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[キーワード] 水道水源、河川水質、水質変動、pH、水温

[S-4 温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の
総合的評価に関する研究]
2.影響予測の高度化及び経済評価に関する研究
2−1温暖化による水資源への影響予測に関する研究

(3) 地球温暖化による都市水システムへの影響評価に関する研究[PDF](414KB)

 東京大学 大学院工学研究科

 

 都市工学専攻

滝沢 智

  [平成17〜21年度合計予算額]23,925千円
(うち、平成21年度予算額 4,104千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

 これまでの研究で、水道水源となっている河川の水温とアンモニア性窒素とが高い逆相関を示すことが示された。今年度は、荒川流域の荒川本川並びに支川の水質データを用いて、水
質変動の現状と、水質変動に影響を与える因子について考察した。特に、pHの上昇は、浄水場において凝集阻害を引き起こし水質を悪化させるほか、薬品の注入量の増大を招くため、pHの変化に着目した。その結果、荒川下流の秋ヶ瀬取水堰において、年平均のpH及びアルカリ度は、過去40年間に上昇する傾向が見られた。荒川上流部の支川はpHが8以上と高いが、中でも横瀬川は9以上の極めて高いpHであった。これらの支川は荒川本流のpHに影響を及ぼしているが、流下とともにpH は下るため、秋ヶ瀬取水堰での高pHは上流部の河川によるものではなく、中流部以下の支川や荒川本川内でのpH上昇が考えられた。 特に、秋ヶ瀬取水堰において5月から6月にかけてpHとアルカリ度が上昇する原因としては、水温の上昇による藻類の増加が考えられた。秋ヶ瀬取水堰では一年を通して窒素やリンなどの影響塩濃度は高く、藻類の増殖制限因子にはなっていない。このため、水温が上昇する5月から6月にかけてpH、アルカリ度、溶存酸素濃度などの上昇を招いたものと考えられる。その一方で、藻類増殖が起こりにくい1月から3月にかけてpHが上昇する場合もあり、今後は、藻類増殖以外の可能性についても検討が必要である。