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概要

エコジン04・05月号

ことを考えたり、若者を農業に呼び戻すきっかけになるなら……と、その仕事を受けることにしたんです」その作品が『生きるぼくら』。主人公は引きこもりの青年で、彼は蓼科に住む祖母のもとで、自然農法での米作りを手伝う。農業を通して、自分の生き方を見つめなおす若者の物語だ。もともと小説執筆のために、徹底的に取材をする原田さん。このときも“これは自分でやってみないと、本当のことが書けない”と気づき、偶然、蓼科の近くで自然農法を実践していた友人の田んぼに東京から通って、約1年かけて米作りを体験した。「もみの選別から手を使った田植え、鎌での稲刈り、脱穀……。約10カ月かけて、やっと1杯のごはんになる。米作りについて、嘘がないよう、愛情を持って書きたかったのでトライしました。大変でしたけど、やってよかった。蓼科への移住は米作りの後なんですが、この執筆依頼がなければお米は作らなかったし、そうしなければ蓼科周辺の魅力にも気が付かなかった。結果、移住もなかったかもしれません」仲間たちと米作りに四苦八苦した記録は、みおマンガ家のみづき水脈さんとの共著『ラブコメ』で楽しく読めるので、そちらもおすすめ。ところで蓼科に拠点を持ったことで、何かご自身の作品にも影響がありましたか?「森や自然の中に身を置くと、自分とじっくり向き合う時間が持て、自らを見つめなおすことができます。自分も森の一部になったような気持ちになり、心の底から落ち着ける。3カ所ある書斎の中で、最も“私は書くんだ”という気持ちが強くなるのは、蓼科のデスクなんですよね」原田マハ作家、キュレーター。大学で美術史を専攻後、森美術館設立準備室やMOMAに勤務、その後フリーのキュレーターとして活躍。2005年に小説『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年「楽園のカンヴァス」で山本周五郎賞受賞。著作に『本日は、お日柄もよく』(徳間文庫)、『ロマンシエ』(小学館)、『暗幕のゲルニカ』(新潮社)など多数。05