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[キーワード] 再導入、放鳥方法、分散パターン、警戒行動、採餌行動

[F-072 トキの野生復帰のための持続可能な自然再生計画の立案とその社会的手続き]

(7)国内放鳥トキの生態情報の収集[PDF](544KB)

 国立大学法人新潟大学
超域研究機構 朱鷺プロジェクト

永田尚志

<研究協力者>

 

環境省関東地方環境事務所 佐渡自然保護事務所

笹淵紘平

 財団法人自然環境研究センター

安齋友巳

  [平成19〜21年度合計予算額] 8,030千円(うち、平成21年度予算額 4,000千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  2008年9月25日に10羽(♂♀各5)のトキがハードリリース法で、2009年9月には20羽(♂8♀12)のトキが仮設放鳥ケージの入り口を開放するソフトリリース法で放鳥された。放鳥トキのうち、1次放鳥では6個体(♂5♀1)に、2次放鳥個体では9個体(♂1♀8)にGPSテレメトリー発信器が装着されていて、日中3時間ごとの位置情報が蓄えられるようになっていた。装着した15個の発信器のうち、1次放鳥の5羽(♂4、♀1)と2次放鳥の5羽(♀5)に装着した10個が順調に稼働し、放鳥後の移動データを得ることができた。放鳥後1年半の期間に蓄積された7,689地点のGPSデータと17,248地点の観察地点情報のうち、観測精度の高い位置データのみをGISに取り込んで、1次放鳥個体と2次放鳥個体の移動パターンの比較解析、およびトキが選択した景観要素の解析を行った。また、フォーカルアニマルトラッキング法により行動調査を行い、観察可能なすべての個体から警戒行動と採餌行動に関するデータを収集した。この結果、餌種、および採餌ハビタットの季節的な変化を解析すると同時に、警戒頻度や採餌効率に影響を与える要因について解析を行った。放鳥トキは、ドジョウ、イモリ、カエル、ミミズ、サワガニ、昆虫類等を採食し、飲込み回数ではミミズが一番多かったが、餌重量に換算すると約2.4割がドジョウであると推定できた。秋から春にかけては水田が利用できるため、水田を主に餌場として利用していた。しかし、夏期にはイネが育った水田に入れなくなるため、休耕田や水田の畔でミミズに依存した生活を行っていることが明らかになった。1次放鳥で1羽の雌が放鳥直後に島外に分散したことのに対して、2次放鳥雄の多くが放鳥場所近くで群れを形成し、安定した行動圏を確立したのは、ソフトリリース法という放鳥方法によるところが大きいと考えられる。1次放鳥直後は人や車に対する警戒に費やす時間が多かったが、季節が進行するにしたがって減少していった。また、2次放鳥において順調な群れ形成が促進できたことによって、早期に行動圏が安定しただけでなく、人に対する急速な順化や冬期に十分な採餌時間をもたらしたと考えられる。