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概要

エコジン10・11月号

人とも生き物とも、対等な関係でいたい。市川実日子 1978 年生まれ、東京都出身。10 代の頃からモデルとして活躍。雑誌「OLIVE」の専属モデルを経て、2000 年『タイムレスメロディー』で長編映画デビュー。03年映画『blue』(安藤尋監督)にて第24回モスクワ国際映画祭最優秀女優賞を受賞。最新の出演作は『シン・ゴジラ』(16、庵野秀明総監督)。なのでは?』と思い始めて、実は庵野さんの癖を少しだけ取り入れているシーンもあります。巨災対(巨大不明生物特設災害対策本部)に集まるところで尾頭が片手をパタパタと動かしながら目を宙に浮かせるのは庵野さんの癖です。繰り返し観た方でも果たして気付くのかどうか(笑)」 『シン・ゴジラ』は単なる怪獣映画ではなく、3.11のような「想定外の事態」が起きた時に日本はどのように対処すべきなのかを描いている。市川さんは完成した映画をどう観たのだろうか。「脚本を読んだ時、窓の外にゴジラがいるんじゃないかと思うほど怖くなったのですが、それは東日本大震災の時に自分が感じたことと、あの時テレビ画面の奥で起きていたであろうことが一致してリアリティを感じたからだと思います。完成した映画を初めて観た時は、逆に恐怖ではなく、ゴジラに対して健気さや切なさを感じました。ゴジラは人間のしたことによって生まれ、ただ歩いているだけなのにそれが大災害となり、攻撃の対象にされてしまう。感情がわからない分、放つ光線や動きからいろいろなことを感じて時に美しくも思えた。ゴジラという生き物を自分のなかで認識しようとしていましたね」 尾頭ヒロミはマニアックなまでの生物好きだが、市川さん自身は普段、生き物や自然とどのように接しているのだろう。「植物も含めて生き物は好きです。尾頭さんほどではないですが(笑)。年々、その思いが高まっている気がします。私は人に対しても動物に対しても常に対等の関係でいたいというか、同じ目線になりたがる癖があるんです。以前、人から預かった猫を飼えるかもしれない機会があったのですが、初めてのドラマ出演で余裕がなくて、対等にいられないことが苦しくなり残念ながらお返ししました。今なら、以前とは対等の意味合いも変化したように思うので、暮らせるかもしれないですね。 女の子がパリの田舎に行く、エリック・ロメール監督の『レネットとミラベル/四つの冒険』という映画を観てから、自然のある場所に行きたいとずっと思っていたのですが、少し前に京都の山奥に遊びに行く機会がありました。鳥やセミの鳴き声が響き渡り、魚みたいにきれいなヤモリがヒュッと飛び出してきたり、夜に車を走らせていたらイノシシが歩いていたり、常に生き物の息づかいを感じられる環境に身を置いたときに『、そうか、地球ってみんなで生きているんだな』と体感できたんです。東京にいると、自分も含めて人間はわが物顔で暮らしていて、実は都会にもいろんな生き物がいるということを忘れがちになる。山奥に着いた初日は、暗い、怖いとビクビクしていたのですが、翌日から身体も心も馴染んでいった。久しぶりに日焼けをして、ひりひりする肌の感覚も味わいながら、なんだかとても幸せだなぁって。生まれも育ちも東京なので、東京が嫌だというわけではないのですが、山奥から帰ってきたときに、東京は平面が多いんだな、自然って全てがデコボコしているな、と思いました。今のタイミングでそういうことを感じられたのが良かったなと思います。いつか、自然のなかで暮らす経験をするのが夢ですね。その時、どんな感覚になるのか、自分でも楽しみです」05