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[S-4 温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の
総合的評価に関する研究]
2.影響予測の高度化及び経済評価に関する研究
2−4温暖化の森林への影響と脆弱性の評価に関する研究

(1)温暖化の森林植物への影響と脆弱性の評価に関する研究[PDF](414KB)

 独立行政法人森林総合研究所

 

 植物生態研究領域

田中信行

 北海道支所

松井哲哉

 <研究協力機関>

 

 森林総合研究所 植物生態研究領域

津山幾太郎、中尾勝洋、比嘉基紀、
中園悦子、堀川真弘

  [平成17〜21年度合計予算額]65,817千円
(うち、平成21年度予算額 14,988千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

 自然林への温暖化の影響を評価するために、気候変数から植物分布を予測する分布予測モデルを作り、ブナ林、ササ類、ハイマツ、針葉樹10種について生育が可能な地域(潜在生育域)の変化予測を行った。現在ブナ林が分布する地域における生育に適する地域(適域)の面積は、全国で、現在に比べて2031-2050年にはRCM20とMIROCシナリオで47%と32%に、2081-2100年には21%と4%にそれぞれ減少すると予測された。現在はほとんどが適域である白神山地世界遺産地域では、将来、夏期の高温のために適域が大幅に縮小すると予測された。北海道では適域が現在の分布北限を越えて北へ広がるが、ブナの移動速度が遅い上に、分断化された天然林の配置ではブナの移動は困難なので、温暖化のペースに追い付けないと推定される。多雪地域に分布するササ類のチシマザサ節とチマキザサ節の生育が可能な地域(潜在生育域)は、温暖化に伴いそれぞれ46.9%と32.1%に減少すると予測された。潜在生育域の減少が起こる原因は、チシマザサ節は積雪の減少、チマキザサ節は積雪の減少とWI(生育期の積算温度)の増加と考えられる。ハイマツの分布域における現在の気候下の適域は、2081-2100年には、RCM20で31%に、MIROCで14%に減少すると予測された。いずれの場合も、分布する山地の全てにおいて、適域の面積が縮小または消失することが予測された。特に東北地方は、RCM20で9%に、MIROCで0%にそれぞれ縮小すると予測され、脆弱な地域といえる。針葉樹10種のうち亜寒帯性樹種(オオシラビソ、シラビソ、コメツガ)、冷温帯性樹種(ウラジロモミ)、中間温帯性稀少種(トガサワラ)の計5種は、温暖化に伴い適域や潜在生育域が全体的に減少するだけでなく、特定地域でほとんど消失することから脆弱であると推定された。温暖化後も適域が維持される地域(逃避地)は、オオシラビソ・シラビソ・ウラジロモミ・コメツガが中部山岳地域であった。トガサワラには大きな逃避地がなくなってしまうので、とくに脆弱である。