀・熊野地区(三重県)、南紀・熊野地区(和歌山県)の5地区から6件の発表でした。

宮城県の田尻地区では田尻町商工観光室の西澤誠弘氏の発表でした。田尻町の蕪栗沼(かぶくりぬま)に最大で6万羽のマガン(天然記念物)が冬に飛来することで有名で、マガンの生息環境改善のために沼の周囲の田に冬に積極的に水を張る「冬水田んぼ」という取り組みを行なっており、地元の一番の産業である農業と環境保全の具体的連携を進めています。
埼玉県の飯能・名栗地区では飯能市環境緑水課の馬場定男氏の発表でした。今回のモデル地区の中では一番東京に近く、都心から電車で1時間で来ることが可能で、都市近郊のエコツーリズムがどうあるべきかという意味で興味深い地区です。エコツーリズムの取り組みは始めたばかりで、まずは10の基本方針を策定して事業を進めています。

長野県の飯田地区ではNPO法人ふるさと南信州緑の基金の伊澤宏爾氏の発表でした。5地区の中では一番進んでおり、南信観光開発公社というコーディネイト組織がすでにあり、積極的に学校団体の受入れを進めていますが、エコツーリズムを通じて質の高い地域づくりを目指しているという哲学もはっきり持っています。

滋賀県の湖西地区では滋賀県湖西地域振興局の古川泰次氏を初めとする3名による発表でした。湖西地区は平成14年度より独自の「森と里と湖のミュージアム構想」に基づき、さまざまな小さな取り組みをバランス良く進めています。モデル事業で目指す地区の姿は「湖西発『心かよわせ、夢を楽しむ』エコツーリズム」です。

南紀・熊野地区では三重県と和歌山県にまだがっており、両県が別々に発表しました。三重県側は紀南振興プロデューサーの橋川史宏氏の発表でした。三重県の南紀・熊野地区では地域コーディネーターである橋川氏が、理念をわかりやすい言葉で地域の人たちと共有しようとしており、理念に近づくことを目標に、理念・人材育成・広報を3本柱として進めています。

和歌山県の南紀・熊野地区は和歌山県環境政策局の岡淳氏の発表でした。和歌山県としては「ほんまもん体験」と名付けた体験型観光プログラムを進めていますが、和歌山県の南紀・熊野地区にふさわしいエコツーリズムの理念作りはまだこれからという段階です。

コメンテーターの下村彰男先生(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)からは、このカテゴリーの5地区の共通の課題として、エコツーリズムは情報を付加する観光であるので、地域の特徴や個性をどのように打ち出していくかということや、3ヵ年の事業をやった後に次の離陸のための足場ができるかどうかが重要で、そのためには3ヵ年終わった段階で地域をコーディネイトする組織または人材が確実にできることを目指すことや、産業界の参画が弱いことにどう対応していけばいいかなどの発言がありました。

写真・文:(財)日本交通公社

(写真) 各モデル地区からの取り組み状況発表(4) (写真) 各モデル地区からの取り組み状況発表(5)

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2.分科会1

テーマ1 観光利用のルール・制度について

■発表者
小笠原地区:小笠原村産業観光課 杉本 重治
屋久島地区:(株)メッツ研究所(支援機関) 角田 理江
富士山北麓地区:山梨県観光部観光資源課 川元 修

■コメンテーター:(株)ピッキオワイルドライフリサーチセンター 代表取締役社長 南 正人

■進行:(財)日本交通公社 市場調査室長 寺崎 竜雄

分科会「観光利用のルール・制度について」では、小笠原地区、屋久島地区、富士山北麓地区からの発表とテーマについてのディスカッションがなされました。

小笠原地区からは、10あるルールについての策定経緯や策定状況について、4つの論点から報告がありました。小笠原のエコツーリズムはルールづくりからはじまったこと、小笠原では貴重な動植物を守るといった必要性がありルールは制定されたこと、自主ルールと要綱によるルールにはそれぞれメリットデメリットがあること、そして小笠原に会う制度とは、ガイドの質の保証、入場の許認可、安全性の確保をそなえた、ガイド制度をからめた包括的な仕組みであるとの考え方が提示されました。

屋久島地区からは、現在検討中のガイド認定登録制度について、検討の枠組みと進捗状況が紹介されました。制度の作業部会をたちあげ既に10回の検討を行っているが、対立軸があり遅々と進まない様子を伝え、ガイド制度制定にいたる利害調整の難しさを浮き彫りにしました。

