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[キーワード] 広域推定、年々変動、確率評価、脆弱性指標、水資源変動

[S-4 温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の
総合的評価に関する研究]
2.影響予測の高度化及び経済評価に関する研究
2−3 アジア地域のコメ生産に対する温暖化影響の確率的リスク評価

(2) 中国におけるコメ生産量変動の確率的リスク評価に関する研究[PDF](414KB)

 独立行政法人農業環境技術研究所 大気環境研究領域

横沢正幸・西森基貴

 <研究協力機関>

 

 独立行政法人農業環境技術研究所 大気環境研究領域

小寺昭彦・飯泉仁之直

 国立大学法人筑波大学大学院 生命環境科学研究科

岡田将誌

  [平成17〜21年度合計予算額]36,897千円
(うち、平成21年度予算額 6,931千円)
※予算額には、間接経費を含む。

[要旨]

 気象環境の変動によってもたらされるわが国の県別コメ収量の年々変動を高精度で推計するモデルを開発した。そのモデルと複数の気候変化シナリオを利用して、2050年代および2090年代における平均収量ならびに年々変動の大きさが1990年代に比べてどこでどのくらい変化するか評価した。全国を4つの地域に分けて、気候変化の指標を用いてその見通しを示すとともに、県別にも平均収量の減少と変動の増大が起きる確率の空間分布を図示した。また、移植日の移動と高温耐性品種の導入による適応策の効果もシミュレーションによって評価した。その結果、3℃程度の気温上昇までは、全国平均のコメ収量は現在と同程度かあるいはやや増加するが、それ以上になると北海道・東北地域を除いてコメ収量は減少すると推計された。しかし、収量の年々変動はすべての地域で、気温上昇(気候変化)とともに増大する傾向が見られた。影響は中部日本を中心として高温による減収と年々変動の増大が推計された。世界の主要コメ輸出国であるベトナム・メコンデルタにおけるコメ生産変動を評価するために、メコン河の流量変化と海面水位の変化を境界条件とし、降水、気温、日射環境を入力とするコメ生産性推計統合モデルを作成した。衛星データをベースとしてモデルの検証を行った後、気候変化シナリオを入力して、当該地域のコメ生産性の時空間変化を評価した。その結果、海面上昇は塩水遡上に影響するが、予測されている海面上昇量の範囲においてはその影響は小さく、むしろメコン河の流量変動が及ぼす影響が遙かに大きいことが分かった。気候変化(MIROC3.2hires A1B)によると、洪水年と少雨(塩水遡上)年にはそれぞれ上流部と沿岸部の収穫可能面積が大きく減少したが、同時にその他の地域では作付可能面積が増加する相反関係が見られた。一方、気温上昇による収量への影響は敏感であり、2020年代後半におけるベトナム・メコンデルタのコメ生産量を集計したところ現在よりも約11%低下する可能性が示された。