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[キーワード]葉圏、ブナ、環境変動、糸状菌、多様性

[RF-086 葉圏菌類の多様性プロファイルに基づく環境変動評価・予測手法の開発]

(1)葉圏菌類相の多様性プロファイルの作成とそれに基づく環境変動評価・予測手法の開発[PDF](578KB)

独立行政法人森林総合研究所
森林微生物研究領域森林病理研究室

升屋勇人

きのこ・微生物研究領域微生物工学研究室

山口宗義

<研究協力者>

 

森林総合研究所東北支所

市原 優

 森林総合研究所九州支所

石原 誠

  [平成20〜21年度合計予算額] 11,879千円(うち、平成21年度予算額 5,873千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  日本全国のブナ林における葉圏菌類相の多様性評価とそれに基づく環境変動評価・予測手法を開発することを目的に、ブナ葉圏菌類(葉面菌+葉内生菌)の多様性を比較、評価した。従来の分離・培養による手法と分子生物学的手法で葉圏菌類の多様性プロファイルを作成し、葉圏菌類の生息実態解明のために調査を行った。全国71か所からブナ葉を各20枚採取し、10枚を分離・培養に、残り10枚をDNA解析に用いた。 分離培養には破砕機で100mlの滅菌蒸留水とともに葉を約2mm3以下に破砕し、ローズベンガル入り1%MAに懸濁液1mlを塗布した. 20℃で3ヶ月間培養し、その間に生育してきた菌糸を2%MAに移植し、培養菌株を得た. 同定は形態、DNAにより行なった。一方、残りの10枚は1枚ごとに液体窒素で破砕し、抽出・精製した。その後、菌類のSSUrDNA特異的プライマーを用いてDGGE、T-RFLPにより葉圏菌類の多様性を遺伝的に解析した。その結果、分離・培養による手法で、ブナ葉圏菌類のうち最も優占して存在したグループはCapnodiales、Xylarialesであった。また採取場所ごとの違い、季節的な違いがあることが明らかになった。DGGE、T-RFLPの結果でも、採取場所、季節による菌類相の違いが確認された。DGGEにより得られたバンドを切り出して得られたシーケンスデータでも同じ種類が検出されたが、分離・培養による手法と比較して検出される種数は限られていた。T-RFLPの結果を各種環境要因とともに多変量解析を行ったところ、夏の降雨と若干の相関が見られたものの、大きな傾向は認められなかった。このことから葉圏菌類の多様性は環境要因以外にも様々な影響を受けると考えられた。一方、Xylaria sp.1は特に冬の最低気温が−5℃以下では分離されていないこと、Didymella sp.が冬の積雪量と負の相関があったことから、冬期の気候条件がいくつかの種類の出現と相関関係にあると考えられた。