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[キーワード] 世界食料モデル、確率的分析、価格変動、社会経済シナリオ、輸入量変化

[S-4 温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の
総合的評価に関する研究]
2.影響予測の高度化及び経済評価に関する研究
2−3 アジア地域のコメ生産に対する温暖化影響の確率的リスク評価

(3) 温暖化が世界の食料市場に及ぼす影響の予測と価格変動リスク評価に関する研究[PDF](414KB)

 独立行政法人国際農林水産業研究センター 国際開発領域

古家 淳・小林慎太郎

 <研究協力機関>

 

 独立行政法人農業環境技術研究所 大気環境研究領域

西森基貴

  [平成17〜21年度合計予算額]12,487千円
(うち、平成21年度予算額 2,342千円)
※予算額は、間接経費を含む

[要旨]

 地球温暖化による気候変動が農業生産に対して大きな影響を与えることが予想される。気候変動に関わる多くの研究者は、作物モデルを用いて面積あたりの生産量である単収あるいは収量の変化を分析している。ここでは、単収ではなく、世界の食料市場、すなわち作物の需要と供給を対象に、確率モデル化された世界食料モデルで分析した。その結果は、いくつかの主要生産国において、トウモロコシと大豆の生産量の変動が、温暖化によって拡大することを示している。気温と降水量の変化に単収が敏感に反応するために、価格変動のリスクが大きくなる国や地域では、作付けパターンの変更などの対処が必要になるだろう。これまでの影響予測は、一つの社会経済シナリオであるA2のみに関して行った。しかしながら、人口やGDPなどは社会経済シナリオによって大きく異なり、シナリオ間で穀物生産量の比較を行う必要がある。IPCCの4つの社会経済シナリオの、A1B、A2、B1、B2についてそれぞれ生産量の動向
を比較した。その結果、アメリカの大豆の生産量はシナリオによって大きく異なり、経済成長が小さく気温上昇の著しいA2シナリオでは、2030年の大豆生産量は2010年に比べて減少することが明らかとなった。気温と降水量がA2シナリオにしたがって変化すると仮定すると、それらが2006年と同水準にある状況と比較すると、我が国のトウモロコシ輸入量は、2030年において700万トン程度減少することも明らかとなった。