1.我が国の環境関連産業が担う人類史的役割
世界人口が大幅に増加する中、このままでは、21世紀には、地球の資源はますます乏しくなり、環境は汚れてしまおう。環境の悪化に伴い、難民の発生、資源を巡る諸国間の経済的な軋轢、政治的な紛争などが生じるものと懸念される。人類の生き残りのためには、このような事態を招いてはならない。これまでの人間の活動の在り方を見直し、地球の環境と共生し得るものに改革すべく、各国の政府も産業も国民も、それぞれに努力しなければならない。 特に、我が国は、資源に乏しく、海外から資源を輸入し、それを海外の人々のニーズに応える製品やサービスに加工し、輸出して、国の存続や発展を図っているが、こうした我が国にとっては、世界の経済の平和と健全な発展は死活的に重要であり、地球環境の保全は我が国の国益に直結する。 この場合、環境の保全に必要な製品・機器、技術やサービスを供給するのは産業部門であって、その果たすべき役割は大きいが、特に我が国が世界経済の中で占める前述のような位置に照らせば、我が国の産業が、国内で培った経験やノウハウを生かし、海外に対し環境保全に役立つ製品や技術、サービスを積極的に供給することが強く期待される。我が国が産業分野でこのような役割を果たすことは、世界の環境保全のニーズが極めて大きなものと想定されることから、我が国が世界経済の中でリーダーの位置を引き続き占めていくことにも貢献しよう。 また、我が国は、国内において大気や水質の汚染、廃棄物問題などの環境問題を抱えており、地球環境に対しても相当大きな負荷を与えている。これらの問題の解決のためにも、産業部門が果たすべき役割は大きい。国内市場で、我が国産業が環境保全に役立つ製品・機器、技術やサービスを供給する力を持つことは、世界市場で我が国産業が同様の供給を行う上での不可欠の基礎ともなる。 |
2.環境関連産業振興のための基本的考え方と分野共通的施策
今日我々が直面する環境問題は、地球温暖化から身近な一般廃棄物の問題まで、いずれも、日常の当り前の、極めて多数の活動の影響が累積して発生している。今日の環境問題の解決のためには、環境基本計画において明示されているとおり、経済社会システム全体の改革が必要である。経済構造改革と環境保全とは不即不離の関係にあり、今回の経済構造改革プログラムの実行は、環境への負荷の少ない持続可能な経済への転換を実現する絶好の機会となる。また、環境への負荷の少ない持続可能な経済が実現されればもちろん、それへの転換の過程においても、産業部門には今日とは異なる新たな、しかも大きなビジネスチャンスが生じる。このビジネスチャンスを我が国産業界が積極的に受け止め、活用することにより、持続可能な新しい経済への転換は一層容易になるものと期待される。 そこで、環境行政の各分野に共通する施策として、以下のとおり、(1)経済構造改革の前提となる市場競争のルールを環境保全に資するように整え、環境保全の需要を顕在化させることを前提にしつつ、併せて、(2)環境保全関連の産業活動が発展していく上での障害を軽減することとし、これらを車の両輪として、経済構造改革を進めることとする。
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