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[キーワード] 堰、ドジョウ、分断化、ハビタットモデル、ミトコンドリアDNA

[F-072 トキの野生復帰のための持続可能な自然再生計画の立案とその社会的手続き]

(1)採餌環境としての河川生態系の評価[PDF](475KB)

 国立大学法人 九州大学
大学院工学研究院 環境都市部門 流域システム工学研究室

島谷幸宏

 国立大学法人 徳島大学
大学院ソシオテクノサイエンス研究部 生態系管理工学研究室

河口洋一

  [平成19〜21年度合計予算額] 61,569千円(うち、平成21年度予算額 17,653千円)
※予算額は、間接経費を含む。

[要旨]

  本研究ではおもに以下の4点において調査研究を行った。
(1)「堰が魚類の移動に与える影響の解明・落差の改良とその効果の検証」:佐渡島の30余の河川において魚類調査と散在する取水堰の計測を行い、堰がどのように通し回遊魚の分布に影響を与えているか調べた。その結果、魚種により影響を受ける堰の高さは違っていることが明らかになった。また、天王川においては、魚類の移動を妨げていると思われる河川の堰の落差を解消し、水路と水田を連続的に繋げる魚道の設置を行った。河川においては、大きな変化は見られなかったものの、遡上能力の低い回遊魚であるアユカケが改良後に上流で確認された。一方、水田においては、魚道を設置した水田で大幅な魚類資源量の増加が確認された。
(2)「河川や水路における魚類の移動性」:ドジョウなどの個体にPITタグ(個体を識別するための磁気チップ)を埋め込み、その移動をリモートモニタリングした。その結果、魚類は降雨時に移動していることが明らかになった。
(3)「河川および水田水路地帯におけるドジョウのハビタットモデルの構築と再生シナリオのシミュレーション」: 佐渡島の7つの河川および約200の水田水路地帯において、ドジョウの分布調査とGIS等による環境評価を行い、ドジョウの分布を予測するハビタットモデルをGLMとAICを用いて構築した。その結果、周囲の水田面積や水路-水田間の移動可能性などがドジョウの分布を制限していることが明らかになった。
(4)「佐渡島全域におけるドジョウの遺伝的特性」:佐渡島のドジョウの遺伝的特性を調べたところ(ミトコンドリアDNA、CR領域)、佐渡島でまとまったクレードは特に確認されず、多くのハプロタイプは本土における既知のものと一致、もしくは近縁であった。佐渡島のドジョウは歴史的な人為移入によるものと考えられる。また放流地域において遺伝的撹乱も確認された。