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概要

エコジン12・01月号

エコジン 地球温暖化の影響は、自然環境や生態系だけでなく、社会や経済の分野においても重要な問題を引き起こします。日本でも、農作物の品質低下や栽培適地の移動、感染症を媒介する蚊の分布域の北上などが報告されており、将来、影響がさらに拡大することが懸念されています。 温暖化の影響によって、私たちの暮らしや自然の生態系が危機に陥らないためには、世界の国々が協力・連携しながら、CO?排出削減の取り組みである「緩和」を行っていく必要があります。その一方で、緩和を実施しても温暖化の影響が避けられない場合、自然や人間社会のあり方を調整していくのが「適応」です。 近年では、先進国から開発途上国まで、適応の重要性が広く認知されるようになってきました。日本でも、国や自治体、企業などさまざまなレベルで、適応策の計画、法規制、事業の構築などの実施段階へ移行しつつあります。 「地球温暖化に備える」と言うと、とかくネガティブなイメージで受け取られがちですが、適応はマイナス面ばかりではなく、プラスと捉えることもできます。例えば長野県では、気温の上昇によって昼夜の温度差が大きくなり、品質の良いブドウが育つことを活用して、県産ワインのブランド価値を高めようとしています。コメについても、温暖化に対応した品種の開発が各地で進められています。新しく育成された高温耐性品種は、おいしさの点でも主力品種のコシヒカリなどと比べて見劣りすることがなく、年々売り上げを伸ばしています。このように、適応とは、単に「危機に備える」だけでなく「将来を見越して“暮らしやすさ”を考える」ということでもあるのです。 その一例として、デンマークの首都コペンハーゲンでは、豪雨による被害が相次いだことを逆手にとって、まちづくりによる適応に取り組んでいます。2011年に発表した「コペンハーゲン気候適応計応 用 編< 特別講義 >「適応」のために、私たちは何をするべきなの?今月の講師国立環境研究所 社会環境システム研究センター肱岡靖明先生 地域環境影響評価研究室 室長長野県では、「信州ワインバレー構想」を2013 年に策定し、ワインのブランド化に向けて官民一体で産業振興を図っている。温暖化が進む中、代表的な産地の塩尻市桔梗ヶ原などでは高品質なブドウが栽培され、注目が集まっている(cNAGANO WINE応援団運営委員会/撮影:平林武志)き きょう が はら18