検索画面へ Go Research



[キーワード] 温暖化シナリオ、高水ストレス人口比、GCM、温暖化シナリオ、社会経済的指標

[S-4 温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の
総合的評価に関する研究]
2.影響予測の高度化及び経済評価に関する研究
2−1温暖化による水資源への影響予測に関する研究

(5) 温暖化各レベルに対応する洪水リスクの増減評価に関する研究[PDF](414KB)

 東京大学 生産技術研究所

沖 大幹

  [平成17〜21年度合計予算額]49,187千円
(うち、平成21年度予算額 9,525千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

 グローバル並びに地域的に水ストレスの高い流域にすむ人口比が、社会経済的なデータとGCMの出力結果を用いて、気温の関数として見積もられた。世界的にみると、シナリオA2では気温偏差が+1.5度まで急激に上昇する。シナリオA1Bでは、高水ストレス人口比はシナリオA2の場合より少ない。気温偏差が+1.5度を超えると、高水ストレス人口比の増加の経度が緩やかになる。一方、シナリオB1での高水ストレス人口比は、気温偏差が+1.2度を超えると減少に転ずる。気候変動の影響を除去して、つまり流出を一定にして、高水ストレス人口比を見積もった結果によると、高水ストレス人口比は、気候変動の影響の有無にかかわらずあまり変わらない。次に地域ごとの高水ストレス人口比を示した。特に高水ストレス人口比の高い地域について示す。中東と北アフリカは、現在とても高水ストレス人口比が高い領域である。ここでは、現在高水ストレス人口比は約70%であるが、全シナリオにおいて2050年代には約90%まで上昇する。アジアは、中東・北アフリカに次いで高水ストレス人口比の高い地域である。それでもなお、シナリオA2において、高水ストレス人口比は55%から80%に上昇する。他のシナリオでは約10%上昇する。このような地域による差に関する考察を今後進めていく。2075年として推定した各GCM、各温暖化シナリオでの気候変動ありとなしとのW/Qの高水ストレス人口比を示した。気候変動なしでも、高水ストレス人口比はほとんど差がなく、むしろ気候変動を考慮した値の方より大きい。Parry et al. (2001) は、気温偏差が+2度を超えると気候変動の水リスクへの影響は深刻なものになると指摘している。しかし、我々のアセスメントは彼らの指摘とは違う結果を導いた。流出だけでなく社会経済的指標(灌漑面積、工業用水の増加、人口そのものの増加)を用いた水アセスメントを実施すると、気候変動による水リスクへの影響は大きくない。むしろ人口増加など社会経済の変化が大きく影響を与えることを示した。