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概要

エコジン8・9月号

今月のお題地球温暖化とサンゴ礁“温暖化はメタボに似てる”かつゆるゆると迫ります。し環り境あやがエりコ寿にさ関んすがるコミックとエッセイプロフィールアレコレについて、で鋭く!第13回1958年静岡市生まれ。1985年、『エレキな春』でデビュー。パロディーを中心にした新しいタイプのギャグマンガ家として注目を浴びる。近年は、幻想的あるいは文学的な作品などを次々に発表するほか、エッセイ、映像、ゲーム、アートなど多方面に創作の幅を広げている。サンゴ礁の白化がすすんでるらしい。サンゴ礁と共生している褐虫藻ってのが抜けて白くなっちゃうのだ。これも温暖化との影響が疑われている。サンゴがなくなったら自然の防波堤はなくなるし、魚のすみかもなくなるし、二酸化炭素を吸ってくれる存在がまた減るだろう、確かに重大なニュースだ。ところがこのニュース、僕らの前には「政治家の失言」とか「女優の離婚」とか「新しいスマホの発売」とか、そんなニュースに混ざって現れる。多くの人は「ああまたか…コワイなぁ」とかちょっと不快な表情で、そして次のニュースに目は移っていくだろう。世界を人間の身体に例えれば、毎日のニュースは、世界の健康診断だ。人間の身体だからそれはもういろいろな不調がおこる。どこかで紛争がおこれば世界はあわてて絆創膏をはろうとするだろう。どこかの国の財政が怪しくなったら皆で必死に処方箋をかんがえるだろう。そんな中で温暖化はメタボに似てる。氷河の後退、異常気象の増加等々、ときおり意識にのぼる症状は、コレステロールの増加や脂肪肝の進行や血管の劣化のように普段は特に痛みも苦痛もなくただ緩慢に身体をむしばんでいく。この痛みの無さがよくない、贅沢な生活をこのまま続けていれば、将来必ず不都合な結果が待ち受けていることがわかってても、不便を伴う生活習慣の変化を人々は受け入れようとしない。さらに困ったことに自分が我慢して生活習慣を変えても、隣人が今までどおりの生活をしていたら何も変わらない。不便を我慢した自分が損するだけだ。メタボはその認知がすすむにしたがって、自分の健康のためなら、と様々な対策がとられるようになった。温暖化もエコ市場の増加などある程度の効果はあげているように見えるが、メタボが個人の問題であるのにくらべて温暖化は×人口60億の問題だ。そしてそれは人の日常のスケールより遙かに大きく長く複雑な問題だ。「環境問題」というけれど、メタボがそうであるように温暖化も人間の生活習慣によってなるべくしてなっただけだ。そこに問題は何もない。刺激の強いスキャンダルなニュースに混ざって時折報告される進行する症状。あるのは自らの病をどう治すか、という「人間問題」なのだろう。34