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[キーワード] 都市空間構造、コンパクトシティ、コーホートモデル、ライフサイクルアセスメント、トリプル・ボトムライン

[H-072 持続可能な国土・都市構造への転換戦略に関する研究]

(1)バックキャスティング・アプローチによる国土・都市構造戦略の検討[PDF](435KB)

 名古屋大学大学院 環境学研究科

林良嗣・加藤博和

名古屋大学大学院 エコトピア科学研究所

奥田隆明

<研究協力者>

 

名古屋大学大学院 環境学研究科

戸川卓哉・鈴木祐大・小瀬木祐二・後藤良太

  [平成19〜21年度合計予算額] 46,537千円(うち、平成21年度予算額 14,794千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  本研究は、地球環境制約を満たしながら、同時に社会や経済の観点からも持続可能な都市空間構造を、バックキャスティング・アプローチによって導出するフレームワークを確立し、モデルシステムとして整備し適用することを目的とする。
  そのために、都市の温室効果ガス(GHG:Green House Gas)排出量とともに、社会的・経済的持続性を表現する生活の質(QOL:Quality of Life)の定量指標および市街地維持費用を含めた「トリプル・ボトムライン」(TBL:Triple Bottom Line)を時系列かつ500mメッシュの単位で計量可能な都市の持続性評価モデルSURQUAS(Smart Urban area Relocation model for sustainable QUAlity Stock)を開発する。
  モデルを名古屋都市圏に適用し、市街地の範囲が現状(2005年)のまま変化しないものとして2050年までのTBL指標の推計を行った。その結果、各指標の空間分布から都心部と郊外の鉄道沿線では環境・費用面での効率が優れており、逆に郊外のスプロール地域の非効率性が定量的に明らかとなった。また、洪水危険地区の非効率性が顕著であることや、都心部においても1人あたりGHG排出量が大きい地区があることが示された。また、時系列の推計から、気候変動に伴って洪水による期待被害額が経年的に増加することから、都市圏の西部に広がる洪水危険地区からの撤退が検討される必要があることを示した。
  さらに、居住人口を環境効率の悪い地区から駅勢圏に集約し、交通政策・住宅政策を組み合わせることによって現在よりもCO2排出量を約20%削減可能であることを示した。また、このとき、名古屋市内への一極集約では、市街地維持費用の削減率は大きいものの、QOLを同時に低下させてしまう結果となった。一方、都市圏内の人口バランスを維持した多極集約では、TBLのすべてが改善される結果となった。