環境省
VOLUME.76
2020年4月・5月号

課題解決ストーリー エコ・サクセス

エコに取り組み、目標を達成した
サクセスストーリーを紹介します

Vol.12 天栄米栽培研究会

有機栽培などによる環境に配慮した米作りを続けている、福島県天栄村の「天栄米栽培研究会」。
安全安心でおいしい天栄米は、昨年世界最大規模のコンクールで10回目の金賞に輝きました。

【課題】米の価格は下がる一方。農家が生き残るためには…

START!
どこにでもある米では闘えない

 福島県の南部に位置する天栄村では、自然の恵みを活かした農業が長年産業の中心を担ってきた。しかし、2000年代に米の流通自由化によって米価が下落。危機感を感じた村内の農家が、「どこにでもある米ではこれからは闘っていけない」との思いから味を重視した米を作ろうと考え、2008年2月、天栄米栽培研究会が発足した。

START!

中山間地域の自然豊かな環境で実る天栄米。炊きたてはもちろん、冷めてからもおいしいのが特長だ

PROCESS
最初は手作業で除草

 発足当初から取り組んでいるのが、漢方の煎じかすと有機肥料を使った無農薬の「漢方環境農法栽培」。除草剤を使わないため、最初の2年は手作業で雑草を取り除くのに苦労したそう。除草機を導入して負担を軽減し、さらに「漢方環境農法栽培を続けるうちに土の質が変わり、雑草も減ってきました」と天栄米栽培研究会の斑目義雄会長。おいしい米を作る努力が土壌にも好影響を与えている。

PROCESS

雑草が生えるのを防ぐため、水を張った田の上に紙を敷き、その上から田植えをする「紙マルチ栽培」を取り入れている

GOAL!!!
風評被害を乗り越え、世界一の天栄米に

 天栄米は2008年、米の食味や品質を競う世界最大級の大会「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」で初めて最高部門の金賞に輝き、その後も連続して金賞を受賞。11年3月、東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故が発生したが、村が農地の放射性物質の除去にいち早く取り組み、その年も金賞を受賞することができた。

 斑目会長は「原発事故後は目の前が真っ暗になりましたが、金賞が大きな励みになりました。風評被害を払拭するため、今も会員が各地に出向いて安全であることを伝えています」と語る。

 手間をかけて栽培された天栄米は、おいしい米として年々知名度も高まり、昨年のコンクールでは10回目の金賞受賞という快挙も達成した。
「世界一の米を生産している自負を持ち、今後も自信を持って活動していきたいですね」と斑目会長。安全でおいしく、環境にもやさしい米作りに、これからも実直に取り組んでいく。

GOAL!!! おいしさにこだわり、世界一の「天栄米」が生まれました

天栄米の10a(アール)当たりの収量は、通常栽培の6割程度。「世界一おいしいお米」との評価が浸透し、毎年売れ行きは好調だそう。社会的な評価が向上したことで研究会の会員の意欲や栽培技術も年々向上している

SUCCESS HINT!

毎月勉強会を開き品質を向上・均一化

発足以来、毎月欠かさず勉強会を開き、栽培に関する話し合いを重ねて品質の向上と均一化を図っている。「意見がぶつかってもみんなで答えを出し、田植え前には全員が同じ方向を向いています」と斑目会長。会員が気持ちをひとつにしてブランド力を維持している。

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