環境省
VOLUME.60
2017年8・9月号

脱炭素社会ミライ予想図03 ミライの“まち”編

「長期低炭素ビジョンで描かれる“まち”の将来像では水素自動車や自動運転システムで
温室効果ガス排出を抑えた効率的な移動が可能に。“まち”のコンパクト化が進み、
暮らしやすさが向上した“まち”が示されています。

ミライの“まち”

Vehicle-to-home/次世代自動車の蓄電池に蓄えた電力を、家庭用電力として利用することができる

Vehicle-to-grid/次世代自動車の蓄電池に蓄えた余剰電力を電力網に送ることで、まち全体の電力の需給調整機能を果たす

自動運転/安全な移動手段となるとともに、ICT(情報通信技術)による管理で渋滞を減らすことでCO2排出を抑える

コネクテッドカー/自動車にインターネット通信機能を付加。効率的な運転を助けるため、さまざまなデータを収集・分析し、渋滞緩和など、エネルギー効率化にも貢献する

ニューモビリティ/1~2 人程度で自動車より小回りが利き、環境性能に優れた、地域の手軽な移動手段となる

 先進技術は、エネルギー面だけでなく自動車の素材などにも利用され、人々の移動に大きな変化をもたらすとされている。軽くて丈夫な新素材であるセルロースナノファイバーを自動車の車体に利用し、安全性と軽量化の両立を実現。一人乗り自動車などの開発、バイオミミクリ(生体模倣)を利用した設計、ICT(情報通信技術)やビッグデータを使った自動運転、カーシェアリングなども進み、社会全体で移動手段の合理化に向けた動きが進んでいる。
 まちそのものも、移動のためのエネルギー使用を抑えられるコンパクト化や、自立・分散型エネルギーとして地域ごとに再エネの導入などが進み、社会が抱えるさまざまな課題に対して、複合的な解決が図られていく。通院や買い物など、高齢者が外出するときにも、小さくまとまったまちの中を自動運転で走る自動車があれば、より安全な移動が可能に。脱炭素社会に適しているまちづくりは、福祉、防災といった課題への解決策をも提示する。

ミライを見据える仕組み

「東松島市スマート防災エコタウン」

東日本大震災で甚大な被害を受け、震災後も約半年間電力不足に悩んだ宮城県東松島市。
環境省の補助を受け、昨年6月から「エネルギーの地産地消」に取り組んでいる。

1_出力400kw の太陽光パネル(ミドルソーラー) 1_出力400kw の太陽光パネル(ミドルソーラー)
2_発電した電気を貯める大型蓄電池 3_HOPE では、CEMS(地域エネルギー管理システム)によって制御しながら電力を供給している
4_すべての住宅にスマートメータが設置され、電力量の計測データがリアルタイムで更新・管理されている

1_出力400kwの太陽光パネル(ミドルソーラー) 2_発電した電気を貯める大型蓄電池 3_HOPEでは、CEMS(地域エネルギー管理システム)によって制御しながら電力を供給している 4_すべての住宅にスマートメータが設置され、電力量の計測データがリアルタイムで更新・管理されている

 「東松島市スマート防災エコタウン」は、エリア内にある太陽光を中心とした発電設備と、被災者が入居する公営住宅85戸、周辺の病院や公共施設などを自営線で結んだ日本初のマイクログリッド(大規模発電所に頼らない、小規模エネルギー・ネットワーク)を用いたエコタウンだ。エネルギーサービス事業を担う一般社団法人東松島みらいとし機構(HOPE)の渥美(あつみ)裕介さんは「必要に応じて、東北電力や地域低炭素発電所などからも供給を受けているものの、太陽光発電の効率が最も良い夏場や、需要の少ない平日の昼間は100%自給のエネルギーでまかなっています」と話す。
 災害などの緊急時にも安心して暮らせるのが特徴で、最低でも3日間は自前のエネルギーで通常通りの生活が可能。住民を集会所に集めてエネルギー消費を抑えるなどすれば、約1週間分の電力をまかなえるシステムとなっている。
 再生可能エネルギーを用いているので、この1年間で302tのCO2排出量削減にも貢献した。東松島市復興政策部の佐藤淳さんは「今後は環境に優しく緊急時にも安心なこの“東松島モデル”のまちづくりのノウハウを、ほかの自治体や企業にも提供していきたい」とエネルギーの地産地消の仕組みに自信を深めている。

写真/石原敦志

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