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[キーワード]温帯域、サンゴ骨格、酸素・炭素同位体比、石灰化量、地球温暖化

[RF-082 北限域に分布する造礁サンゴを用いた温暖化とその影響の実態解明に関する研究]

(1)造礁サンゴ骨格を用いた温暖化とその影響の検出に関する研究[PDF](503KB)

北海道大学
大学院理学研究院 自然史科学部門

渡邊 剛

<研究協力者>

 

北海道大学 大学院理学研究院 自然史科学部門

島村道代

 北海道大学 大学院理学研究院 自然史科学部門

中村隆志

  [平成20〜21年度合計予算額] 11,500千円(うち、平成21年度予算額 6,300千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  造礁性サンゴ骨格を利用した過去の環境復元は熱帯.亜熱帯域に限られていた。一方で、地球温暖化や海洋酸性化による影響を最も受け易いと考えられる、日本沿岸を含む中緯度温帯域においては、季節〜年程度の時間解像度を持つ記録媒体がないためその実体の把握が遅れているのが現状である。本研究では、日本周辺の温帯域の日本海側から2地点(長崎県壱岐と鹿児島県甑島)と太平洋側の2地点(和歌山県串本と高知県竜串)より100年から数100年間の期間を遡ることのできるサンゴコア試料をそれぞれ掘削することに成功した。これらの地点は共に、大型の造礁性サンゴの世界の北限域に位置しており、我が国の沿岸域における非常に貴重な温暖化履歴試料となり得る。研究では、これらのサンゴコア試料について、酸素・炭素安定同位体比及び骨格成長量・密度・石灰化量を解析した。これらの結果、サンゴ骨格の酸素同位体比には水温と降水量、炭素同位体比には、日射量と化石燃料由来の大気二酸化炭素濃度変動(温暖化による環境変動)、骨格成長量・密度・石灰化量には造礁性サンゴの成長の履歴(環境変動に対する応答)が記録されていることが明らかになった。過去100年間におけるこれらのサンゴコア(サンゴ年輪)記録には、温暖化傾向と化石燃料由来の大気二酸化炭素濃度の増大の傾向が読み取れ、また、それに対するサンゴの成長の応答は、日本海側と太平洋側では異なることが明らかとなった。