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概要

エコジン02・03月号

注意報将来は北海道で熱帯特有の感染症にかかるかも!?▼日本におけるヒトスジシマカの分布図(提供:国立感染症研究所)台湾では2000年代に入りデング熱の流行が度々起こるようになりました。その理由のひとつとして、温暖化によってデング熱を媒介する蚊が台湾南部で生息密度が高まったことがあげられています。日本でも、もしこのまま地球温暖化が急速に進んだ場合、2035年には青森県の平地は平均気温が11℃となるので、ヒトスジシマカが生息できるようになります。さらに2100年には、北海道でも発生するようになるでしょう。蚊が媒介する感染症にかかる地域が、温暖化に伴ってどんどん拡大してしまうのです。また蚊の生息域が広がるにつれて、これまで日本では確認されていなかった、チクングニア熱などの新たな感染症にかかるリスクも想定されています。チクングニア熱は過去にイタリアで、また、現在カリブ海諸国などでも流行しており、もはや対岸の火事ではないのです。注意報蚊に対する認識を改めて対策をとろう日本ではこれまで感染症を媒介する蚊の対策はまったくとられてきませんでした。しかし蚊が生息する諸外国において、これは稀なことです。例えばシンガポールでは、水たまりなどを作って蚊を発生させた家には、罰金が課せられます。東南アジアの国々は長年感染症の危険にさらされてきたので、対応が非常にシビアなのです。日本の都市部での蚊の発生場所として重要視されているのが、側溝に設置された雨水枡です。雨水が溜まるので、ここに蚊が卵を産み幼虫が発生してしまいます。蚊の発生対策の責任者はやはりまずは自治体ですが、すでに日本でも住民が率先して雨水枡に殺虫剤をまくなどの対策をとり、効果が出ている場所もあります。こうした意識の変化が全国に広がらない限り、感染症のリスクは温暖化の進行とともに高まるばかりなのです。道路側溝の雨水枡の調査風景(写真:国立感染症研究所)本日のコミュニケーター:小林睦生さん19 51年北海道生まれ。19 7 7年東京農工大学修士課程修了、同年獨協医科大学助手、19 8 8年同講師。19 8 6年医学博士。1988年スウェーデン国ウプサラ大学特別研究員。1993年国立感染症研究所昆虫医科学部室長、2 0 0 3年同部長に。現在、国立感染症研究所名誉所員。衛生昆虫と病原体との関係を蚊、ハエ、シラミなどを用いて研究、最近はデング熱媒介蚊の分布域拡大と温暖化との関係などを解析。21