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概要

エコジン12・01月号

島太郎の民話で知られるように、古来より日本の海岸にはウミガメが上陸していた。なかでもアカウミガメは、広い北太平洋の中で唯一、日本の海岸でしか産卵が確認されていない種だ。日本の産卵場所の環境が、アカウミガメの個体数に大きな影響を与えていると言える。アカウミガメをはじめとするウミガメの産卵地では、かなり以前から市民の手による保護活動や生態調査が行われてきた。「海外では研究機関が調査することがほとんどですが、日本では一般の方が自分たちの身近にいるカメを観察し、過剰すぎる卵の採取から卵を守る活動をしてきた歴史があります。日本ウミガメ協議会は、こうした個人や市民団体と研究・教育機関、行政の総体やハブとして設立され、また科学的な裏付けを提供するために活動しています」と、同会の石原孝主任研究員は話す。日本では、特に1990年代にウミガメ全体の産卵数が激減。その後九州周辺では増加する傾向にあるが、いまだ四国・本州での回復は進んでいない。「ウミガメが産卵する場所は、砂浜しかありません。この環境をいかに良くするかが個体数を増やす鍵となっています。砂浜の減少や荒廃などを防ぐために、全国の産卵地でさまざまな活動が行われていますが、まだこれという決定的な方策は見つかっていません。ただ個人的には、沿岸の人工構造物や川の上流にあるダムに砂が溜まってしまい、砂浜に砂が供給されない現状を何とかできれば、少しは事態が好転するのではと思っています」こうした個々の研究や活動を報告して共有し、ときには行政と協働するために、ウミガメ協議会が主催しているのが「日本ウミガメ会議」だ。毎年全国のウミガメの産卵地で開催し、参加団体も年々増えている。当日は啓発活動の一環として、地域の学校でウミガメについての出前講座なども開いている。「協議会には現在約1 5 0の団体と個人が集まり、連携しています。ウミガメは海の中にいるため生態の研究がなかなか難しく、成果がすぐに見えないのがもどかしいところですが、各地域での現場主義の活動が生物多様性の保全にとって良い未来につながっているのは間違いないでしょう」Click!!NPO法人日本ウミガメ協議会http://www.umigame.org下左:子ガメが生まれた後の孵化率調査風景。この調査で得られた情報を、ウミガメの上陸・産卵のための環境づくりに生かす。/下右:生息場所や回遊経路解明のために、衛星発信器をつけて放流する様子。ウミガメが海面浮上した際の位置が随時分かり、追跡を続けることができる。上:衛星発信器をつけて放流されるアカウミガメと、それを見守る子どもたち。鹿児島県県中種子町市の熊野海岸にて。11