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概要

エコジン8・9月号

「取り除く」「さえぎる」「遠ざける」除染とは、放射性物質が付着した土や草木を取り除いたり、土で覆うことによって、生活空間の放射線量を減らしていくことです。除染には大きく3つの手法があります。まず、放射性物質が付着している土や草木を「取り除く」。次に、取り除いた土や草木を袋などに入れ、土やコンクリートで囲って放射線の影響を「さえぎる」。そして、取り除いた放射性物質を仮置き場などに移して生活の場から「遠ざける」。福島の原発事故で飛散した放射性物質の中で、セシウム13 4は半減期がおよそ2年であり、自然減衰により一定の線量低減が期待できますが、セシウム1 3 7は半減期がおよそ30年とされるため、これらを踏まえて除染を施す必要があります。個別に対処して効果的な除染をナトリウムやカリウムと似た化学的性質を持つセシウムは、雨や雪が降るとイオンと結合する形で地表に降り注ぎます。普通の物質であれば、時間ともに土の内部深くへ浸透していきますが、セシウムは、いったん地面に付着すると、そこから下の土には浸透しにくいことが分かっています。ということは、放射性物質の存在については、土の上層部を取り除いてやれば、その下の土は事故前と変わりません。福島で自治体が除染作業を行っているエリアでは、概ね3㎝から、深くて5㎝程度の土を取り除けば除染することが可能です。たとえば3㎝の土を取り除けば問題がないと判断された場所で、より安全性を高めようと5㎝取り除くと、今度は汚染された土壌の発生量が必要以上に多くなってしまうという問題が生じます。その後の仮置き場や中間貯蔵施設のことも考慮し、より効果的に除染作業を進める必要があります。しかしながら砂などの場合、粒径が普通の土と比べると粗いため、もう少し下まで放射性物質が入り込んでいる可能性があります。あるいは、雨どいから雨水をそのまま地面に染み込ませている場合、その下の土を入念にチェックするなど、個別の対処が必要になります。道路では、コンクリート、アスファルト、玉砂利、インターロッキングブロックなど、材質によって除染の方法が異なります。インターロッキングブロックはもともと雨水を地面に染み込ませる構造のため、放射性物質も中に入り込みやすい材質であることから、放射性物質を高圧の水で落とし、同時に水を回収する回収型高圧洗浄や、超高圧洗浄という通常の10倍くらいの水圧で洗浄する手法を採っています。いずれにしても、除染はハイテク機器で一気に作業が行えるものではなく、きめ細かい地道な手作業が求められるのです。住民参加によるリスクコミュニケーション今後は、これまでの除染作業から得られたデータを分析した結果と経験値を組み合わせ、除染を行う自治体や現地SPECIALINTERVIEW「除染のいま」除染を進める上で、より効果的な手法とは何か。また、震災から2年以上が経った今、除染のノウハウはどこまで蓄積されているのか。環境省環境回復検討会の委員であり、除染ガイドラインの策定・改訂にも携わる、日本環境安全事業株式会社・中間貯蔵事業準備室技術アドバイザーの森久起さんにお聞きしました。16