環境省
VOLUME.60
2017年8・9月号

エコジンインタビュー/大自然の中にいると、すべては当たり前じゃないと気付かされる。/原田龍二

原田龍二

端正な風貌とは裏腹に、どこか天然なキャラクターで、最近ではバラエティ番組でも引く手あまたの俳優・原田龍二さん。

自然が多い場所を条件に自宅を選んだという、根っからの“自然好き”でもあります。

その魅力や、自然を介した子どもたちとの接し方とは?

 俳優業はもとより、ワイドショーのMCなど、仕事の拠点はもっぱら東京都心部。にも関わらず、原田さんはそこからアクセスが必ずしも良いとはいえない郊外に、あえて自宅を構えている。
「どうしても自然が身近にある場所に住みたかったんです。一番の魅力は、その“ におい”。都会のコンクリートジャングルにはなく、自然豊かな土地だからこそ感じられる夜の風のにおい、雨の後のにおい、畑の真ん中でたき火をしているにおい…。そういうものが自分の心や体の癒しにつながると、直感的にわかっているからなんでしょうね」

 そのルーツは、子ども時代の自然体験にあるという。生まれ育った足立区は、東京都内とはいえ、川があり、田んぼや畑も当時はまだまだあった場所。そんな環境で、原田さんはザリガニ釣りなど子どもらしい遊びを楽しみながら、健やかな心身を育んできた。一方でセンシティブな一面も持ち合わせていたそう。
「それも恐らく、自然と身近に接してきたからこそ、養われたんだと思います。近所の並木道や田畑の様子で季節の移り変わりを感じたり、空き地を見ては冒険心をくすぐられたり。そういう場所で暮らしていると、自ずと五感が研ぎ澄まされますよね。しかも、20代の頃に秘境へ行く旅番組を経験したことで、感性がよりシャープになった。今となってはそれが芝居をする上で、大きなプラスになっています」

子どもには何でも経験させる。時には痛みを感じながらたくましく育ってほしい。 そう、原田さんの代名詞的なキャリアといえば、ドキュメンタリー番組『世界ウルルン滞在記』でたびたび挑んだ秘境ロケ。アマゾンの奥地など言葉も生活習慣も全く異なる部族のもとに身一つで飛び込み、体当たりで交流を深める姿は大きな感動を呼んだ。
「自然体験とはいえ、極限ですけどね(笑)。アマゾンでは味付けが全くない“ ザ・動物味”のアルマジロを食べたり、ウガンダではマウンテンゴリラを探しに軽装備で4,000m級の山に登ったりもしましたよ。そこに行ったら現地の人のやり方に合わせるということが、心を通わせる一番の方法だと、旅の経験を重ねる中で学びました。秘境では他にもたくさん得たものがあって、“人間力”もその一つ。たとえばモンゴルは、草原と馬、人間、以上! それしかないんです。そうなると、余計なことは考えず、思考がどんどんシンプルになっていく。それにああいう所だと、狩りをしたり、動物から摂った乳でチーズを作ったりしないと、食料が確保できない。自分で自分の命を育てるというか、より生きる感覚が強くなりますよね。都市生活ではいろんなものが自動的に出てくるけど、大自然の中にいるとすべては当たり前ではないんだと気付かされます」

 そんな多感な青年時代を経た原田さんは、現在、中学3年生の長男と小学5年生の長女の父親。自身の経験もふまえ、子どもたちが小さい頃は、一緒に木登りをするなど、自然と触れ合う時間を大切にしてきた。
「まずは僕がお手本を見せた後、実際に子どもにやらせます。木登りにしても、虫取りにしても、うちでは何でもやらせる。危ないという理由で経験もさせずに行動を制限すると、どんどん弱い子どもになってしまうから。危険から守るばかりが優しさではない。子どものためを思えばやらせるべき、というのが僕の子育て論。そのおかげか、虫を平気で触れたり、芝生の上を裸足で駆け回ったりと、たくましく育っていますよ」

 折しも今は夏休みのタイミング。子どもたちと出掛けるなら?
「キャンプとかいいんじゃないでしょうかね。単なる旅行と違って、寝るにしてもテントを張らないといけないし、食事をするにしても火起こしから始めないといけない。そのために家族で協力する楽しさがありますよね。キャンプという非日常の中で、父親の頼もしさや、母親の存在感も際立ってくる。そんな夏休みを過ごして、家族の絆を深めたいですね」

profile

原田龍二

1970年生まれ、東京都出身。俳優。1992年、ドラマ『きらいじゃないぜ』(TBS 系列)でデビュー。『水戸黄門』の5代目助さんや、『相棒』シリーズの陣川公平役で人気を博す傍ら、自ら“温泉俳優”と名乗るほど、旅番組にも積極的に出演。現在、ワイドショー「5時に夢中!」(TOKYO MX)の金曜MCとしても活躍中。

写真/千倉志野

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