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[キーワード]土壌細菌群集、キシャヤスデ、埋没A層、脱窒活性、機能遺伝子

[F−073 土壌生物の多様性と生態系機能に関する研究]

(4)土壌細菌の多様性と機能解析[PDF](492KB)

 国立大学法人静岡大学 理学部

加藤憲二

  [平成19〜21年度合計予算額] 16,158千円(うち、平成21年度予算額 5,929千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  土壌生態系を支える細菌群集の多様性とそれが発現する機能との関係を明らかにすることを目的とし、森林土壌における細菌群集の多様性の解析を行った。桐生試験地乾性土壌(G31地点)A層の細菌群集の構成は、Acidobacteria、α-Proteobacteriaが優占し、B層においてもほぼ同様の構成であった。B層は微生物の遺伝的な多様性のプールとしての役割を果たしていた。化学的環境条件(栄養塩添加)あるいは、土壌動物の存在(キシャヤスデ)により場の大きな変化を与えた場合の土壌細菌の反応を明らかにするために、桐生試験地森林土壌A層、B層を用いて栄養塩添加およびキシャヤスデ飼育実験を行った。T-RFLP解析の結果、A層においては微生物群集に変化はみられなかったが、B層において微生物群集の主たる構成に変化が現れた。この時のキシャヤスデ消化管内容物の細菌群集構成は土壌のものとは異なった。土壌そのものの物理的攪乱が微生物群集に及ぼす影響を明らかにするため、苫小牧研究林の土壌撹乱実験区の降水と土壌水を採取し、クローン解析を行った。無処理区とプレス区で、細菌群集構成が大きく異なっており、表層土壌が地下環境に影響を与えることが示唆された。細菌の多様性と機能発現の関係を明らかにするために、代謝過程が明瞭な脱窒機能を対象とし、15Nトレーサーによる脱窒活性の測定と亜硝酸還元遺伝子(nirK、nirS)による脱窒細菌群集構成の解析を行った。桐生試験地湿性土壌(G1地点)の表層土壌の脱窒活性は非常に高く、酸素の存在によって抑制された。また、nirK、nirSを持つ細菌群集は非常に多様であった。土壌における脱窒活性は、酸素濃度と添加基質により異なった。 nirKによるクローン解析の結果、湿潤な土壌ではクレード内で多様化がみられた。最後に、苫小牧埋没A層における細菌群集構成を解析したところ、メタン生成・酸化に機能を有すると推察される細菌群が検出され、メタン生成実験を行ったが、メタンは検出されなかった。この土壌システムにおける鉛直方向の相互作用の可能性は限られたものであると推察された。