エコジン8・9月号

エコジン8・9月号 page 5/36

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れてしまった南三陸町の「あさひ幼稚園」再建プロジェクトの依頼が入った。南三陸町に足を運び、現地を視察。そこで見たのが30メートルを超える杉の巨木の並木だ。即座に“これを使うべきだ!”と決断した。「この杉....

れてしまった南三陸町の「あさひ幼稚園」再建プロジェクトの依頼が入った。南三陸町に足を運び、現地を視察。そこで見たのが30メートルを超える杉の巨木の並木だ。即座に“これを使うべきだ!”と決断した。「この杉が生えていたのは海から1キロメートルくらいのところですが、かなり上まで水が来たため、ほとんどの木が塩枯れしています。住職さんも、何かの形でこの杉を残せないかと考えていたそうで、“いいですね!”と同意して下さいました。この杉並木は、地元の人にとってはものすごく大事な精神的な宝物。それを生かさないのはもったいない」(貴晴さん)??こうして、る“木組み”という昔ながらの工法を採用した。「木は月日を経ると縮むものです。その木と木の間に金具を入れて繋げると、金具は縮まないからガタつきが出てしまう。でも木同士で組み合わせれば、その繋がりはお互いが縮むことでより強固になります。この工法で今の建築基準法をクリアするのはなかなか難しいんですが、最先端の構造解析を使って再現しました。過去から学んだ技術を、最先端の知識を使って再現する。それも、記憶の連鎖の1つだと思います」夏が終われば2学期が始まる。元気な園児が太い杉の柱の周りを駆け回っているに違いない。「住職さんの思い、地域の人の思い、300年木と木の間に金具を入れてつなげると、そのうちガタつきが出てしまう。長く使えることを目指し、木組みにこだわった。(C)日本ユニセフ協会/satomi matsuiあさひ幼稚園の建築模型。実際の幼稚園は建築面積359.48平方メートルにもなる。木のぬくもりが感じられる作りとなっている。立ち枯れてしまえば災害がれきとして処分するしかなかったスギが“再生”されることになった。まちを復興させるために重要なのは、ロングスパンでものを考えること、そして記憶をつなげていくことだと貴晴さんは言う。「なぜ人がまちに愛着を持つかといえば、そこに蓄積した歴史があり、それゆえの美しさがあるから。みんな、その記憶に愛着を覚えるんです。だからこそ、先祖代々の言い伝えや記憶の痕跡は、まちづくりの上で本当に重要です。今回の復興も、この町に津波が来たこと、そして今後もそれは来る、ということを伝えていかなければならない。塩枯れした木を柱に使うことで、未来に経験を繋いでいこうと考えました」また、今回は木と木を組み合わせて建物を作前に植えたご先祖様の思いも形には見えませんがどこかにあるような気がします。子どもたちも“あの杉並木だ”と思い出すかもしれません。この幼稚園を見て、地域の木を使って家を建てたいと思う方が増えてほしいですね。建築家として、記憶を残すお手伝いができれば嬉しい、そう思います」(由比さん)てづかたかはる・ゆい建築家。手塚建築研究所を共同で主宰する。武蔵工業大学(現東京都市大学)で知り合い、卒業後ともにロンドンに渡る。’07年に佐藤可士和氏と協働で作った「ふじようちえん」で、日本建築家賞など多数の賞を受賞。そのほかにも受賞歴は数多い。プライベートでは2人のお子さんのご両親。貴晴さんは青、由比さんは赤がテーマカラー。株式会社手塚建築研究所http://www.tezuka-arch.com/05