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概要

エコジン04・05月号

「私が研究を始めた1 9 7 0年代には、L E Dで照明ができるとは思ってもいませんでした」と天野教授は穏やかに話し始めた。当時はパーソナルコンピュータの始まりの時期で、日々進化していくコンピュータの世界に夢中になっていたという。「青色LEDを実現することができれば、コンピュータのディスプレイを小さくて軽いものにできると思い、赤﨑勇先生のもとで研究するようになりました」。光は赤、緑、青の3つの色を混ぜると白い色になる。これを光の三原色という。三原色があれば、その組み合わせによってこの世に存在する色をほぼすべて表現することができる。「コンピュータのディスプレイは、大きくて重いブラウン管が主流だったので、LEDのディスプレイができれば、コンピュータの発展に貢献できるのではないかと考えたのです」。青色L E Dをつくるためには、きれいな結晶をつくる必要がある。天野教授は赤﨑勇先生(現名城大学終身教授・名古屋大学特別教授)と共に、サファイアの基板の上に窒化ガリウムという物質の結晶を成長させようしていた。だが、なかなか思うようにいかない。失敗を繰り返しても、天野教授はあきらめずに研究を重ねていき、サファの発光原理はもう少し単純です。青色LEDの表面に黄色の蛍光体をつけることで白色の光をつくっています。青色の補色光である黄色と混ざると、白色になるからです」と天野教授は語る。白色LEDを利用した照明は、ここ数年で発光効率が格段に高まり、省エネ効果も大きくなったことで、急速に普及している。「国内では2020年までには全体の70%以上の照明がLEDに置き換わるだろうといわれています。そうすると、現在の全発電量の約7%分にあたる電力を削減することができるようになります」L E D照明の普及は国内だけでなく、海外でも進んでいる。しかも、その効果は省エネだけではなかった。モンゴルの教育大臣が名古屋大学を訪問した際、天野教授に“青色L E Dと、新たなパワー半導体が、地球温暖化やエネルギー問題解決のカギになる”イア基板の上にクッションの役目をするバッファ層をつくることを思いつく。その効果によって、やっと窒化ガリウムのきれいな結晶をつくることができた。さらに、それから4年の歳月を費やし、世界で初めて青色L E Dをつくることも実現したのだ。2人の成功によって、たくさんの科学者が青色LEDの研究に取り組むようになった。その結果、強い光が出せるようになり、量産化の技術も確立して、生産コストも下がっていった。青色LEDが量産されるようになったおかげで、白色光を発するLEDも生みだされた。「白色光のLEDは、三原色のL E Dを組み合わせることによってできていると誤解をされている方も多いですが、現在市販されている白色LED04