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概要

エコジン10・11月号

岡かおるさんに聞きました株式会社エックス都市研究所国際環境政策グループ国際コンサルティング事業本部水俣条約で何が変わるのか詳しく教えてください。水俣条約が制定されることによって、日本や世界にどのような影響があるのでしょうか。まず、水銀鉱山からの水銀の産出が禁止されるほか、水銀の輸出入も特定の目的を持ったものに限定されるようになります。水銀を添加している特定の製品についての製造、輸出入については、2020年以降、一部条件付きながらも原則として禁止されます。具体的には、電池、スイッチや継電器(リレー)、蛍光ランプ、化粧品、駆除剤、計測機器などがリストアップされていますが、基本的には水銀を使用しない代替選択肢があるものについて規制されることになります。計測機器類としては、身近なところでは体温計や医療機関の血圧計が挙げられますが、水銀を含まない適当な代替製品がない場合、たとえば生産現場でプラントに付属しているものや精度の高い測定に使用される温度計などについては対象から除外されます。日本では、すでに製品の無水銀化が進んでいるため、2020年よりも前にこうした規定をクリアできると考えられますが、中国やインドなどの途上国に関しては、この年限までに対応が難しいということであれば期間延長の申し込みが可能になります。このほか、原料や燃料、廃棄物を燃やす時に、大気に排出される水銀を削減すること、水銀を含む廃棄物(不要になった水銀を含む)をきちんと処分すること、なども求められています。こうした水銀添加製品規制のリストづくりや水俣条約づくりのプロセスおいても、日本は積極的に発言をしてきました。50ヶ国が批准しなければ条約は発効されないので、日本は条約の発効を促進する牽引役としても期待が集まります。水俣病のような悲劇を二度と繰り返さないためにも、日本が得た教訓を世界に広めていくことが重要です。日本では水銀が大気、水、土壌などの環境へどのように排出されているかなど、社会における水銀の流れを把握するためのマテリアルフローを作成しています。これによって、自国でどのような対策をとるべきなのかが明確になるのです。マテリアルフローをつくった経験とノウハウを途上国に対して伝えていくことは、条約発効を促す上でも有効でしょう。また、日本は途上国に対して条約の実施に必要な技術や能力構築の支援も求められます。水銀を使わずにか性ソーダを製造するイオン交換膜法をはじめ、無水銀の乾電池やボタン電池の技術を日本はすでに確立しているので、条約発効後はこうした技術を世界に広めていく立場になると期待されます。水俣病を経験した日本が条約の発効を促す牽引役として期待されます。教えてくれた人:岡かおる(おか・かおる)株式会社エックス都市研究所・国際環境政策グループ長。米ノースカロライナ州立大学チャペルヒル校大学院卒業。土地利用・環境計画専攻(修士課程)。アジアにおける有害廃棄物管理の法制度整備や資源循環の推進、廃棄物管理改善のあり方などを提言。水銀条約の制定に向けた国際交渉と国内担保措置の検討も支援。22