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[キーワード] 海面上昇、河川収量変化、塩水遡上、洪水、農業生産

[S-4 温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の
総合的評価に関する研究]
2.影響予測の高度化及び経済評価に関する研究
2−3 アジア地域のコメ生産に対する温暖化影響の確率的リスク評価

(4)気候変化に伴う水資源の量と質の変動がメコンデルタのコメ生産に及ぼすリスク評価に
関する研究[PDF](414KB)

 <EFフェロー>

 

 独立行政法人農業環境技術研究所 大気環境研究領域

Nguyen Duy KHANG

 <受け入れ研究者>

 

 独立行政法人農業環境技術研究所 大気環境研究領域

横沢正幸

  [平成19〜20年度合計予算額]4,206千円
(うち、平成21年度予算額 799千円)
※予算額には、間接経費を含む。

[要旨]

 気候変化による海面上昇が引き起こす塩水遡上がベトナム・メコンデルタのコメ生産へ及ぼす影響について、水理モデル(MIKE 11)を利用して評価を行った。排出シナリオSRES B2に
基づく気候変化状況を想定し、2030年代半ばならびに2090年代半ばにおける12月から翌年6月までの期間の流量と海水侵入の程度を推定した。このシナリオでは、2030年代での海面上昇は20 cm、流量減少は15%、2090年代ではそれぞれ45 cm、29%と想定されている。シミュレーションの結果、水路における塩分濃度2.5 g/L以上の塩水遡上域は、主要河川においては、2030年代には約10 km、2090年代にはおよそ20 km上流へと拡大すると推計された。また、気候変化に伴うメコン河の流量変化が引き起こす塩水遡上ならびに洪水の影響を同時に評価する水理モデルを新たに開発した。そのモデルが現在(1998〜2006年)の状況を再現できることを確認した後に、将来(2090年代)の気候変化シナリオを入力して影響を調べた。将来の気候変化シナリオは、デルタ内の気温、降水量、日射量のほかに、海面の上昇度、およびデルタ上流部におけるメコン河の流量変化として与えた。ここで使用したシナリオはSRES A1Bの排出シナリオに基づいて、JMA- AGCMを利用して導出されたものである。その結果、気候変化に伴い洪水の規模とデルタの浸水範囲が拡大することにより、上流部におけるコメ作付け可能期間の変動が拡大すると推計された。3期作可能地域の面積は31%から5%に減少するとともに、1期のみ可能な地域の面積は21%から62%へ増加すると推計された。さらに、作付け可能期間の減少度を表す指標を用いて、気候変化によるコメ生産の脆弱性を面的に評価した結果、脆弱性が中程度以上の地域はデルタの面積の31%から36%に及ぶと推計された。