富士山北麓地区からは、平成16年7月から施行されている青木ヶ原樹海等エコツアーガイドラインの策定経過と策定内容についての報告がありました。特に、策定の留意点として、わかりづらい表現は避け解釈上の余地を残さないこと、実効性の確保を図ること、フォローアップの仕組みづくりをどうするかをあげ、今後はモニタリングシステムを構築していくという方向性を示しました。

3地区ともに利害調整に苦労しており、できることならばルール制定は利害関係が発生する前に行うのが良いとの確認ができたと思います。小笠原では、事業を始める前にルールの先行事例を関係者が一緒に見に行き、こういうものなんだなと理解するところからはじめたというのが印象的でした。今、地域の実情に応じたルールづくりが求められていますが、ルールの遵守や資源の担保を考える際、制度といった強い方法で枠をはめることも必要ではないかといったことが示唆された分科会でした。

写真・文:(財)日本交通公社

(写真) 分科会1(1)

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テーマ2 エコツアー商品づくり・販売について

■パネリスト
飯田地区:飯田市エコツーリズム推進室 竹前 雅夫
田尻地区:(財)生態系協会(支援機関) 遠藤 立
飯能・名栗地区:(財)日本生態系協会(支援機関) 城戸 基秀

■コメンテーター:NPO法人ホールアース研究所 代表理事 広瀬敏通

■コーディネーター:NPO法人日本エコツーリズム協会 理事 海津ゆりえ

この分科会のテーマは「エコツアー商品づくり・販売について」で、コメンテーターはNPOホールアース研究所代表理事 広瀬 敏通氏、コーディネーターはNPO法人日本エコツーリズム協会理事 海津 ゆりえ氏が務めました。「皆がヒントを持ち帰ろう」ということで、話がしやすいように、イスを円形に並べるなどの工夫がなされました。

はじめに現状の報告ということで、飯田地区、田尻地区、飯能・名栗地区から発表があり、次にディスカッションという流れで行われました。
ディスカッションでは、既に200ものプログラムがある、という飯田市に対してどのようにして増やしたのか、という質問が出されました。それに対し飯田市の竹前氏は、地域に資源などたくさんある、大切なのはそれに付加価値をつけることだが、プログラム作りを楽しむ感じで進めればいいのではないか、とアドバイスしました。

モニターツアー及びその参加者に関する質問では、モニターツアーだからといって安くしてはいけない、本番のつもりで臨む必要がある、との意見が出され、それを受けて広瀬氏が沖縄と南アルプスの事例を紹介、ボランティアベースからの脱却を訴えました。

マーケットの個人旅行化の流れに話が及ぶと、飯能地区の城戸氏はそれ以前にまず販売のための中核的な組織作りを、また田尻地区の遠藤氏は一度来てもらった人に何度も来てもらう工夫をすべき、という考えを示しました。
最後に、旅行会社との関係について、飯田地区の竹前氏が、エコツーリズムを理解しない旅行会社は外し、旅行会社をセレクトしよう、あるいは旅館、ホテルに直販させよう、という意見を述べると、旅行業協会から旅行会社の努力と反省、相互理解の重要性を訴える意見が出されました。

写真・文:(財)日本交通公社

(写真) 分科会1(2)

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テーマ3 地元住民との連携について

■パネリスト
裏磐梯地区:環境省北関東事務所 千葉康人、裏磐梯ビジターセンターセンター 伊藤延廣、北塩原村観光政策課 高橋 淳
六甲地区:神戸市生活文化観光局観光・国際部 観光交流課 宮道 成彦
湖西地区:滋賀県湖西地域振興局 総務振興部地域振興課 古田 剛、高島市企画部企画調整課 森田茂之

■コメンテーター:東京大学大学院農学生命科学研究科教授 下村 彰男

■進行:(財)日本交通公社 理事 小林 英俊

24日午前中の講堂では「地元住民との連携について」をテーマとしてディスカッションが行われました。

まず、裏磐梯地区からは、推進の鍵としてまず概念を浸透させることが重要で、そのためには目に見える成果を示すことが重要であるとの報告がなされました。また、推進に当たっては関係者間の相互理解を促進することが必要であることから、推進体制の構築に当たっては、ゆるやかな連合で結びつけることを目指すとの方向性も提示されました。それに対して、コメンテーターの下村氏からは、地域の人材の得意分野を見極めた上で働いてもらい、成果を目に見える形にする事が重要であるとのコメントを頂きました。

