環境省
VOLUME.74
2019年12月・2020年1月号

特集 :「地域循環共生圏」のつくり方。OUR CHALLENGE01

AMAホールディングス株式会社/隠岐の離島が取り組む持続可能な地域づくり

島根県隠岐諸島の一つ海士(あま)町では、官民連携によって発足したAMAホールディングスが母体となり、環境・経済・社会の好循環に取り組んでいます。

日本海、島根半島の沖合およそ60kmに浮かぶ隠岐諸島。その一つ、中ノ島に海士町はある。面積33km²の小さな島に約2,300人の町民が暮らす。海に囲まれた豊かな自然環境を有する一方、人口流出や町民の高齢化などにより、地域づくりを引っ張る人材の不足や地域内経済循環の低さが課題になっていた。官民連携によって2018年に設立されたAMAホールディングスでは、海士町を「島まるごと株式会社」と捉え、地域資源と地域資本を見つめ直しながら、外貨獲得や地域内経済循環の向上を図ろうと考えている。こうした町の目指すべき方向性が、「地域循環共生圏」の打ち出す考え方とも重なった。

 「AMAホールディングスを母体に、官民の連携によって海士町の環境・経済・社会の好循環を図ることで持続可能な地域づくりを目指します」 そう語るのはAMAホールディングス株式会社取締役の阿部裕志さん。具体的には、電子通貨・共感コミュニティ通貨eumo(ユーモ)の実証実験や島一体による人材採用、「海士町地域資本白書」づくりなどを通して、島の環境・経済・社会に関わる「地域資本の見える化」に着手している。

 「海士町では、『ないものはない』というスローガンを掲げて持続可能な地域づくりに取り組んできました。都会のような便利さはないけれど、人が生きていく上で必要なものは、すべてここにある。この言葉には、そうした意味が込められています。地域循環共生圏を活用しながら、守るべきものと変えていくべきものを見据え、官と民、地元とよそ者、島内と島外などの壁を越え、多様なプレーヤーが気持ちを一つにして『しゃばる(海士弁で引っ張るの意)』島づくりの体制を確立していきたい」と阿部さんは語る。海士町の人口の約2割は島外からの移住者。阿部さんも11年前に移住し、地域づくりや人材育成に尽力してきた1人だ。外部からの視点も取り入れた多様な地域づくり。小さな島の試みは、全国の地域の大きなヒントになりそうだ。

未来の担い手となる島の小・中・高生が描いた2030年の海士町の未来予想図

未来の担い手となる島の小・中・高生が描いた2030年の海士町の未来予想図

海外研修でブータンに訪れた海士町の高校生。島にある高校では、国際的な視野を持ち、地域社会に貢献できる人材を育てるため、グローバル研修にも力を入れている

海外研修でブータンを訪れた海士町の高校生。島の高校では、国際的な視野を持ち、地域社会に貢献できる人材を育てるため、グローバル研修にも力を入れている

MESSAGE「地域づくりも人材育成も短距離走ではなく長距離走。ポジティブな気持ちで持続することが大切です。」AMAホールディングス 株式会社取締役/株式会社風と土と 代表取締役社長 阿部裕志さん

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