エコジン4・5月号

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概要:
エコジン4・5月号

PM2.5の環境基準日本米国EU世界保健機構(WHO)年平均値μg/㎡1515(今年3月中に12に)20(2015年までは25)10かというと長期的にじわじわと現れる影響です。PM2.5の環境基準値の達成率は、平成22年度の時点で一般環境大気測定局(全国に設置された、大気汚染の常時監視の測定局)が32.4%。現在も、全国的にその達成率はけっして高いとは言えませんので、さらに対策を行って、大気環境を改善することが必要ですが、昨今の日本国内の濃度の状況は前述の通り、短期的にひどい健康被害が生ずるような心配はしなくてよいレベルであると考えています。とはいえ、社会的な要請をふまえ、さらに今年2月、「注意喚起」のための暫定的な指針となる値を設定しました。それが日平均値70マイクログラム毎立方メートルという、短期基準を主体とする数値です。この数値はアメリカの大気質指標(AQI)において、すべての人に対してある程度の健康への影響を与える可能性があるPM2.5の濃度として65.5マイクログラム毎立方メートル以上が定められていることや、海外での実験結果、疫学的知見などを勘案して設定しました。70マイクログラム毎立方メートルを超えた場合は、できるだけ外出を減らし、屋外での激しい運動を減らす行動が望まれますが、この数値を超えても、すべての人に必ず健康影響が生じるわけではありません。また、残念ながら、体調の変化に気をつけていても「これはPM2.5の影響だ」と明確に区別できる兆候はありません。そのため呼吸器系や循環器系の疾患をもつ人、高齢者や小さなお子さんなど、とくに健康影響が心配な人は、環境省や各自治体で発表される数値に注意を払っていただきたいと思います。現在、中国の大気汚染は、とても深刻な状態です。日本の大気汚染物質のうちの一部は、間違いなく大陸からの越境汚染によるものといえます。現在、日本では全国560カ所以上でPM2.5の常時監視をしていますが、まずはこの観測地点を全国1,300カ所に拡充することが、今後のスタートライン。観測地点を増やしたうえで、さらなる成分分析や研究を進め、まだ解明されていない一部の汚染物質の発生源を突き止め、いかに効率的な対策をとることができるかが今後の課題です。発生源がまだ特定できていない一部の大気汚染物質のルーツを解明し、効率的に減らす対策をとることが今後の課題です教えてくれた人:新田裕史(にった・ひろし)東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。保健学博士。子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)コアセンター長代行兼務。PM2.5などの環境因子と健康の関連性に関する疫学を研究している。21