環境省
VOLUME.64
2018年4月・5月号

challenge! わたしたちのエコ宣言

2030年度までに、温室効果ガス26%削減(2013年度比)という目標を掲げた日本。目標の実現には、企業やNPOなど、あらゆる主体の協力が欠かせません。

ここでは、さまざまな企業・NPO・学校等が描く未来と、それを実現するための取り組みを紹介します。

FROM:COMPANY <株式会社竹中工務店> 効率的にエネルギーをマネジメントする脱炭素モデルタウンの構築/環境エンジニアリング本部エネルギーソリューション企画グループ長 中村慎さん

FROM:COMPANY <株式会社竹中工務店> 効率的にエネルギーをマネジメントする脱炭素モデルタウンの構築/環境エンジニアリング本部エネルギーソリューション企画グループ長 中村慎さん

竹中工務店が東京本店ビルと近隣の2つのビルで進める「竹中脱炭素モデルタウン」への技術実証。
同社が開発したエネルギーマネジメントシステム「I.SEM(アイセム)」と水素エネルギーを活用し、
効率的に複数の建物のエネルギーを制御する実験が進んでいる。

3棟のビルはクラウド上でつながれ、電力需要の予測、運転計画の最適化を行い、発電量などをI.SEMがリアルタイムで制御している

▲ 3棟のビルのエネルギー情報はクラウド上でつながれ、電力需要の予測、運転計画の最適化を行い、発電量などをI.SEMがリアルタイムで制御している

3棟のビルを1棟のように管理し、エネルギーを効率的にコントロール

 「竹中脱炭素モデルタウン」を想定して実証実験をするのは、東京都江東区新砂エリアにある同社の東京本店ビル、東陽町インテスビル、TAK新砂ビルの3棟。それぞれのビルには発電機、太陽光発電、蓄電池などのエネルギーデバイスがあり、発電や蓄電は、I.SEMによる3棟の電力需要の予測、最適運転計画にしたがってリアルタイムで制御。3棟を1棟の建物のようにマネジメントし、エネルギーの需要から消費までを効率的にコントロールしている。
 使われている発電機は、ビルに元々設置されていたもの。「分散して設置された発電機や蓄電池をI.SEMにつないで有効活用できました」と中村さん。単体ではエネルギーマネジメントを導入しにくい中小規模のビルも、既にある設備をI.SEMのようなシステムにつなぐことで、CO2排出量削減やランニングコストの抑制が可能になるという。

複数電源からの電気を効率よく管理

TAK新砂ビルに設置されたI.SEM。多様な発電デバイスで作られる直流の電気を効率よく統合制御して、I.SEMのパワーコンディショナーで交流に変換し、照明や空調に利用する。電源が複数あっても電気の変換が一度で済むため、エネルギーのロスが少ない。

▲ TAK新砂ビルに設置されたI.SEM。多様な発電デバイスで作られる直流の電気を効率よく統合制御して、I.SEMのパワーコンディショナーで交流に変換し、照明や空調に利用する。電源が複数あっても電気の変換が一度で済むため、エネルギーのロスが少ない。

水素エネルギーを建物内で上手に利用する方法を提案

 さらにTAK新砂ビルでは、水素の製造、貯蔵から利用までのシステムを構築し、水素エネルギーを効率的に活用する実証も行われている。水素に関する技術開発は進んでいるが、まだ「どう使うか」のモデルが十分に示されていないのが現状。そのため中村さんは「建物での使われ方を知る建設会社として、新しい技術やデバイスを建物のシステムに組み込み、上手に利用する方法を社会に提案するのが私たちの役割」と語る。2018年度中には、水素活用システムとI.SEMの連係を始める計画で、脱炭素モデルタウン構築に向けた取り組みを進化させていく。

水素エネルギー実証も進む

太陽光発電の余剰電力から水素を製造して貯蔵し、燃料電池を使って発電する水素活用システム。今後I.SEMのマネジメントに組み込み、より高効率なシステムを構築する。

▲ 太陽光発電の余剰電力から水素を製造して貯蔵し、燃料電池を使って発電する水素活用システム。今後I.SEMのマネジメントに組み込み、より高効率なシステムを構築する。

プチeco宣言 ― 既存のビルもZEB化

同社の東関東支店は、業務を続けながらZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化の改修工事を実施。高断熱化や自然エネルギーの活用に加え、オフィスレイアウトの見直しなどワークスタイル改革による省エネに取り組み、1年間の消費エネルギー量を改修前に比べて70%以上削減した。

既存のビルもZEB化

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