次に、六甲地区からは、まずは行政が主体となって取り組みを進め、今後成功体験を積み重ねて住民に分かり易い形で巻き込むために、まずは実践し、その中から理解してもらうという方向性が示されました。コメンテーターの下村氏からは、六甲地区では域内と域外という図式ではなく訪れる人の多くが実は周辺の市民であるということから、いかに住民に関わってもらいながら地域運営していけるかが重要であるとの意見を頂きました。

最後に、湖西地区からは、ホームページや情報紙の制作といった情報発信に当たって、地域のサポーターの協力を得ている取り組みや、先行して実施されているエコツアーの実施に当たって地元のNPOの協力を得ている事例などが紹介されました。コメンテーターからは、まずはキーパーソンを抽出した上で、鍵になりそうな人や特技を持っている人をリストアップし、役割を明確にすることが重要であるとのコメントを頂きました。ある時期で行政が手を引くのは難しく、継続して何らかの形でサポートは必要になるといった意見を頂きました。

3地区の報告では、地域の人材の得意分野を見極め、適材適所で協力を得ることにより、ゆるやかな連携の中で目に見える形で成果を示していくことが重要であるとの点で一致していたと思います。

写真・文:(財)日本交通公社

(写真) 分科会1(3)

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3.分科会2

テーマ1 人材育成について

■パネリスト
屋久島地区:屋久島環境文化財団 日高健
白神地区:秋田県藤里町 櫻田博、 青森県西目屋村 西澤一司

■コメンテーター:NPO法人ホールアース研究所 代表理事 広瀬敏通

■コーディネーター:NPO法人日本エコツーリズム協会 理事 海津ゆりえ

分科会テーマ「人材育成について」では、予定されていた南紀・熊野地区は急遽テーマ「推進組織とコーディネーター」に移ったため、屋久島地区、白神地区からの2地区の発表とテーマについてのディスカッションがなされました。

屋久島地区からは、屋久島環境文化財団で開催した「屋久島ガイドセミナー」の実施までの道のり、実施内容と目指すところの発表がなされました。企画段階では1年かけて関係者へのヒアリングを実施し、ガイドの要望を取り入れた協同の企画であるとしたことが内容の特徴であり、屋久島で生きるガイドとしての視点を大事にしたとのことでした。また、ガイド間での交流会をあえて設定したことが予想以上に効果があったとの成果報告がなされ、制度問題で揺れている屋久島の今後に明るい光をあてる内容となりました。

白神地区からは、財団法人藤里町物産協会で行ったガイド養成事業についての説明がなされました。ガイド養成を行いたいと考えた際、まず予算と事業主体が大きな問題になったという報告がありました。結局2年間のみ緊急雇用事業で養成は実施し、合計14名のガイドが誕生したとのことですが、その後は新たな養成は行っていないとのことでした。ガイド養成事業を一過性のものに終わらせない為に、継続できる新たな枠組みを作る必要性を認識しており、来年に向け検討を行っていくという方向性が示されました。

2地区の場合、全く異なる背景のもとに行われた人材育成ですが、2・3日程度で行うものではなくて、じっくり時間をかけて行っていく必要性を共通で確認ができました。また、発表後のディスカッションでは、各地のガイドからも簡単な活動報告等がなされ、地域で活動しているガイドの考え方や様子が伝わった分科会にもなりました。コメンテーターの広瀬氏からは、ガイドの社会的評価を高めていくことは、エコツーリズムに関わっている人の責務である、との人材養成が必要であることを語る強いコメントがありました。

写真・文:(財)日本交通公社

(写真) 分科会2

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テーマ2 外部組織や研究機関との連携について

■パネリスト
佐世保地区:佐世保市経済部観光課 蓮田 尚
小笠原地区:小笠原エコツーリズム推進委員会 佐藤 文彦
知床地区:斜里町環境保全課 村田 良介

■コメンテーター:(株)ピッキオワイルドライフリサーチセンター 代表取締役社長 南 正人

■コーディネーター:(財)日本交通公社 市場調査室長 寺崎竜雄

この分科会のテーマは、「外部組織や研究機関との連携について」で、発表したのは佐世保地区(蓮田:佐世保市)、小笠原地区(佐藤:小笠原エコツーリズム推進委員会)、知床地区(村田:斜里町役場)の3地区でした。(かっこ内は発表者、敬称は略しています)

