［キーワード］ カバークロップ、不耕起栽培、ミミズ、土壌炭素、微生物群集構造
[F－073 土壌生物の多様性と生態系機能に関する研究]
（２）農法が土壌生物多様性と生態系サービスに与える影響の解析[PDF](462KB)
国立大学法人茨城大学
農学部
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太田寛行
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農学部附属フィールドサイエンス研究教育センター
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小松﨑将一
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[平成19～21年度合計予算額] 23,737千円（うち、平成21年度予算額 8,375千円）
※予算額は、間接経費を含む。
［要旨］
農耕地内における生物資源再生と物質循環プロセスの最適化を目指し、１）不耕起栽培、２）冬期カバークロップ利用、３）ミミズ導入による畑地土壌生態系改変による生態系サービスへの影響を解析した。また、人為的な土壌管理を極度に減じた自然農法畑地の土壌分析も行った。2007年度は、夏作物として陸稲を栽培したが、2008年度はダイズに変えて、不耕起／冬期カバークロップ栽培、ミミズ導入処理（1㎡あたり100匹）の効果を検討した。その結果、(1)
2007年の陸稲栽培では、無施肥区においてミミズ導入で収量の増加がみられたが、2008年のダイズ栽培では、有意差は認められなかった。(2)陸稲栽培区では、ミミズ導入で無機態窒素量が増加する傾向にあり、特にヘアリーベッチ・カバークロップとの併用で顕著であり、ダイズ栽培畑地でも同様な結果であった。(3)
陸稲栽培畑地での7月の測定結果では、裸地区に対して、カバークロップ施用で増加する土壌呼吸活性がミミズ導入で抑えられる結果が観察されたが、ダイズ栽培畑地では、カバークロップ施用効果がそれほど顕著ではなく、ミミズ導入による抑制もみられなかった。(4)
土壌の亜酸化窒素（N2O）生成活性は、ミミズを導入していない土壌に比べて、カバークロップ施用のミミズ導入土壌で低くなる傾向が観察された。また、比較として用いた自然農法畑地の土壌炭素含量は、慣行農法畑地の場合に比べて、約2倍近い値を示すことがわかった。各畑地について、土壌微生物（アーキア、細菌、糸状菌）の群集構造を、リアルタイム定量PCR-末端制限断片長多形（T-RFLP）分析法で解析した。ミミズ導入や土壌管理によりアーキア群集と細菌群集は比較的安定ではあるが、その構成種の生育には影響を及ぼしていることが示された。また、糸状菌がもっと影響を受けやすかった。ミミズ導入とカバークロップ施用の効果を比較すると、後者においてより強い影響があることが示された。以上の結果より、土壌の物質循環機能の最適化に向けて、不耕起栽培、冬期カバークロップ利用、ミミズ導入の技術は有用であることが示唆された。
