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概要

エコジン12・01月号

エコジン場で『親善大使のイルカです。イルカとは、ドルフィンという意味です』と挨拶するだけで、皆さんの顔がふわっと和んで、話を聞いてくれる雰囲気になる。海のイルカのおかげですね」 IUCNは、1948年に設立された生物多様性保全に関する世界最大のネットワーク。世界各国の政府・NGO・研究者らが協働しながら「自然を尊び保護する公正な世界」を目指して活動を続ける中、日本を含むアジア地域でのIUCNの認知度を上げるべく、初代親善大使として白羽の矢が立ったのがイルカさんだった。「私は学者でも専門家でもないので、歌や絵本などの作品を通じて伝えることしかできませんが、それでもよろしければ、ということでお引き受けしました。自然保護や生物多様性に興味のない人に向けて発信することが何より大切で、それこそが私の役割だと自覚しています。最初は、IUCNの活動を説明する日本語のリーフレットもなかったので、それを作ることから始めました。親善大使は完全なボランティアですから、私のコンサート会場に募金箱を置かせてもらい、集まったお金で毎年印刷し続けています。親善大使になる時にお約束したのは、自然保護や生物多様性をテーマにしたコンサートを毎年行うこと。『イルカwith Friends』と名付けたステージは、今年で12回目を迎えました。開催地である山梨県富士河口湖町も町をあげて応援してくれています。持続することによって、さまざまなご縁が生まれていることは、とても嬉しいですね」 親善大使就任10年目にあたる2014年には、 イルカさんといえば『なごり雪』や『雨の物語』などのヒット曲で知られるが、『鳥の記憶』や生命保険会社のCMで話題になった『まあるいいのち』など、生き物や自然、命についての歌も多い。生まれも育ちも東京のイルカさんは、小さな頃から生き物や自然と親しんでいたのだろうか。「子どもの頃から、動物・植物・鉱物、すべて好きでした。街のなかで生まれ育って、身近に雄大な自然がない環境だったから、むしろ強く惹かれたんじゃないでしょうか。いちばん憧れたのが田植え。あの泥のなかに足を突っ込んでみたくて仕方がなかった(笑)。でも、何かに対する思いは強いのに、それを人前で言葉にするのは苦手な子どもでした。友だちもいたし、人間が嫌いだったわけでもないけど、それよりも葉っぱや石ころ、虫、そういうものたちにどうしても心がいってしまう。虫よりも人間の方が偉いなんて納得できない! と思っていましたね」 野生動物のテレビ番組にも夢中になり、「将来はジャングルの奥地で野生生物に関わる仕事に携わりたい、獣医になるぞ」と夢見た少女は、いつしか音楽の世界へ。大学のフォークソング同好会の帰り道、ギターケースを抱えた部員たちの様子を見て「イルカの群れみたい」とつぶやいたことがきっかけでついたニックネーム「イルカ」が、そのままアーティスト名になった。「いま思えばこの名前で良かったなと思いますし、運命的な気さえしますね。特に2004年からIUCN(国際自然保護連合)の親善大使を務めるようになって、そのことをより実感しています。例えば、国際会議の言葉を発さず崇高な魂をもって生きている生き物たちの思いを伝えたい。ひ04