ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

エコジン04・05月号

注意報日本古来の農法で、温室効果ガスを削減温暖化を進行させないよう、特に日本を含めたアジア圏では、水田から発生するメタンを減らす取り組みが進められています。メタンは1gあたり二酸化炭素の約30倍の温室効果がある物質です。土の中にいる微生物の活動によって発生しますが、この微生物は酸素がない環境を好むので、土の中に酸素を入れることが対策として有効と考えられています。日本の稲作では古くから、田植えの約1~2ヶ月後に1度田の水を抜く「中干し」を行ってきました。水が張られて空気と遮断されていた田んぼに一時的に酸素を供給することで、稲の根が強くなるなどの効果もあります。これを通常より1週間程度延長すると、メタ長期間の「中干し」を行った後の田んぼの様子ンの発生量を平均30%も減らすことができることがわかりました。注意報地球にやさしい農地をつくる土壌は海に次いで、2番目に大きな“炭素貯留庫”として、二酸化炭素を吸収する受け皿になると考えられています。土中には土壌有機物として大量の炭素が蓄えられていますが、これは植物が微生物によって分解されて土に還ったものです。農家が収穫後に稲ワラや堆肥などを土に還せば、植物が成長する段階で光合成によって大気から吸収した二酸化炭素を土壌が一部吸収することになり、大気中の二酸化炭素を減らしたことになります。しかも有機物を土に埋めれば、土は豊かになり、養分などのバランスがとれることで農地の健全性も高まって、環境保全型農業を促進します。こうした管理によって、温暖化を抑える農家の努力が続けられています。収穫後の残渣など、身近な有機物を土に埋めるための補助暗渠機「カットソイラ」(写真:農研機構農村工学研究所)本日のコメンテーター:八木一行さん1959年東京生まれ。1986年名古屋大学大学院理学研究科博士前期課程修了、1987年農業環境技術研究所研究官。1996年農学博士。1997年国際農林水産業研究センター主任研究官を経て、2010年より農業環境技術研究所研究コーディネータ。専門は土壌学、生物地球化学。農業生態系における温室効果ガスの動態解明とその排出制御技術の開発を研究するとともに、モンスーンアジア域を中心とした農業と環境に関する国際研究ネットワーク形成に尽力。21