環境省
VOLUME.74
2019年12月・2020年1月号

地域循環共生圏を知ろう!

「地域循環共生圏」とは、地域が持つ資源を持続可能な形で
最大限に活用しながら、それらを地域間で補完し合うことで、
人口減少や高齢化などの課題を解決しながら新たな成長につなげていこう
というビジョンです。その背景や成り立ち、目指すべき姿を見ていきましょう。

新たな日本の環境施策として提示

地域循環共生圏の概念図 2018年4月、今後約5年間の日本の環境施策の方向性を定める「第五次環境基本計画」が閣議決定されました。このなかで、「地域循環共生圏」という考え方が提示されています。地域循環共生圏とは、地域資源を活用しながら環境・経済・社会の統合的な向上を図りつつ、脱炭素社会の実現を目指すもの。これは、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」や同じ年にCOP21で採択された「パリ協定」など、環境に関する国際動向も踏まえた課題解決の考え方といえるでしょう。

 日本各地の多様な地域資源をフル活用し、他の地域との有機的な連携も図りながら地域の抱えるさまざまな課題解決につなげていく地域循環共生圏の創造は、いわば「地域版SDGs」。持続可能性と経済成長を両立させる新たな地域づくりの仕組みとして、全国で取り組みが始まっています。

 2019年、環境省では各地域の地域循環共生圏形成に資するネットワークの構築を開始し、環境で地方を元気にしていくとともに、持続可能な社会の構築を目指しています。

地域循環共生圏の概念図

「地域循環共生圏」を進める6つのポイント

POINT1 再生可能エネルギーの活用

再生可能エネルギーの活用

太陽光、風力、水力、地熱などをエネルギー源とする再生可能エネルギーは、地域の気候風土や自然条件に帰属するため、導入のポテンシャルは都市圏より地方圏のほうが高くなります。現在、エネルギーを地産地消する地方公共団体が増加しています。

POINT2 循環資源の活用

循環資源の活用

家畜のふん尿、食品廃棄物、下水汚泥、プラスチックなど、生産によって出される廃棄物も重要な地域資源です。廃棄物を正しく処理・循環させることでエネルギーとして活用する動きも広まっています。廃棄物処理施設を「地域のエネルギーセンター」として位置づけ、新たな雇用創出や地域活性化が期待されています。

POINT3 自然資源の活用

自然資源の活用

森里川海のつながりが生む豊かな自然の恵みを地域資源として捉え直す動きが各地で始まっています。特に農林水産業や観光業の分野では、これらの自然資源を最大限に活用した新たな産業の創出や地域のブランド化など、さまざまな広がりを見せています。

POINT4 地域のつながり

地域のつながり

人口減少や高齢化が進む地方圏では、さまざまな主体が連携し、地域の自然資源、人材、資金などを有効活用して活性化につなげていくことが重要です。さらに、その恩恵を受けている都市圏も地方圏とのつながりを意識しながら、お互いに社会的・経済的な持続可能性を探る必要があります。

POINT5 ライフスタイルの転換

ライフスタイルの転換

地域循環共生圏の創造には、私たち一人ひとりの意識やライフスタイルを転換していくことが重要になります。豊かな森里川海の恵みによって私たちの生活が支えられていることを意識しながら、それらに関わる「人」を支え、つなげていくことも大切です。

POINT6 ESG金融への取り組み

ESG金融への取り組み

環境・社会・企業統治などを考慮した投融資として世界で注目されている「ESG金融」は、持続可能な社会や経済づくりに欠かせない仕組みです。地域循環共生圏と持続可能な社会の創出のためにも、投資家や金融機関、企業、地方自治体、国などの連携によるESG金融への取り組みが期待されています。

イラスト/ナカオテッペイ

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