まず佐世保地区からは、外部組織や研究機関との連携が乏しい中、住民が積極的に関わって進めてきた調査の紹介がありました。今後は佐世保に惚れ込んでくれる人との連携を進めていくということです。また、生業としてのガイド業の成立可能性や地元の調査アレルギーを課題として挙げ、海域における船の重要性についても指摘がありました。

小笠原地区からは、外部の機関と連携しながら研究を行い、ガイドラインや自主ルールの制定、ガイドツアーへの活用といった事例などが紹介されました。ただし、現状では個々の連携にとどまっていることから、全体的な方向性を打ち出せる機関の必要性への言及もありました。またその理想像として、小笠原の自然と文化は観光事業者と研究者双方にとって経営資源であるという発想のもと、観光事業者はツアーの販売から得られた利益を、研究者は研究成果から得られた知識をそれぞれ還元して、保全やルールの策定に活かしていくモデルについても紹介がありました。

知床地区からは、エゾシカ保護管理計画や利用の適正化方策である「知床ルール」の検討などの様子のほか、地域のコーディネーターであるとともに調査研究を自然解説や野生動物対策などに活かしている(財)知床財団の紹介がありました。この組織は、研究成果を保全と観光利用へと活かしている点や運営面において最も優れている組織の一つではとの寺崎氏のコメントがありました。
また、コメンテーターの南氏からは民間企業として調査研究を解説活動に生かしている様子の紹介があり、行政からのバックアップのない地域において民間企業の果たせる役割と、利用者がモニタリングしているためブレーキをかける機関が存在しないことの危険性についても指摘がありました。

最後に分科会の締めくくりとして、寺崎氏から分科会の中では出てこなかったが組織の運営のための資金の流れも重要な視点であることが指摘され閉会となりました。

写真・文:(財)日本交通公社

(写真) 外部組織や研究機関との連携について(1) (写真) 外部組織や研究機関との連携について(2)

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テーマ3 推進組織や地域コーディネーターについて

■パネリスト
南紀・熊野地区:和歌山県環境生活部環境政策局 環境生活総務課 岡 淳、紀南振興プロデューサー 橋川 史宏
飯田地区:飯田市エコツーリズム推進室 竹前 雅夫
裏磐梯地区:北塩原村観光政策課 高橋 淳

■コメンテーター/進行:(財)日本交通公社 理事 小林 英俊

24日午後の講堂では「推進組織や地域コーディネーターについて」をテーマとしてディスカッションが行われました。

まず、南紀・熊野地区(和歌山県)の報告では、急遽テーマ(1)の会場から三重県地域振興プロデューサーの橋本氏をお呼びし、経験に即したお話を伺いました。同氏からは、地域コーディネーターの役割として、リーダーシップを発揮しながら住民をサポートすること、夢を与えるとともに安心を与えること、大義を示すとともにゴールも示すこと、客観的立場と主観的立場を使い分けることといったいくつかの考え方が示されました。また、アイデアや知恵は一般市民の生活文化の中にあり、地域コーディネーターはあくまで現場主義であるべきと意見も頂きました。これに対して、コーディネーターの小林氏からは、理念として目指す方向をはっきりさせた上で、そこからストーリーを展開することの重要性が指摘されました。

次に飯田地区からは、推進組織としての南信州観光公社についてその設立の経緯と活動内容が報告されました。その中では、まず連携を前提として進めるのではなく、まずは気が付いた所から事業を始めるべきであるとの意見や、観光と農政といった行政の異なる担当部署間が連携することの重要性が指摘されました。さらに、行政と観光公社や観光協会といった推進組織の間でも適切な役割分担をすることによってエコツーリズムを推進していくことが重要であるとの意見も提出されました。

最後に裏磐梯地区からは、地域コーディネーターについては、指名してお願いするキーパーソンと積極的に育てていく人とがいるのではないかとの意見が提示されました。

地域コーディネーターはあくまで現場主義であるべきで、地域との対話の中から物語を発掘するべきであるという意見や、推進組織と行政との連携のみならず、行政内部でも適切に役割分担するべきであるとの意見が印象に残りました。

写真・文:(財)日本交通公社

(写真) 推進組織や地域コーディネーターについて
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