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概要

エコジン10・11月号

いうものです。一例として、9 8年から西宮市で行われている「エコカード」と「エコスタンプ」を使ったシステムをご紹介しましょう。まず、市内の小学生2万9千人全員にエコカードを配ります。さらに、学校の先生や自治会、子ども会、ボーイスカウトなど地域団体のリーダー、文具店やスーパーマーケットの店員さん、環境関連団体や児童館、公民館、植物園の職員などの大人、約2千人にエコスタンプをそれぞれ配布します。子どもたちが環境学習や活動に参加すると、エコカードにエコスタンプを押してもらうことができます。そしてスタンプを10個集めると、「アースレンジャー(地球を守る人)」に認定されるというシンプルなものです。エコスタンプの対象となる活動は、学校での環境・自然に関する学習や緑化クラブなどの課外活動、地域の美化活動への参加、環境保全商品の購入、スーパーでのリサイクル活動への協力、公民館などに設置されているエコクイズへの参加などさまざまです。この活動によって、子どもたちに環境意識を持ってもらうことはもちろんですが、実はもっと重要なねらいがあります。それは、地域・学校・家庭をネットワークすることです。子どもの小さなエコアクションに対して、大人たちが「環境にいいことをしたね」とひと声かけてスタンプを押すことにこそ大きな意味があるのです。大人たちの声かけによって、子どもたちが「自分の関わる地域全体が環境を大事にしている」「まわりの大人たちが自分の行動を応援してくれている」ということを無意識のうちに感じていく……そんな地域社会をつくりあげていくことが、これからの環境教育では必要だと思うのです。環境学習を“まちのしくみ”として根づかせる自然・歴史・文化・産業・伝統といった地域資源を利用しながら、地域や地球環境との望ましい関係を築いていくために学び合うことです。そのための具体的な方策について、家庭・地域・学校・事業所・行政などが協働して考え、行動することが求められています。そのために最も大切なのは「地域力」です。こうした考え方を“まちのしくみ”として地域社会に根づかせることが、何よりも重要なのです。西宮市では、こうしたことから、2003年に全国初の「環境学習都市宣言」を行いました。冒頭で紹介した「ESDの推進に向けた課題」の中に、「ESDの認知度が低い」という指摘がありましたが、私自身はESDという“旗印”が先行する必要はないと考えています。エコカードとエコスタンプのような、ささやかではあるけれど地域に根ざした活動が、結果的にESDの理念を実現していた……つまり“振り返ればESD”ともいうべき状態こそが理想だと思うのです。小川さんが理事を務めるLE AFの、企業会員による学習支援プロジェクト。「びん」をテーマに資源循環について学ぶ。環境学習とは、私たちの暮らしが自然にどう支えられ、自然をどう利用してきたかを考え、環境に対する理解を深め、PROFILE西宮市甲子園浜での自然体験授業。西宮市の甲山(かぶとやま)農地で田植え体験する子どもたち。1972年西宮市役所入所。1992年「2001年・地球ウォッチングクラブ・にしのみや(EWC)」、1998年「こども環境活動支援協会(LEAF)」などの発足に携わる。2006年3月西宮市退職後、フリーランスで環境学習を通じた、地域に根ざした持続可能なまちづくりのコーディネートやシステム開発、講演活動を行う。環境省「『国連ESDの10年』後の環境教育推進方策懇談会」メンバー。NPO法人「こども環境活動支援協会(LEAF)」理事。http://leaf.or.jp13