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[キーワード]生態系機能、土壌、土壌動物、二酸化炭素、メタン

[F−073 土壌生物の多様性と生態系機能に関する研究]

(5)生態系の生物多様性と生態系機能に関する研究[PDF](463KB)

 国立大学法人横浜国立大学
大学院環境情報研究院

金子信博

<研究協力機関>

 

駿河台大学経済学部

伊藤雅道

国立大学法人東京農工大学大学院共生科学技術研究院

楊宗興、木庭啓介

国立大学法人島根大学生物資源科学部

増永二之

 国立大学法人筑波大学生命環境科学研究科

清野達之

  [平成19〜21年度合計予算額] 30,437千円(うち、平成21年度予算額 9,752千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  ミミズやヤスデなどの大型土壌動物の活動は、直接、有機物や土壌微生物を摂食するだけでなく、生息環境の土壌構造を改変している。このような間接的な影響は、炭素や窒素循環など生態系機能に影響することが予測できるが、これまで土壌生態系では評価されてこなかった。そこで、生態系改変者としての土壌動物が、微生物群集の変化を通して物質循環に与える影響を定量化した。苫小牧研究林の埋没A層を利用して土壌炭素集積速度を調べたところ、苫小牧では植生の発達により約6000年にわたって3 - 17 g C m-2 yr-1の速度で土壌炭素が集積していた。また、土壌表層の団粒量は土壌小型節足動物の個体数と正の相関があり、団粒を人為的に破壊すると、節足動物の個体数が回復せず、土壌呼吸や窒素無機化も処理後2年間にわたって低下し、伐採などの攪乱が土壌構造の変化を通して森林の機能を低下させていた。苫小牧研究林のミズナラ林でミミズの密度を低下させたところ、土壌表層の耐水性団粒が減少し、土壌炭素、窒素および栄養塩濃度が低下した。本州中部八ヶ岳周辺にしばしば大発生をおこすキシャヤスデを飼育したところ、ヤスデの活動により土壌の炭素・窒素循環速度が促進され、その作用は土壌のみを摂食する幼虫に比べ、土壌と落葉を混食する成虫で特に大きくなった。温室効果ガスへの影響として、団粒形成がCO2放出とCH4吸収の増加という相反する作用を持つことが分かった。団粒構造が壊れることにより土壌のCH4吸収能力の劣化やCO2放出の増加を招くことが示された。不耕起草生栽培ではミミズが増加し、土壌団粒が増加していることが土壌炭素量を増大させるメカニズムとなっていた。農地土壌の変化は小型節足動物の個体数と多様性を向上させた。陸上生態系の生態系機能が土壌構造を形成する多様性要素を取り入れることで、微生物. 土壌動物. 植物の間の階層的な関係を整理でき、農地を含めた陸域生態系の多様性の保全が、地球環境変動に関わる生態系機能につながっていることを示すことができた。