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概要

エコジン04・05月号

農業にとって温暖化は悩みのタネ自然の恩恵を受けて生産される農作物は、地球温暖化による影響を著しく受けています。IPCC第5次評価報告書でも、現在の水準よりも2℃以上の気温上昇が起こると、農作物の生産に負の影響を及ぼす可能性があると警告しています。日本でも1990年代以降、気温が高くなる傾向が顕著に見られ、コメや果物、野菜類の品質低下や、乳牛の乳量の減少などが全国各地の生産現場から報告されています。温暖化の影響を最小限に食い止めるためには、農業によって排出されている温室効果ガスについても見過ごすわけにはいきません。世界的に見れば、農業や林業からの温室効果ガスの排出量は全排出量の約1/3をも占めています。生産に影響を与えず、かつ温室効果ガスを削減する方法が求められています。注意報温暖化で、おいしいコメが食べられなくなる!?これまで日本の農業は、1993年の冷夏による米の不作が大きな騒動となった「平成の大冷害」に代表されるように、寒さへの対策を主な課題としてきました。しかし2000年代に入ってからは、地球温暖化の影響がさまざまな農作物にはっきり現れ出しています。そこで今後予測される変化の下で、稲がど文/柳澤美帆その対策をテーマ毎に紹介していきます。気候変動に関する専門家が、地球温暖化が引き起こす危険や、私たちの生活にも大きな影響を及ぼし始めています。地球温暖化は、いまやどこか遠い国のできごとではなく、のように生育するかを調べるために「FACE」という実験が行われています。これは50年後の予想される、高いCO 2濃度の環境を田んぼの一部につくり出し、稲を栽培する試みです。その結果、コメは光合成が促進されて収量が増えましたが、一方で生成される栄養素のバランスが崩れて品質は低下しました。また二酸化炭素の濃度と気温の両方が高くなった場合には、増収効果も低下することがわかりました。IPCCとは?気候変動に関する政府間パネル。気候変動について発表された論文や観測データを、各国の有識者・専門家が評価し、まとめる政府間機関。5~7年ごとに最新の報告書が公表され、現在は第5次評価報告書が作成されている。FACE実験施設。八角形のチューブからCO2を放出して、内部のC O 2濃度を高くしている(写真:農業環境技術研究所)20