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概要

エコジン02・03月号

↓北米と欧州で発売中の三菱鉛筆「ユニボールシグノU M N - 3 0 7」。セルロースナノファイバーを配合したインクが、適切な粘度で細いペン先から出るため、文字がかすれにくく筆記体などが書きやすい↑2015年9月にストックホルムで行われたマルクス・ヴァーレンベリ賞授賞式の様子酸化処理をほどこしたゲル状の液の中には、セルロースの微細な繊維が含まれているほぐすことができます。しかも、鉄の5分1程度の軽さで5倍ほどの強度を持つ物質になることが分かったのです」と磯貝は目を輝かせる。■全国の豊かな森が有効な資源に2002年から磯貝の研究室に加わった斎藤が、製紙用パルプの酸化触媒を進める過程で超音波処理をほどこすと、水の中でセルロースが膨らむことを発見。電子顕微鏡でのぞくと、3ナノメートルの極細な繊維であることが分かった。果たしてこれが何に使えるのか?その時は誰も確証を持てなかったが、新素材の開発を模索していた企業が興味を示した。そして、2007年から日本製紙、花王、凸版印刷、そして東大による産学協同のプロジェクトがスタートしたのである。「セルロースナノファイバーの原料に最適なのは、繊維が長い針葉樹です。幸い日本は国土の6割以上が森林で、その約半分が杉やヒノキなどの針葉樹。木造建築や紙の需要低下が進む中、今後セルロースナノファイバーの実用化が進めば、全国の森林が最先端素材の資源として再びクローズアップされるかもしれません」現在、セルロースナノファイバーの研究は、世界的に見ても日本がリードしている。すでに磯貝らの研究成果をもとに、三菱鉛筆が北米でセルロースナノファイバーをジェルインクに配合した「筆記体を書き続けてもインクがかすれない」ボールペンの販売を開始している。森林大国ニッポン発の新素材が世界を席巻する日も、そう遠くないかもしれない。明日への展望東京大学教授農学博士磯貝明さん2014年に各省庁が連携してナノセルロースを推進する「ナノセルロース推進関係省庁連絡会」が発足し、政府の成長戦略を示す「日本再興戦略改訂2014」にもその推進が明示されるなど、現在、政府や関係省庁の動きが加速しています。今後は、たとえば林業と自動車産業など、従来接点のなかった異業種が連携することで、思ってもみなかった応用や実用化の道が広がることを期待しています。29