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[キーワード] 海面上昇、台風大型化、高潮、浸水被害、温暖化感度関数

[S-4 温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の
総合的評価に関する研究]
2.影響予測の高度化及び経済評価に関する研究
2−5.沿岸域における気候変動の複合的災害影響・リスクの定量評価と適応策に関する研究

(1)災害による経済的損失評価と適応策の経済性評価に必要な温暖化感度関数の提案[PDF](414KB)

 国土交通省国土技術政策総合研究所

 

 沿岸海洋研究部 沿岸防災研究室

鈴木武

 <研究協力機関>

 

 財団法人港湾空間高度化環境研究センター

細川恭史

  [平成17〜21年度合計予算額]48,402千円
(うち、平成21年度予算額 8,548千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

 温暖化の進行度合いの違いによって沿岸域被害がどれだけ変化するかの予測を与える関数(沿岸域被害の温暖化感度関数)を作成するため、高潮による沿岸域の浸水状況をシミュレートする数値モデルを作成し、そのモデルで入力条件を種々に変化させて浸水予測計算を行った。地形、人口、海岸防護施設等のデータを収集しコンピュータ上にモデル空間を構築し、高潮による浸水の状況をシミュレートする数値モデルを作成した。浸水モデルは、被害規模からみて重要度が高いと考えられる三大湾(東京湾、伊勢湾および大阪湾)の奥部の低平地については詳細なモデルとし、日本南岸地域(関東地方から九州地方)を対象にするモデルは簡素な計算構造を持つモデルとした。作成した数値モデルを使って高潮による浸水の計算を繰り返し行い、三大湾奥部および日本南岸地域において、海面上昇量と台風もしくは高潮の増大率が与えられた場合に高潮浸水の規模がどの程度になるかを出力する温暖化感度関数を作成した。三大湾奥部および日本南岸地域における資産のデータを作成し、それら資産データを浸水シミュレーションの結果と重ね合わせることにより高潮被害額を推計した。様々な条件での計算結果を整理し、海面上昇量と台風もしくは高潮の増大率を入力として高潮による被害額を出力する温暖化感度関数を作成した。得られた温暖化感度関数によれば、高潮による被害が海面の上昇や高潮の増大に対して直線的に増加する傾向がみられた。日本南岸地域の浸水モデルを使い、防護施設の防護水準の下限値を様々に変化させた場合に対象地域の浸水面積、浸水人口および浸水被害額がどれだけになるかを計算した。その結果によると、防護施設の防護水準の下限値を変化させていった場合、再現期間100 年の水準で再現期間に対する被害指標(浸水の面積、人口および被害額)を表す曲線の屈曲が相対的に大きい傾向が見られた。