検索画面へ Go Research



[キーワード] 環境適応性、砂漠化、生態型(ecotype)、半乾燥砂地、北東アジア

[G-071 北東アジアの草原地域における砂漠化防止と生態系サービスの回復に関する研究]

(4)半乾燥砂漠化地域に生育するkey species−ecotypeの生理生態特性の比較解析[PDF](464KB)

 独立行政法人国立環境研究所アジア自然共生研究グループ

清水英幸・鄒 春静

<研究協力者>

 

独立行政法人国立環境研究所

伊藤祥子・笹川裕史

  [平成19〜21年度合計予算額] 5,303千円(うち、平成21年度予算額 2,573千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  本サブテーマではまず、ecotypeに係わるこれまでの研究成果をレビューした。次に、北東アジア(中国・モンゴル)の9地域から様々なkey speciesの種子を採取して、産地毎に整理した。そして、代表的key speciesである、灌木種のCaragana microphyllaとArtemisia halodendronおよびイネ科草本のStipa grandisの地域個体群を材料として、温度と水ストレスの複合環境実験を行い、それらの応答特性について比較・検討した。2週間の環境制御実験で、水ストレスはC. microphyllaの生長を抑制した。その影響は高温時に大きく、低温時に小さかった。産地間の比較では、基本的な生長速度に差異が認められ、また、温度に対する適応特性が異なる等、ecotypeの分化が示唆された。4週間の環境制御実験で、水ストレスの増加はS. grandisのNARを抑制し、RGRを顕著に低下させた。また、LAR、LWR、SLAを微減させ、R/S比を増加させた。温度上昇は、RGR、NAR、R/S比を低下させ、LAR、LWRを微増させた。水ストレスの増加は、A. halodendronのNARを抑制し、RGRを顕著に低下させた。また、LAR、LWRを微減させ、R/S比を顕著に増加させた。温度上昇は、RGR、NAR、R/S比を微減させ、LAR、LWR、SLAを微増させた。A. halodendronは水ストレス条件下で同化産物を根に多く分配した。一方、S. grandisが水ストレスによってR/S比を増加させたのは低温処理の場合であった。R/S比の応答は、水不足が頻発する半乾燥地域での適応反応であると思われ、高温と水不足状態の多い砂地では、A. halodendronがS. grandisより適応していると考えられた。また、S. grandisとA. halodendronの生長速度や生理生態特性を産地間で比較すると、S. grandisでは既に異なるecotypeが分化していることが示唆された。一方、A. halodendronでは明瞭なecotypeの分化はまだ認められないと思われた。以上の生長解析に加え、環境制御実験で使用した地域個体群の生化学的/遺伝学的な解析を現在行っている。以上の成果を蓄積し、植生回復(緑化)に有効な「key species−ecotypeデータベース」を構築する重要性が示された。