環境省
VOLUME.60
2017年8・9月号

脱炭素社会ミライ予想図02 ミライの“いえ”編

ここからは、「長期低炭素ビジョン」に基づいた“いえ”がどのように変わるのか、
その将来像を描きます。建物については、科学技術と地域の資源を利用し、省エネや低炭素化が
一層進んだ次世代の住宅やビルの姿が示されています。

ミライの“いえ”

* HEMSとは、エネルギーの「見える化」と 一元管理を行う、家庭で使うエネルギーの管理システム

 住宅には、エネルギー消費を最小限にするためのさまざまな方法が取り入れられている。太陽光発電と省エネ設備により、年間に消費する電力をゼロ以下にする「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の普及に向けた取り組みは既に始まっているが、技術の発達とともにさらに進化。高断熱化、エネルギー効率の良い家電の導入、建物の構造によって熱や空気の流れを制御するパッシブ設計などが一般化している。さらなる低炭素化が進んだ住宅は、遮音性が高く適温を保つため、暮らす人にとってもより健康で快適に生活できる家になる。また、照明や空調などに必要な最低限の電力を、一定期間自給できるようになり、災害への備えにもつながる。

 同時に、地域が持つ自然由来の資源の活用もポイントになっていく。地元産木材、水素やバイオマス熱など地域特性に合ったエネルギーの利用は、地域文化の保護や地域経済の発展にも貢献することが期待されている。

ミライを見据える技術

「LCCM住宅」

CO2排出量の削減が急がれる中、特に住宅の省CO2の柱になることを
期待されているのがLCCM(Life Cycle Carbon Minus)住宅だこれまでの省エネ住宅より
さらにCO2排出量削減に踏み込んだ住まいについて紹介する。

©koichi torimura/転載禁止

1_建物南面。通風時は窓を開け、木製ルーバー(横格子)で日射を遮り暑さを和らげる 1_建物南面。通風時は窓を開け、木製ルーバー(横格子)で日射を遮り暑さを和らげる
2_玄関の上部の通風塔内部。冷暖房時は、水平区画で塞いで室温を保ちやすくする 2_玄関の上部の通風塔内部。冷暖房時は、水平区画で塞いで室温を保ちやすくする 3_LED照明を分散配置することで、照明の消費エネルギーの削減を図っている 3_LED照明を分散配置することで、照明の消費エネルギーの削減を図っている

LCCM住宅デモンストレーション棟(LCCM住宅の実証・普及のためのデモンストレーション施設)

1_建物南面。通風時は窓を開け、木製ルーバー(横格子)で日射を遮り暑さを和らげる 2_玄関の上部の通風塔内部。冷暖房時は、水平区画で塞いで室温を保ちやすくする 3_LED照明を分散配置することで、照明の消費エネルギーの削減を図っている

 LCCM住宅とは、居住時に出るCO2排出量の削減だけでなく、資材の採取段階から建設、解体、廃棄に至るまで、住宅のライフサイクル期間に発生する全CO2排出量をマイナスにする住宅のこと。
 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)などのエコ住宅と同様、快適な居住空間を確保しつつも、断熱性能を高めたり、高性能で高効率なエアコンや給湯システムなどを導入して省エネに取り組みつつ、太陽光発電などの設備によってエネルギーを創出してCO2排出の収支を減らしていく。
 それに加えてLCCM住宅では、木材などの材料選択時にCO2排出量の少ない部材を選んだり、住宅を長寿命化することによって建設時の省CO2を図ることで、より一層のCO2排出量削減を目指す。
 認定制度を用いてこれまでにLCCM住宅認定を取得した住宅は、全国に約50軒建設されているが、普及に向けてはまだまだこれから。デモンストレーション棟を用いた啓発活動や技術開発によるコストダウンなどの検討が今後進められる予定だ。

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